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2.さようなら
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マリリカとわたくしは同い年。父は、母と結婚してすぐに愛人を作った。もしかしたら、母と会う前から愛人関係があったのかもしれない。マリリカとわたくしの年齢差がわかりにくくなるまで待っていたんじゃないかとあの人は言っていたわ。母に優しく接していた父だったけど、2人の間に子は生まれなかった。母は黙っていたけれど、おそらく一度も寝室を共にしていない。
父は自分の血を引いた子に、家を継いでもらいたかったんだと思う。
母とわたくしがいるから祖父の支援が得られているんだから、母との間に子を作るべきだったのに。
潔癖なところがある父だから、母を受け入れられなかったのかもしれないわ。
母が亡くなったあと、祖父はわたくしを引き取ろうとした。
わたくしがいなくなれば祖父の支援がなくなると思った父は、わたくしに婿を取り家を継がせることにした。
祖父の国と違い、女性は爵位を継げない。
だから女性しかいない家は、婿を取り家を継いでもらう。
その頃のわたくしは父を信じていたから、わたくしの為に婿をと言う父の言葉に頷き、帰ろうと誘う祖父を説得して家を継ぐと決めた。
なんて馬鹿な事をしたのだろう。
そう気付いたのは、母の喪が明けてマリリカ達が家に来た時だ。万が一わたくしに子が出来なければ、高貴な自分の血を引いたマリリカの産んだ子を跡取りにすればいいと父は言った。
その瞬間、父を慕っていた気持ちが全て消え失せた。
冷静になると、父がおかしいと気付いたわ。
お父様と慕っていた男は、優しい顔して裏でコソコソと動く卑怯者だった。
密かに大量の避妊薬を手配しているのはどうして?
母と一緒に、この家から消えれば良かった。そうすれば今頃……父は貴族ではなくなっていたし、わたくしも今より幸せだったと思う。
父を信じたわたくしが愚かだった。
明日、父が帰ってくる。仕事が忙しく、結婚式はギリギリの到着になると言っていた。
くれぐれも祖父によろしく言っておいてくれと何度も何度も言われたわ。いつものように、わたくしのフォローを期待したのだろう。
今なら分かる。父は最初から式に出るつもりなんて、ないのよね。
自分の子ではないのだから、参加しなくていいと思っているのだ。
けど、好都合よ。
式が終わり、夫婦になれば別れることはできない。
ロバートは伯爵家の居候と結婚する。マリリカは正式な養子縁組を結んでいないもの。父の子でも、家は継げない。彼は伯爵家の三男。婿入りできなければ平民になるしかない。
継いでもこんな家、すぐなくなるでしょうけど。
唯一の跡取りであるわたくしは、居候に出て行けと言われて消えたあと。
こんな家、なくなってしまえばいい。
決められた税を納めないと爵位はく奪。税金の支払期日は、来月。
税金はいつも祖父に頼んで用立てて貰っていた。いつまでも甘えていられないと、わたくしが結婚したら祖父の支援金を使って領内に投資して税金を払おうと考えていたわ。
でも、もういい。わたくしは祖父のもとに行って、本当の家族と過ごす。父も本当の娘とお幸せに。
わたくしをあと少し騙し切れば、全て父の思惑通りだったのに。
父のことは、好きだった。けど、もう父とは思えない。
マリリカ達が来たあの日、わたくしの気持ちは決まったの。
祖父の求めに応じて、国を出るわ。
父が持ってくる大量の釣書から見た目だけは良い、プライドが高く評判の悪い婚約者を選び、なんでもわたくしのものを欲しがるマリリカに紹介した。
あとは、お父様の予想通りに進んだわ。
本当にお父様は人を見る目があるのね。
父は自分の血を引いた子に、家を継いでもらいたかったんだと思う。
母とわたくしがいるから祖父の支援が得られているんだから、母との間に子を作るべきだったのに。
潔癖なところがある父だから、母を受け入れられなかったのかもしれないわ。
母が亡くなったあと、祖父はわたくしを引き取ろうとした。
わたくしがいなくなれば祖父の支援がなくなると思った父は、わたくしに婿を取り家を継がせることにした。
祖父の国と違い、女性は爵位を継げない。
だから女性しかいない家は、婿を取り家を継いでもらう。
その頃のわたくしは父を信じていたから、わたくしの為に婿をと言う父の言葉に頷き、帰ろうと誘う祖父を説得して家を継ぐと決めた。
なんて馬鹿な事をしたのだろう。
そう気付いたのは、母の喪が明けてマリリカ達が家に来た時だ。万が一わたくしに子が出来なければ、高貴な自分の血を引いたマリリカの産んだ子を跡取りにすればいいと父は言った。
その瞬間、父を慕っていた気持ちが全て消え失せた。
冷静になると、父がおかしいと気付いたわ。
お父様と慕っていた男は、優しい顔して裏でコソコソと動く卑怯者だった。
密かに大量の避妊薬を手配しているのはどうして?
母と一緒に、この家から消えれば良かった。そうすれば今頃……父は貴族ではなくなっていたし、わたくしも今より幸せだったと思う。
父を信じたわたくしが愚かだった。
明日、父が帰ってくる。仕事が忙しく、結婚式はギリギリの到着になると言っていた。
くれぐれも祖父によろしく言っておいてくれと何度も何度も言われたわ。いつものように、わたくしのフォローを期待したのだろう。
今なら分かる。父は最初から式に出るつもりなんて、ないのよね。
自分の子ではないのだから、参加しなくていいと思っているのだ。
けど、好都合よ。
式が終わり、夫婦になれば別れることはできない。
ロバートは伯爵家の居候と結婚する。マリリカは正式な養子縁組を結んでいないもの。父の子でも、家は継げない。彼は伯爵家の三男。婿入りできなければ平民になるしかない。
継いでもこんな家、すぐなくなるでしょうけど。
唯一の跡取りであるわたくしは、居候に出て行けと言われて消えたあと。
こんな家、なくなってしまえばいい。
決められた税を納めないと爵位はく奪。税金の支払期日は、来月。
税金はいつも祖父に頼んで用立てて貰っていた。いつまでも甘えていられないと、わたくしが結婚したら祖父の支援金を使って領内に投資して税金を払おうと考えていたわ。
でも、もういい。わたくしは祖父のもとに行って、本当の家族と過ごす。父も本当の娘とお幸せに。
わたくしをあと少し騙し切れば、全て父の思惑通りだったのに。
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父が持ってくる大量の釣書から見た目だけは良い、プライドが高く評判の悪い婚約者を選び、なんでもわたくしのものを欲しがるマリリカに紹介した。
あとは、お父様の予想通りに進んだわ。
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