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第二十一話

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「シルヴィア、次はねぇぞ」

「申し訳ありませんでした!!!」

カルロ、いや、団長のお説教はものすごく怖いのです。叱る時はみんなと少し離れた所で叱られるのですが、他の騎士の方は直立不動で立って待っているんです。二重の意味で、プレッシャーが凄いのですわ。

でも、時間を守らなかったのはわたくしです。本当なら、15分と言われた時30分欲しい等と交渉すれば良かったのです。出来ない約束はするなと、とても叱られました。特に騎士は時間厳守ですらかね。心から反省しました……。

「シルヴィアのお説教が長引いたから助かったよ」

移動中に、こっそりレオンに話しかけられました。どうやら、団長に黙ってわたくしを呼びに来てくれたみたいです。レオンが呼びに来てくれなかったら、もっと叱られていたでしょう。

「レオンが呼びに来てくれて助かりましたわ。ヘレナの様子はどうですか?」

「大丈夫そうだよ。念のため休めって言っておいた」

「ありがとうございます」

「新人! 無駄口叩くな!」

「「はいっ!」」

団長は、やっぱり怖いです。でも、仕事に真剣なカルロはかっこいいですわ。

ああ! いけません! しっかり気持ちを切り替えなくては!

「着いたぞ、娼館の従業員と住み込みの娼婦を中心に話を聞く。聞いてるうちに通いの娼婦が来るから、来た順に話を聞け。シルヴィア、お前は住み込みの娼婦の聞き込みだ。女性同士の方が色々と話してくれる事があるからな。ニコラはオレと従業員の聞き込み。レオンとテオは2人で組んで、出入りの業者の聞き込みをしろ! 困ったらすぐオレの所に来い!」

「「「「はい!」」」」

わたくしの仕事は、捕まった娼婦の方がどんな方だったかを聞く事です。容疑は明らかなのですが、団長は気になる事があるらしく、どんな働きぶりだったか、贔屓の客は居たのかをきっちり聞けと言われています。

「こんにちは、お仕事前に申し訳ありません。シャナさんのお話、聞かせて下さいませんか?」

「嫌よ! 姐さんを早く返して!」

はぁ、さっきからこんな人ばかりでほとんどお話をしてくれません。ヘレナなら上手く話せるのでしょうけど……。

「シルヴィア! 交代!」

「テオ?」

「全然答えてくれないでしょ? 団長も分かってないよ。シルヴィアみたいな、いかにもお嬢様って感じの子は、ここのお姐様と話すには向かないよ。プライド刺激されるもん。僕が話してみるよ。僕、姉が居るから女性の扱いは慣れてるし」

「役に立たなくてごめんなさい……」

「団長には報告してるから、すぐレオンのところ行って」

「分かりました。ありがとう、テオ」

「気にしないで、出入りの業者はシルヴィアみたいな綺麗な女性の方が口が軽くなるから、頼むね」

「頑張りますわ」

その後、レオンと業者の聞き込みをしました。わたくしが来てからよく話してくれるようになったとレオンが言ってくれました。本当なのか分かりませんが、元気が出ましたので頑張りましたわ。

そして、なぜかわたくしとレオンは先に帰るように指示されました。

「大体話を聞けたから終了なのは分かるんだけど、急いで戻る事ってあった?」

「分かりません、なかったと思いますけど」

ずいぶん焦った様子で、早く帰れと言われました。わたくし、なにか仕事を忘れていたでしょうか? そんな事ありませんわよね。わたくは本来非番だったのですから。

「あらぁ、シルヴィアさんじゃないですかぁ!」

レオンと娼館を出る時、ありえない人に会いました。

「サブリナ様?」

「そうよ! 私があまりに美しくなってるから気がつかなかった?」

どうして、サブリナ様がここに居るんですの?! このやたらと肌を出した下品な服は見てられませんわ! レオンも引いてるではありませんか!

驚いているわたくしに、サブリナ様は嬉しそうに声をかけてきます。

「私、アルベルトに毎日愛されてるの! 羨ましいでしょ?!」

「お幸せそうで何よりですわ」

「何よ! その感情のない顔! そんなんだから、アルベルトに捨てられるのよ!」

「……さようでございますか」

この人と話す時は、感情を出してはいけません。疲れますもの。

「ふふっ、もっとお話ししましょう?」

「仕事中です」

「知ってるわ、昨日シャナ姐さんがお客様を刺しちゃったのよねぇ、可哀想。わたくし、シャナ姐さんと仲が良かったの。いっぱい姐さんのお話したいわ」

なんで、サブリナ様が知っているのでしょうか。これは聞かないわけにいきませんわよね。レオンも同じ気持ちのようですし、レオンが居れば変なことはしてこないでしょう。仕事中に色仕掛けをされてもレオンなら動じないでしょうし。

「分かりました。お話を聞きましょう」

「あぁ、わたくしシルヴィア様と2人でないと話さないわよ。そちらのお兄さんは帰って」

……はぁ、絶対何か企んでますわよね。レオンは、絶対離れないって顔してますけど、このままだと貴重な情報源を無くしますし、団長に報告に行って貰いましょう。でも、それをサブリナ様に感づかれたら、喋るものも喋ってくれませんわよね。

「レオン、帰ってすぐに団長に報告して」

「は?! シルヴィアひとりで話聞かせる訳ねぇだろ!」

「もうここに残ってるのはわたくし達だけ、団長もみんなも帰ってしまったわ。だから、急いで団長を連れてきて」

レオンなら、これで察してくれる筈。

「ちっ……分かったよ。ここから騎士団戻って団長を連れて来るまで1時間はかかる。絶対油断すんなよ」

さすがレオンです! ナイスサポートですわ! すぐにカルロが来てくれる。それまで耐えれば良いだけです。油断しなければ何とかなりますわ。

「分かってる」

「あらあら、わたくしなぁんにもしませんわよ?」

そう言って、サブリナ様はニヤリと笑っておられましたわ。
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