19 / 28
第十九話
しおりを挟む
「団長、今日帰ってくるんだっけ?」
今日の仕事は終わって、着替えながらヘレナとおしゃべりをしていました。
「ええ、確か今日だったと思うわ」
この後、カルロと会える予定なのです。ワクワクしますわ。
「団長かっこいいよねぇ。憧れるわぁ。実はね、フリーだって聞いたから団長にアタックしちゃったの!」
「えっ……!」
ヘレナは、カルロが好きなんですの?!
「残念ながら相手にされなかったけどね。もうすぐ婚約者を発表するし、不実な事など出来ないって真顔で言われたわよ。ちょっと怖かったわ。あれはよっぽど婚約者が好きなんだろうね。貴族様でも遊び相手くらいにはなれるかな~と思ったけど、あの手の男は誘うだけ無駄だわ」
「そ、そうなのですね……」
「シルヴィアも真面目そうよねぇ。ねぇ、貴族って本当に結婚式までキスもしないものなの?」
「え、ええ……表向きはそうですわね」
「ま、所詮表向きよね。あたしこないだ、娼館に貴族のお坊ちゃん入るとこ見たもん。確か結婚間近だった筈よ。街中なら貴族ともバレないだろうってハメ外してる人多いけど、貴族は立ち振る舞いでバレるっつーのに。ねぇ! シルヴィアは婚約者とか居ないの?!」
「申し出は、あります。父と検討中ですわ」
「そっかぁ、確かにシルヴィアはモテそうよね」
「わたくし、学園では誰も話しかけてくれませんでしたわよ?」
「シルヴィアは綺麗だから、近寄り難かっただけじゃないの?」
「それはないですわ。元婚約者は学園で大人気でわたくしみたいな地味でお固い女と婚約させられて可哀想だとよく陰口を言われましたもの」
「うっわ、貴族様は見る目ないわねぇ。シルヴィアは確かに真面目だけど、地味じゃないでしょ。こないだ正式な騎士服初めて着たじゃない?」
「ええ、ヘレナはとっても似合ってましたわ!」
「ありがと、でもシルヴィアの方が凛としてて素敵だったわ。シルヴィアはどちらかと言うと華がある美人よ。地味ではないわ」
「そ、そのような事ありませんわ……」
「あーもう! 真っ赤になって可愛いなぁ! 先輩達がシルヴィアを溺愛するのも分かるわ!」
最近、ヘレナはいつもわたくしを褒めてくれますの。騎士団の皆様も同様です。こんなに褒めてくれるのはお父様くらいでしたから、嬉しいやら照れ臭いやら……。
……………………………………
「シルヴィア、ただいま」
「カルロ! おかえりなさい!」
カルロはやっぱりかっこいいですわ。ヘレナが憧れるのも分かります。なんでしょう……この胸のモヤモヤは……。
「シルヴィア? どうした?」
「なんでもありませんわ! ご無事で良かったです。会えなくて寂しかったですわ!」
「オレもシルヴィアの顔が見れなくて寂しかったよ」
そう言って、手にキスをしてくれました。わたくしもカルロの手にキスをします。
カルロは、ヘレナの誘いをあっさり断ったそうです。そう聞いた時、とっても安心しました。でも、なんだか心がモヤモヤするのです。なんでしょう、この気持ちは……。
「シルヴィア、やっぱり様子がおかしいね? どうしたの? オレと婚約発表するの、嫌になった?」
「そんな訳ありませんわ! とっても楽しみです!」
3日後には、カルロとの婚約披露パーティーが開かれます。騎士一筋だった団長を射止めたのは誰だと騎士団では噂になっていますわ。女性騎士の先輩方は、相手が私だと気が付いておられるようですけど……。
ヘレナは、知らないわよね。そう、知らない筈なのよ。だからわたくしにあんな話を……。
「シルヴィア」
「は、はいっ!」
いけません、ぼんやりしておりましたわ。
「何を、悩んでいるの?」
そう言って、カルロがわたくしに顔を近づけてきます。え?! これは……。
「いけません! カルロとキスはしたいけど、まだ結婚してませんわ!」
「口付けはダメだよね。分かってるよ。でも、頬なら良いでしょう?」
涙目で頷くわたくしを、楽しそうに見つめながらカルロは頬にキスをしました。カルロの顔が近づくと、頭がぼんやりして何も考えられなくなってきましたわ。
「ふふっ、オレとキスしたいと思ってくれてるなら、嫌われた訳ではなさそうだね。さて、何に悩んでるのか教えてくれるよね? でないと、また頬にキスするよ?」
「ま……待ってくださいませ……」
すっかりカルロに翻弄されたわたくしは、モヤモヤした気持ちもぐちゃぐちゃした気持ちも、全て話してしまいました。その間に、何度も頬にキスされましたわ。もう、頭が沸騰しそうです。
「それは、嬉しいなぁ。嫉妬してくれたんだね。でも安心してね。オレはシルヴィア一筋だから」
そう言って、わたくしの頬にキスをするカルロはちょっぴり意地悪そうな顔をしておりましたわ。それでも素敵だと思うわたくしもだいぶカルロが好きみたいですわね。
今日の仕事は終わって、着替えながらヘレナとおしゃべりをしていました。
「ええ、確か今日だったと思うわ」
この後、カルロと会える予定なのです。ワクワクしますわ。
「団長かっこいいよねぇ。憧れるわぁ。実はね、フリーだって聞いたから団長にアタックしちゃったの!」
「えっ……!」
ヘレナは、カルロが好きなんですの?!
「残念ながら相手にされなかったけどね。もうすぐ婚約者を発表するし、不実な事など出来ないって真顔で言われたわよ。ちょっと怖かったわ。あれはよっぽど婚約者が好きなんだろうね。貴族様でも遊び相手くらいにはなれるかな~と思ったけど、あの手の男は誘うだけ無駄だわ」
「そ、そうなのですね……」
「シルヴィアも真面目そうよねぇ。ねぇ、貴族って本当に結婚式までキスもしないものなの?」
「え、ええ……表向きはそうですわね」
「ま、所詮表向きよね。あたしこないだ、娼館に貴族のお坊ちゃん入るとこ見たもん。確か結婚間近だった筈よ。街中なら貴族ともバレないだろうってハメ外してる人多いけど、貴族は立ち振る舞いでバレるっつーのに。ねぇ! シルヴィアは婚約者とか居ないの?!」
「申し出は、あります。父と検討中ですわ」
「そっかぁ、確かにシルヴィアはモテそうよね」
「わたくし、学園では誰も話しかけてくれませんでしたわよ?」
「シルヴィアは綺麗だから、近寄り難かっただけじゃないの?」
「それはないですわ。元婚約者は学園で大人気でわたくしみたいな地味でお固い女と婚約させられて可哀想だとよく陰口を言われましたもの」
「うっわ、貴族様は見る目ないわねぇ。シルヴィアは確かに真面目だけど、地味じゃないでしょ。こないだ正式な騎士服初めて着たじゃない?」
「ええ、ヘレナはとっても似合ってましたわ!」
「ありがと、でもシルヴィアの方が凛としてて素敵だったわ。シルヴィアはどちらかと言うと華がある美人よ。地味ではないわ」
「そ、そのような事ありませんわ……」
「あーもう! 真っ赤になって可愛いなぁ! 先輩達がシルヴィアを溺愛するのも分かるわ!」
最近、ヘレナはいつもわたくしを褒めてくれますの。騎士団の皆様も同様です。こんなに褒めてくれるのはお父様くらいでしたから、嬉しいやら照れ臭いやら……。
……………………………………
「シルヴィア、ただいま」
「カルロ! おかえりなさい!」
カルロはやっぱりかっこいいですわ。ヘレナが憧れるのも分かります。なんでしょう……この胸のモヤモヤは……。
「シルヴィア? どうした?」
「なんでもありませんわ! ご無事で良かったです。会えなくて寂しかったですわ!」
「オレもシルヴィアの顔が見れなくて寂しかったよ」
そう言って、手にキスをしてくれました。わたくしもカルロの手にキスをします。
カルロは、ヘレナの誘いをあっさり断ったそうです。そう聞いた時、とっても安心しました。でも、なんだか心がモヤモヤするのです。なんでしょう、この気持ちは……。
「シルヴィア、やっぱり様子がおかしいね? どうしたの? オレと婚約発表するの、嫌になった?」
「そんな訳ありませんわ! とっても楽しみです!」
3日後には、カルロとの婚約披露パーティーが開かれます。騎士一筋だった団長を射止めたのは誰だと騎士団では噂になっていますわ。女性騎士の先輩方は、相手が私だと気が付いておられるようですけど……。
ヘレナは、知らないわよね。そう、知らない筈なのよ。だからわたくしにあんな話を……。
「シルヴィア」
「は、はいっ!」
いけません、ぼんやりしておりましたわ。
「何を、悩んでいるの?」
そう言って、カルロがわたくしに顔を近づけてきます。え?! これは……。
「いけません! カルロとキスはしたいけど、まだ結婚してませんわ!」
「口付けはダメだよね。分かってるよ。でも、頬なら良いでしょう?」
涙目で頷くわたくしを、楽しそうに見つめながらカルロは頬にキスをしました。カルロの顔が近づくと、頭がぼんやりして何も考えられなくなってきましたわ。
「ふふっ、オレとキスしたいと思ってくれてるなら、嫌われた訳ではなさそうだね。さて、何に悩んでるのか教えてくれるよね? でないと、また頬にキスするよ?」
「ま……待ってくださいませ……」
すっかりカルロに翻弄されたわたくしは、モヤモヤした気持ちもぐちゃぐちゃした気持ちも、全て話してしまいました。その間に、何度も頬にキスされましたわ。もう、頭が沸騰しそうです。
「それは、嬉しいなぁ。嫉妬してくれたんだね。でも安心してね。オレはシルヴィア一筋だから」
そう言って、わたくしの頬にキスをするカルロはちょっぴり意地悪そうな顔をしておりましたわ。それでも素敵だと思うわたくしもだいぶカルロが好きみたいですわね。
35
お気に入りに追加
5,217
あなたにおすすめの小説
【完結】妹のせいで貧乏くじを引いてますが、幸せになります
禅
恋愛
妹が関わるとロクなことがないアリーシャ。そのため、学校生活も後ろ指をさされる生活。
せめて普通に許嫁と結婚を……と思っていたら、父の失態で祖父より年上の男爵と結婚させられることに。そして、許嫁はふわカワな妹を選ぶ始末。
普通に幸せになりたかっただけなのに、どうしてこんなことに……
唯一の味方は学友のシーナのみ。
アリーシャは幸せをつかめるのか。
※小説家になろうにも投稿中
【完結】婚約者も両親も家も全部妹に取られましたが、庭師がざまぁ致します。私はどうやら帝国の王妃になるようです?
鏑木 うりこ
恋愛
父親が一緒だと言う一つ違いの妹は姉の物を何でも欲しがる。とうとう婚約者のアレクシス殿下まで欲しいと言い出た。もうここには居たくない姉のユーティアは指輪を一つだけ持って家を捨てる事を決める。
「なあ、お嬢さん、指輪はあんたを選んだのかい?」
庭師のシューの言葉に頷くと、庭師はにやりと笑ってユーティアの手を取った。
少し前に書いていたものです。ゆるーく見ていただけると助かります(*‘ω‘ *)
HOT&人気入りありがとうございます!(*ノωノ)<ウオオオオオオ嬉しいいいいい!
色々立て込んでいるため、感想への返信が遅くなっております、申し訳ございません。でも全部ありがたく読ませていただいております!元気でます~!('ω')完結まで頑張るぞーおー!
★おかげさまで完結致しました!そしてたくさんいただいた感想にやっとお返事が出来ました!本当に本当にありがとうございます、元気で最後まで書けたのは皆さまのお陰です!嬉し~~~~~!
これからも恋愛ジャンルもポチポチと書いて行きたいと思います。また趣味趣向に合うものがありましたら、お読みいただけるととっても嬉しいです!わーいわーい!
【完結】をつけて、完結表記にさせてもらいました!やり遂げた~(*‘ω‘ *)
ダンスパーティーで婚約者から断罪された挙句に婚約破棄された私に、奇跡が起きた。
ねお
恋愛
ブランス侯爵家で開催されたダンスパーティー。
そこで、クリスティーナ・ヤーロイ伯爵令嬢は、婚約者であるグスタフ・ブランス侯爵令息によって、貴族子女の出揃っている前で、身に覚えのない罪を、公開で断罪されてしまう。
「そんなこと、私はしておりません!」
そう口にしようとするも、まったく相手にされないどころか、悪の化身のごとく非難を浴びて、婚約破棄まで言い渡されてしまう。
そして、グスタフの横には小さく可憐な令嬢が歩いてきて・・・。グスタフは、その令嬢との結婚を高らかに宣言する。
そんな、クリスティーナにとって絶望しかない状況の中、一人の貴公子が、その舞台に歩み出てくるのであった。
家に代々伝わる髪色を受け継いでいないからとずっと虐げられてきていたのですが……。
四季
恋愛
メリア・オフトレスは三姉妹の真ん中。
しかしオフトレス家に代々伝わる緑髪を受け継がず生まれたために母や姉妹らから虐げられていた。
だがある時、トレットという青年が現れて……?
姉妹同然に育った幼馴染に裏切られて悪役令嬢にされた私、地方領主の嫁からやり直します
しろいるか
恋愛
第一王子との婚約が決まり、王室で暮らしていた私。でも、幼馴染で姉妹同然に育ってきた使用人に裏切られ、私は王子から婚約解消を叩きつけられ、王室からも追い出されてしまった。
失意のうち、私は遠い縁戚の地方領主に引き取られる。
そこで知らされたのは、裏切った使用人についての真実だった……!
悪役令嬢にされた少女が挑む、やり直しストーリー。
妹に醜くなったと婚約者を押し付けられたのに、今さら返せと言われても
亜綺羅もも
恋愛
クリスティーナ・デロリアスは妹のエルリーン・デロリアスに辛い目に遭わされ続けてきた。
両親もエルリーンに同調し、クリスティーナをぞんざいな扱いをしてきた。
ある日、エルリーンの婚約者であるヴァンニール・ルズウェアーが大火傷を負い、醜い姿となってしまったらしく、エルリーンはその事実に彼を捨てることを決める。
代わりにクリスティーナを押し付ける形で婚約を無かったことにしようとする。
そしてクリスティーナとヴァンニールは出逢い、お互いに惹かれていくのであった。
村八分にしておいて、私が公爵令嬢だったからと手の平を返すなんて許せません。
木山楽斗
恋愛
父親がいないことによって、エルーシャは村の人達から迫害を受けていた。
彼らは、エルーシャが取ってきた食べ物を奪ったり、村で起こった事件の犯人を彼女だと決めつけてくる。そんな彼らに、エルーシャは辟易としていた。
ある日いつものように責められていた彼女は、村にやって来た一人の人間に助けられた。
その人物とは、公爵令息であるアルディス・アルカルドである。彼はエルーシャの状態から彼女が迫害されていることに気付き、手を差し伸べてくれたのだ。
そんなアルディスは、とある目的のために村にやって来ていた。
彼は亡き父の隠し子を探しに来ていたのである。
紆余曲折あって、その隠し子はエルーシャであることが判明した。
すると村の人達は、その態度を一変させた。エルーシャに、媚を売るような態度になったのである。
しかし、今更手の平を返されても遅かった。様々な迫害を受けてきたエルーシャにとって、既に村の人達は許せない存在になっていたのだ。
ざまぁを回避したい王子は婚約者を溺愛しています
宇水涼麻
恋愛
春の学生食堂で、可愛らしい女の子とその取り巻きたちは、一つのテーブルに向かった。
そこには、ファリアリス公爵令嬢がいた。
「ファリアリス様、ディック様との婚約を破棄してください!」
いきなりの横暴な要求に、ファリアリスは訝しみながらも、淑女として、可憐に凛々しく対応していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる