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第二話

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「お父様、わたくしアルベルトに侮辱されたわ」

騎士団で剣の稽古をしながらお父様にお伝えしたら、お父様がお怒りになって剣が乱れました。

「なんだと?!」

お父様の剣を弾き飛ばしましたわ! やりました! 久しぶりにお父様に勝ちましたわ!

「ふふっ、わたくしの勝ちですわ」

「勝敗などどうでも良い! シャンドリ伯爵め! シルヴィアを大事にすると言うから婚約を認めたのに、侮辱するとはどういうことだ!」

「なんでも、アルベルトは侯爵家の御令嬢とキスをしたらしいですわよ」

バキッ……!

「お父様! 床を壊すのはおやめくださいまし!」

「……キス……キスだと……ずいぶん舐めた真似をしてくれる……」

「わたくし、本当に腹が立ちましたの。その上、アルベルトはわたくしから婚約破棄しろと言いましたわ。アルベルトから破棄したら怒られる。ですって」

「怒られるで済むか! 単に慰謝料を払いたくないだけだろう! 馬鹿にしおって! 即刻破棄の手続きを取るぞ! もちろんあちらの有責だ! 婚約の書面には、浮気をした場合の慰謝料も記載してある! 高額だからな、シャンドリ伯爵家は終わりだ」

「それなんですけど、お父様。こちらから破棄を申し出てあちらの有責とするには、アルベルトが浮気をした証拠がいるでしょう?」

「……む、確かに」

「お相手は格上の侯爵家。なかなか証拠はつかめませんわ。ですからわたくし言いましたの。夜会で、たくさんの人が見てる前でサブリナ様とキスをしたらわたくしから婚約破棄すると」

「はははっ! さすが私の娘!」

「アルベルトは、わたくしから破棄すると聞いたら大喜びでしたわ」

「……やはりぶちのめそう」

「おやめくださいまし。こちらの手を汚す価値もありませんわ」

「そうか、そうだな。さすがシルヴィアだ。それなら、すぐ次の婚約者を探そう」

「しばらくはお相手を探したくありませんわ。すぐに次の方と婚約すれば、いらぬ噂が立ちますもの」

「しかし、シルヴィアはもう17だ。来年には結婚を控えていたし、良い男はほとんど婚約済み。急いで次を探さないと」

「わたくしが結婚しないのは、無しですわよね?」

「……結婚したくないのか?」

「男に振り回されるのはもう、うんざりです。アルベルトのフォローを、わたくしがどれだけしたと思いますか?」

わたくし、アルベルトのテスト対策、生徒会のフォロー、宿題まで手伝っていましたのよ。いずれ婿に来るし、フォローするのが当たり前だと、婚約した途端に何もしなくなりましたの。頭にきて放置したら、わたくしがアルベルトにべたべたして仕事が出来なくなったなんて言うんですの。

生徒会長も、わたくしを責めましたわ。まぁ、その生徒会長がサブリナ様なんですけどね。

生徒会長にまで責められては、わたくしの評価が下がってしまいます。仕方なくアルベルトのフォローをしていたら、あのバカ調子に乗ってどんどん仕事を押してつけてきましたの。

なんでアルベルトは学園で優秀だと人気があるのか理解出来ませんわ。わたくしは、お固く融通がきかないと悪口を言われる始末ですのに。

何度も生徒会や、教師に訴えましたわ。

だけど、サブリナ様の方が地位が高く、どんどんわたくしが不利になりましたの。だから諦めて働いていましたわ。どうせアルベルトと結婚するなら、アルベルトの評価が上がるのは喜ばしいとも思っておりましたし。

「なんだと……?!」

「アルベルトの優秀さは、わたくしがフォローしてこそですわ。結婚するならと我慢していましたがあんなに不誠実だと思いませんでした。わたくし、誠実な男性が好みなんです。アルベルトはないですわ!」

「そうだな。アルベルトは2度と我が家の敷居を跨がせない。シルヴィア、結婚は急がなくて大丈夫だ。しなくても良い。養子を取っても構わないから学園を卒業したら好きに過ごすと良い」

「本当ですの! なら、わたくし騎士団に入りたいですわ!」
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