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餌付けには金がかかる
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「美味しい、美味しいですぅ!」
ラーメン、3杯食べやがった。あまりの食いっぷりに注目集めてんじゃねぇか。
「お嬢ちゃんよく食べるね! ほら、チャーシューおまけだ!」
「ありがとうございますぅ! 良い人ですね!」
コイツの良い人の基準、低いな。大丈夫かよ。食べ物与えたら、簡単に信用しそうだな。
……ん? わかりやすく欲にまみれた人間達が見てんなぁ。まぁ、これだけの美人なら、注目は集めるか。
「ねー、ねー、お嬢さん、俺たちもっと美味い店知ってるよ? 一緒に行こうよ!」
店を出て、しばらくしたら話しかけられた。尾行されてたし、どこで声かけてくるかと思ってたら、こんな人気のないとこで声かけてくるなんて、ろくな人間じゃねぇなぁ。
「え?! もっと美味しいもの、あるんですか?!」
簡単に引っかかりやがった……気にくわねぇなぁ。
「ダメだ」
「ああ?! 俺たちはこの子を誘ってんの! お前はお呼びじゃねーんだよ!」
今は普通の人間の格好だし、舐められてもしょーがねぇが、気にいらねぇ。
「ダメですか?」
「ああ、ダメだ」
「じゃあごめんなさい。行かないです」
「えー! こんな男放っておこうよ! お前、今すぐどっか行けよ」
人間共が、鉄パイプとか持ってオレを脅しにかかる。なるほどな、まさにオレが狩るにふさわしいダメ人間だぜ。
それにしてもこの元天使、素直にオレの言う事聞くんだな。へらっと笑ってる顔がやたら可愛く見える。天使って、こんな可愛いんだな。いや、オレの会った天使はみんな目を釣り上げてた。オレが悪魔だから当然だけどコイツは最初から無警戒だったし、天使も辞めちまった。もうオレのもんだ。悪魔のものに手を出したんなら、それなりに制裁しても構わねえよなぁ。
「コイツはオレのもんだ。手ぇ出さねぇなら見逃してやるからどっか行け」
「すいません、私もうこの人のものなので」
自分から言うか?! なんなんだコイツは?!
「えー、オレのものとか言う男やばいって! ね、俺らならもっと優しくするよ?!」
あんだけ欲にまみれてるくせによく言うぜ。
「でも、悪魔さん優しいです。私も、約束は守らないと」
「お前こんな純粋そうな子騙して何してんだよ! 悪魔ってウケる。あだ名かぁ?」
「いや、種族名だな」
ツノと羽を出す。ちょうどいい、この人間の欲は、色欲か。分かりやすいな。
「うわっ……お前何なんだよ?!」
「見ての通り、悪魔だが?」
「……やべえ! 逃げろ!」
「先に手を出したのは、そちらだからな」
襲ってきた男達の足を止めて、欲を引き出す。わざわざ襲おうとしてただけあって、なかなかな欲が集まったな。そうだ、ついでに人間の金も貰っておくか。
「さ、持ち金をここに出せ。自主的に出すなら、許してやる。素直に出さないなら、もう少し可愛がってやるよ」
「ひぃい! 出します出しますっ!」
金を置いて、男達は逃げていった。ふむ、これで買い物も可能だな。
「悪魔さん、あの人達、悪い人ですか?」
「ん? お前はあの人間共が悪く見えたのか?」
「分かりません、でも悪魔さんは私を守ろうとしてくれたように見えました」
なっ……、そんな事ねぇぞ! 絡んできて鬱陶しいから欲を取って追い出しただけだし、この欲はオレの仕事の一つでもある。けど、今日のノルマは終わってたんだよな。いつもならノルマギリギリしか欲集めたりしねぇのに、オレは何やってんだ?
それに、人間の金なんてそんな要らねぇ筈だよな。今までだって、金に執着してる人間用にちょっと持ってるだけだ。元がありゃあ増やせるしな。でも、さっきのラーメンは増やした金じゃなくて普通に支払った。なんでオレは金を集めようとした?
……ちっ……天使に感化されてんじゃねぇか。
「オレのものを取ろうとしたヤツに制裁を加えただけだ。色欲取ってやったから、もうナンパなんてしようと思わねぇよ」
彼女いたり、結婚してたりしたら愛しあう事もできねぇだろうが、人間界の性犯罪者予備軍は確実に減っただろ。あいつらの今後なんて知るかよ。
「やっぱり悪魔さん優しいですね!」
「なんでそうなる!」
「私みたいに、怖い思いする人減らそうとしてくれたんでしょう?」
「……なっ! そんな訳ねえだろ! オレのものに手を出したから制裁しただけだ! だいたいお前はもっと警戒しろ! そんだけ美人なら、男が寄ってくるに決まってんだろ!」
「へ……私、天界では可愛くないって言われてましたけど?」
「な訳あるか! お前は美人だ! オレが手に入れたくなるくらいにはな!」
こいつ、真っ赤な顔してやがる。やべえ、多分オレも顔が赤い。くっそ、この空気を変えよう。そうだ!
「なぁ、人間界にコンビニってあるんだが、こんな夜中でも美味いもの売ってんだ。金も手に入ったし、なんでも買ってやるから行こうぜ」
「美味しいもの?! ……でも、そのお金はさっきの人達のものじゃないですか?」
「いや、自主的にあいつらがオレにくれたものだ。知ってるか? 人間って詫びる時に金やモノ、菓子なんかを渡すんだ。これはあいつらからの詫びの金だから、もうオレのものだ」
「そうなんですね! 私ならお金よりお菓子が嬉しいです!」
「菓子も買えるぞ。買ってやるよ」
「嬉しいです! 行きます!」
この日からオレは、仕事をさっさと終わらせて美味いものを探すようになった。可愛い元天使は、食いしん坊で金がかかる。だが、オレは退屈な日々から抜け出した。
「悪魔さん、今日も美味しいですぅ!」
ラーメン、3杯食べやがった。あまりの食いっぷりに注目集めてんじゃねぇか。
「お嬢ちゃんよく食べるね! ほら、チャーシューおまけだ!」
「ありがとうございますぅ! 良い人ですね!」
コイツの良い人の基準、低いな。大丈夫かよ。食べ物与えたら、簡単に信用しそうだな。
……ん? わかりやすく欲にまみれた人間達が見てんなぁ。まぁ、これだけの美人なら、注目は集めるか。
「ねー、ねー、お嬢さん、俺たちもっと美味い店知ってるよ? 一緒に行こうよ!」
店を出て、しばらくしたら話しかけられた。尾行されてたし、どこで声かけてくるかと思ってたら、こんな人気のないとこで声かけてくるなんて、ろくな人間じゃねぇなぁ。
「え?! もっと美味しいもの、あるんですか?!」
簡単に引っかかりやがった……気にくわねぇなぁ。
「ダメだ」
「ああ?! 俺たちはこの子を誘ってんの! お前はお呼びじゃねーんだよ!」
今は普通の人間の格好だし、舐められてもしょーがねぇが、気にいらねぇ。
「ダメですか?」
「ああ、ダメだ」
「じゃあごめんなさい。行かないです」
「えー! こんな男放っておこうよ! お前、今すぐどっか行けよ」
人間共が、鉄パイプとか持ってオレを脅しにかかる。なるほどな、まさにオレが狩るにふさわしいダメ人間だぜ。
それにしてもこの元天使、素直にオレの言う事聞くんだな。へらっと笑ってる顔がやたら可愛く見える。天使って、こんな可愛いんだな。いや、オレの会った天使はみんな目を釣り上げてた。オレが悪魔だから当然だけどコイツは最初から無警戒だったし、天使も辞めちまった。もうオレのもんだ。悪魔のものに手を出したんなら、それなりに制裁しても構わねえよなぁ。
「コイツはオレのもんだ。手ぇ出さねぇなら見逃してやるからどっか行け」
「すいません、私もうこの人のものなので」
自分から言うか?! なんなんだコイツは?!
「えー、オレのものとか言う男やばいって! ね、俺らならもっと優しくするよ?!」
あんだけ欲にまみれてるくせによく言うぜ。
「でも、悪魔さん優しいです。私も、約束は守らないと」
「お前こんな純粋そうな子騙して何してんだよ! 悪魔ってウケる。あだ名かぁ?」
「いや、種族名だな」
ツノと羽を出す。ちょうどいい、この人間の欲は、色欲か。分かりやすいな。
「うわっ……お前何なんだよ?!」
「見ての通り、悪魔だが?」
「……やべえ! 逃げろ!」
「先に手を出したのは、そちらだからな」
襲ってきた男達の足を止めて、欲を引き出す。わざわざ襲おうとしてただけあって、なかなかな欲が集まったな。そうだ、ついでに人間の金も貰っておくか。
「さ、持ち金をここに出せ。自主的に出すなら、許してやる。素直に出さないなら、もう少し可愛がってやるよ」
「ひぃい! 出します出しますっ!」
金を置いて、男達は逃げていった。ふむ、これで買い物も可能だな。
「悪魔さん、あの人達、悪い人ですか?」
「ん? お前はあの人間共が悪く見えたのか?」
「分かりません、でも悪魔さんは私を守ろうとしてくれたように見えました」
なっ……、そんな事ねぇぞ! 絡んできて鬱陶しいから欲を取って追い出しただけだし、この欲はオレの仕事の一つでもある。けど、今日のノルマは終わってたんだよな。いつもならノルマギリギリしか欲集めたりしねぇのに、オレは何やってんだ?
それに、人間の金なんてそんな要らねぇ筈だよな。今までだって、金に執着してる人間用にちょっと持ってるだけだ。元がありゃあ増やせるしな。でも、さっきのラーメンは増やした金じゃなくて普通に支払った。なんでオレは金を集めようとした?
……ちっ……天使に感化されてんじゃねぇか。
「オレのものを取ろうとしたヤツに制裁を加えただけだ。色欲取ってやったから、もうナンパなんてしようと思わねぇよ」
彼女いたり、結婚してたりしたら愛しあう事もできねぇだろうが、人間界の性犯罪者予備軍は確実に減っただろ。あいつらの今後なんて知るかよ。
「やっぱり悪魔さん優しいですね!」
「なんでそうなる!」
「私みたいに、怖い思いする人減らそうとしてくれたんでしょう?」
「……なっ! そんな訳ねえだろ! オレのものに手を出したから制裁しただけだ! だいたいお前はもっと警戒しろ! そんだけ美人なら、男が寄ってくるに決まってんだろ!」
「へ……私、天界では可愛くないって言われてましたけど?」
「な訳あるか! お前は美人だ! オレが手に入れたくなるくらいにはな!」
こいつ、真っ赤な顔してやがる。やべえ、多分オレも顔が赤い。くっそ、この空気を変えよう。そうだ!
「なぁ、人間界にコンビニってあるんだが、こんな夜中でも美味いもの売ってんだ。金も手に入ったし、なんでも買ってやるから行こうぜ」
「美味しいもの?! ……でも、そのお金はさっきの人達のものじゃないですか?」
「いや、自主的にあいつらがオレにくれたものだ。知ってるか? 人間って詫びる時に金やモノ、菓子なんかを渡すんだ。これはあいつらからの詫びの金だから、もうオレのものだ」
「そうなんですね! 私ならお金よりお菓子が嬉しいです!」
「菓子も買えるぞ。買ってやるよ」
「嬉しいです! 行きます!」
この日からオレは、仕事をさっさと終わらせて美味いものを探すようになった。可愛い元天使は、食いしん坊で金がかかる。だが、オレは退屈な日々から抜け出した。
「悪魔さん、今日も美味しいですぅ!」
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