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こぼれ話、その後など
こぼれ話 ニルは諦めない 1
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「これ、あたしの名前の花だよね? ちっちゃい、可愛いわ! ニルはなんでも知ってるのね。すごいわ!」
そう言って笑っていたミモザとは、ずっと一緒に居られないのは分かっていた。
「良いか、ミモザお嬢様は貴族だ。仲良くしても良いが、ちゃんと距離は取っておくんだ。ミモザ様はいずれどこかの貴族と結婚するんだから」
両親も、祖父母も、屋敷に住む使用人達も、大人はみんなそう言った。だけど、ミモザはオレと居る時が一番楽しそうだ。
「なぁ、ミモザはオレが好き?」
「うん! ニル大好き!」
それなら……ミモザを連れてどっか遠くに行けば良いかなって思った。
でも、旦那様には恩があるし、そんな事したらミモザの兄さんは物凄く怒るだろう。それはダメだ。
どうすれば良い。どうにかしてミモザとずっと一緒に居たい。けど、オレは平民だ。
やっぱり、貴族のミモザとずっと一緒に居るのは無理なのか……。この気持ちは、子どもの頃の思い出になるんだろう。だんだん諦めの気持ちが強くなっていた。
そんな時、ミモザと遊んでいたらミモザの爺さんと会った。ミモザの爺さんは、オレにも分け隔てなく接してくれた。剣術の真似事まで教えてくれた。
旦那様や奥様、坊ちゃんはともかく、この家に来た貴族様で、使用人の息子の相手をしてくれる人なんて今まで居なかった。
ミモザと遊んでたら、オレは追い出されるのが常だったから。
だから、興味本位で聞いたんだ。なんでこんなに優しくしてくれるのかって。
「ワシは元々平民で、兄弟も多くてな。弟や妹の面倒を見ていたから、子どもが好きなんじゃ」
光が、見えた。
それから、オレはミモザの爺さんに必死で聞いた。どうしたら貴族になれるのかと。なんでそんなに貴族になりたいのかと聞かれたから、ミモザとずっと一緒に居たいと答えた。
爺さんは、それからめちゃめちゃ厳しくなった。
けど、今まで全くなかった希望があるなら、頑張れた。そのうち、ミモザも淑女教育が始まって会う事はなくなった。最後に会ったミモザは、少し大人びていて綺麗だった。
早くしないと、ミモザはすぐにどこかに嫁いでしまうと思ったから、必死だった。
必死で身体を鍛えて、軍に入った。平民のオレがのし上がるにはここしかなかった。その為に、学べる事はなんでも学んだ。
オレは身体が小さかったから、潜入捜査に向いていると言われ、色々教わった。大抵の場所には潜めるようになった。
気配を消す方法も覚えた。いくつもの貴族の屋敷に潜入して、重要書類を盗んだり、違法な事をしている証拠を手に入れたりした。
そう言って笑っていたミモザとは、ずっと一緒に居られないのは分かっていた。
「良いか、ミモザお嬢様は貴族だ。仲良くしても良いが、ちゃんと距離は取っておくんだ。ミモザ様はいずれどこかの貴族と結婚するんだから」
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「なぁ、ミモザはオレが好き?」
「うん! ニル大好き!」
それなら……ミモザを連れてどっか遠くに行けば良いかなって思った。
でも、旦那様には恩があるし、そんな事したらミモザの兄さんは物凄く怒るだろう。それはダメだ。
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旦那様や奥様、坊ちゃんはともかく、この家に来た貴族様で、使用人の息子の相手をしてくれる人なんて今まで居なかった。
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だから、興味本位で聞いたんだ。なんでこんなに優しくしてくれるのかって。
「ワシは元々平民で、兄弟も多くてな。弟や妹の面倒を見ていたから、子どもが好きなんじゃ」
光が、見えた。
それから、オレはミモザの爺さんに必死で聞いた。どうしたら貴族になれるのかと。なんでそんなに貴族になりたいのかと聞かれたから、ミモザとずっと一緒に居たいと答えた。
爺さんは、それからめちゃめちゃ厳しくなった。
けど、今まで全くなかった希望があるなら、頑張れた。そのうち、ミモザも淑女教育が始まって会う事はなくなった。最後に会ったミモザは、少し大人びていて綺麗だった。
早くしないと、ミモザはすぐにどこかに嫁いでしまうと思ったから、必死だった。
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オレは身体が小さかったから、潜入捜査に向いていると言われ、色々教わった。大抵の場所には潜めるようになった。
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