36 / 46
第三十六話
しおりを挟む
「お兄様、お義姉様、わたくしまた結婚出来るかしら? それとも生涯独身の方が良いかしら?」
「ミモザが好きな男と結婚したら良い。もちろん、結婚しなくても良い。ミモザはどうしたいんだ?」
「結婚はしばらく良いですわ。なんだか疲れてしまいましたもの。でも、そろそろ適齢期は過ぎてしまいますわね。最近は婚姻の申し込みは来ておりませんの?」
「……来てる」
「そうなんですね。お受けした方が良いですか? 今度はまともな方なら嬉しいですわ」
「間違いなくまともな方よ。でも、お受けしなくても構わないわ。ミモザの好きにすれば良いの。ねぇ、ミモザに好きな人は居ないの?」
お義姉様に聞かれましたが、思い付きません。
「……居ませんね」
「理想のタイプとかは?」
「そうですね、素で話せて、お互い思いやれる相手なら嬉しいですわ」
「身近に居ないの? そんな人」
なんでしょう。お義姉様がグイグイ来ますわね。そもそも、あんな日々を過ごしておりましたし、その時わたくしの身近に居た人なんて……。
ひとりしか……。
ど、どうしましょう、急にニルの顔が浮かびました。
顔が熱いですわ。
「あら、思い当たる人が居るみたいね?」
「その……ですが……彼は……」
ニルは貴族ではありません。それに、そもそもわたくしを好きかも分かりません。わたくしを守ってくれたのも、仕事だからでしょうし……。
「ミモザ、ニルが好きなのか?」
お兄様ぁ! ストレートに聞かないで下さいませ! 名前も出してないのになんでニルと分かるんですの?! どうしましょう。今まで全く意識してなかったのに、急にニルの事を意識し始めてしまったではありませんか!
確かに、ニルは素敵な人だと思います。あの地獄の日々もニルが居たから耐えられました。初めて花をくれた時の事は今でも覚えています。
馬車で久しぶりに話した時はとても嬉しかったです。お爺さんの格好をしていましたが、あの後久しぶりに顔を見たら、とても素敵な男性になっていて少しだけドキドキしました。
確かに、わたくしは幼い頃はニルが好きでした。ただ、友情なのか愛情なのかは分かりません。淑女教育を受けて、身分差を知りましたし、貴族は恋愛結婚は出来ないと思っておりましたから、恋愛感情を持った事はないのです。
ですが、このドキドキする気持ちはなんでしょうか。
「お、お兄様……わたくし……もう分かりませんわ……」
蚊の鳴くような小さな声で呟きましたら、お兄様は頭を抱えてしまわれました。
「はぁ……ミモザが好きならニルとの結婚を纏めようと思ったけど……お断りして良いね?」
「え! 嫌です!」
思わず出た言葉に驚いたのは、わたくし自身でした。
「ミモザが好きな男と結婚したら良い。もちろん、結婚しなくても良い。ミモザはどうしたいんだ?」
「結婚はしばらく良いですわ。なんだか疲れてしまいましたもの。でも、そろそろ適齢期は過ぎてしまいますわね。最近は婚姻の申し込みは来ておりませんの?」
「……来てる」
「そうなんですね。お受けした方が良いですか? 今度はまともな方なら嬉しいですわ」
「間違いなくまともな方よ。でも、お受けしなくても構わないわ。ミモザの好きにすれば良いの。ねぇ、ミモザに好きな人は居ないの?」
お義姉様に聞かれましたが、思い付きません。
「……居ませんね」
「理想のタイプとかは?」
「そうですね、素で話せて、お互い思いやれる相手なら嬉しいですわ」
「身近に居ないの? そんな人」
なんでしょう。お義姉様がグイグイ来ますわね。そもそも、あんな日々を過ごしておりましたし、その時わたくしの身近に居た人なんて……。
ひとりしか……。
ど、どうしましょう、急にニルの顔が浮かびました。
顔が熱いですわ。
「あら、思い当たる人が居るみたいね?」
「その……ですが……彼は……」
ニルは貴族ではありません。それに、そもそもわたくしを好きかも分かりません。わたくしを守ってくれたのも、仕事だからでしょうし……。
「ミモザ、ニルが好きなのか?」
お兄様ぁ! ストレートに聞かないで下さいませ! 名前も出してないのになんでニルと分かるんですの?! どうしましょう。今まで全く意識してなかったのに、急にニルの事を意識し始めてしまったではありませんか!
確かに、ニルは素敵な人だと思います。あの地獄の日々もニルが居たから耐えられました。初めて花をくれた時の事は今でも覚えています。
馬車で久しぶりに話した時はとても嬉しかったです。お爺さんの格好をしていましたが、あの後久しぶりに顔を見たら、とても素敵な男性になっていて少しだけドキドキしました。
確かに、わたくしは幼い頃はニルが好きでした。ただ、友情なのか愛情なのかは分かりません。淑女教育を受けて、身分差を知りましたし、貴族は恋愛結婚は出来ないと思っておりましたから、恋愛感情を持った事はないのです。
ですが、このドキドキする気持ちはなんでしょうか。
「お、お兄様……わたくし……もう分かりませんわ……」
蚊の鳴くような小さな声で呟きましたら、お兄様は頭を抱えてしまわれました。
「はぁ……ミモザが好きならニルとの結婚を纏めようと思ったけど……お断りして良いね?」
「え! 嫌です!」
思わず出た言葉に驚いたのは、わたくし自身でした。
21
お気に入りに追加
2,477
あなたにおすすめの小説
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
側近という名の愛人はいりません。というか、そんな婚約者もいりません。
gacchi
恋愛
十歳の時にお見合いで婚約することになった侯爵家のディアナとエラルド。一人娘のディアナのところにエラルドが婿入りする予定となっていたが、エラルドは領主になるための勉強は嫌だと逃げ出してしまった。仕方なく、ディアナが女侯爵となることに。五年後、学園で久しぶりに再会したエラルドは、幼馴染の令嬢三人を連れていた。あまりの距離の近さに友人らしい付き合い方をお願いするが、一向に直す気配はない。卒業する学年になって、いい加減にしてほしいと注意したディアナに、エラルドは令嬢三人を連れて婿入りする気だと言った。
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。
【完結】順序を守り過ぎる婚約者から、婚約破棄されました。〜幼馴染と先に婚約してたって……五歳のおままごとで誓った婚約も有効なんですか?〜
よどら文鳥
恋愛
「本当に申し訳ないんだが、私はやはり順序は守らなければいけないと思うんだ。婚約破棄してほしい」
いきなり婚約破棄を告げられました。
実は婚約者の幼馴染と昔、私よりも先に婚約をしていたそうです。
ただ、小さい頃に国外へ行ってしまったらしく、婚約も無くなってしまったのだとか。
しかし、最近になって幼馴染さんは婚約の約束を守るために(?)王都へ帰ってきたそうです。
私との婚約は政略的なもので、愛も特に芽生えませんでした。悔しさもなければ後悔もありません。
婚約者をこれで嫌いになったというわけではありませんから、今後の活躍と幸せを期待するとしましょうか。
しかし、後に先に婚約した内容を聞く機会があって、驚いてしまいました。
どうやら私の元婚約者は、五歳のときにおままごとで結婚を誓った約束を、しっかりと守ろうとしているようです。
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる