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第三十一話

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お金を持参したら、お義母様は大喜びしました。ローザ様のおかげだと言えば、ローザ様にも商会の仕事をするように指示なさいました。

旦那さまは渋りましたが、お義母様には逆らえません。そのかわり、旦那さまはずっとローザ様にくっついて来るし、ついでに監視もついてくるので、商会が安らげる場所ではなくなってしまいました。

ローザ様もずいぶん憔悴しておりますので、時折旦那さまと監視を眠り針で眠らせてゆっくりする時間を作っております。監視は、元々サボり気味だったそうですから芝生で寝転んでる所を寝かせております。

疲れておられるなら寝かせておきましょうという事にしておりますわ。その間に、密かにローザ様の離婚の準備を進めています。

ローザ様はデザインセンスがありました。ドレスのデザイン画を描いてもらい、制作を外部に委託して出来たドレスを店舗で販売します。規模は小さいですが、ドレスは高価なので売り上げは結構上がっています。兄から派遣されてきた従業員は順次解雇した事にして元の業務に戻って頂きました。残っているのはお義姉様だけです。お義姉様も、わたくしが離婚したら辞めます。

他の業務は全て整理しました。旦那さまには、ローザ様のドレスが素晴らしいので、そちらに集中するほうが儲かると言ってあります。ドレスを気に入ったお義母様が大賛成したので、旦那さまも文句は言いません。

経理や経営は全てローザ様に任せました。最初は嫌がられましたが、離婚の慰謝料を貯める為と言えば必死で学んでおられました。お義母様や、旦那さまはローザ様には商才もあったのか。もうわたくしは不要だと言い始めました。計画通りです。

ローザ様の慰謝料は、お兄様の知り合いの商会にドレスのデザインを提供することで貯めています。通常業務の範囲内で出来る事はそれくらいでした。ドレスの制作を委託しているのはお兄様の知り合いの服飾店です。そこのマダムが気に入ったデザインを、買い取って頂いているのです。売れた分だけローザ様へお金が入ります。人気のデザインもありますので、慰謝料分はすぐ貯まるでしょう。

ローザ様は旦那さまがべったりなので、わたくしがしていたような帳簿のごまかしは出来ません。商会の利益はすべて正直に報告するしかないので、わたくしが商会運営を行っていた頃より利益は多く、侯爵家にはお金がたくさん入っています。その為、ローザ様は大絶賛されています。

商会の帳簿は税金の決定の時に提出しますが、そちらは正しい金額で報告しています。商会に残っている帳簿は全て改ざんしたものです。後でどちらが正しいかと問われても、税金の申告が正しいので問題になる事はありません。従業員の給与などは平均的な金額を払っておりますから、人道的にも問題ありません。

税金の調査に来る役人の方に、侯爵家からのお金の要求が厳しくてこのままでは商会が立ち行かないと訴えました。すると、帳簿を2つ作るよう言われました。税金の申告が正しければ問題ないとお墨付きを得てあります。

今後ローザ様が商会を運営していても、侯爵家からのお金の要求が厳しいので、1年持たないでしょう。半年分のドレスの制作費はわたくしが支払いを済ませてからローザ様に引き継ぎました。そうしないとマダムへの支払いが滞る可能性があるからです。半年したら、きちんと先払いしないとドレスは作れません。マダムはお金に厳しいので、掛け払いは出来ませんもの。

帳簿をちゃんと見れば、気が付くのですがローザ様が気が付いているご様子はありません。

旦那さまやお義母様達が要求したお金は、全て税金の報告をしてあるので、そのうち侯爵家に税金の調査が行くでしょう。だいぶわたくしが訴えたので、そろそろかもしれません。侯爵家が残っていれば……ですけどね。

ローザ様に税金の件も伝えてあるし、侯爵家に要求されたお金は全て帳簿に記載して申告するように引き継いであります。この間、申告をしてもらいましたが問題なく出来ておりましたので大丈夫でしょう。

順調そうな船が泥舟と知るのは、わたくしが居なくなってからですわ。
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