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第二十九話

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お義姉様と一緒に旦那さまとローザ様を見送りました。ローザ様は一瞬わたくしに助けを求めようとして、おやめになりました。

少しだけ、胸がチクリと痛みます。

「ミモザ様が罪悪感を持つ事はありませんぜ。ありゃ、自業自得です」

いつの間にか、ニルが居ました。相変わらず神出鬼没です。

「そうよ。あの男、だいぶヤバい目をしていたけど……」

確かに旦那さまの目は少しおかしかったです。

「恫喝した後に優しくなるなんて、相手を支配する典型例じゃないっすか。ローザはだいぶ怯えてましたけど、逆らわない方が良いって判断したみたいっすね。正解っちゃ正解で、不正解っちゃ不正解です」

確かに、素直に言う事を聞いていれば酷い目には遭わないでしょう。ですが、今の旦那さまは、少しでも意見を言えば豹変しそうな危うさがあります。

おかしいですね。

結婚式の準備等でお会いした時は、ローザ様のどんな我儘もニコニコ受け入れておりましたのに。

ローザ様のご希望を叶えるのは全部わたくしに丸投げでしたけど。

「あの男、ずいぶん豹変しましたね。どうしてでしょうか」

「あー、たまに居ますよ。結婚したら急に態度が変わる男。ローザと結婚するまではどうにかしてローザを手に入れたいって思って優しくしてたけど、結婚しちまえば追いかけなくて良いですからね。釣った魚に餌をあげないタイプなのかもしれないっすね。ローザを愛してるって言ってましたけど、オモチャを取り上げられて怒る子どもみたいな怒り方だなって思いました。あんまりローザを大事にしてるようには見えねぇっすね」

「結婚してからの方が一緒にいる時間が長くなるからお互い大事にしないといけないのにねぇ」

「そうっすよね。せっかく好きな人と結婚出来たのに、蔑ろにするなんてあり得ねぇっす」

「お兄様とお義姉様は、結婚する前もしてからもお互い尊重しあっていて素敵ですわ。それに、ニルと結婚する方は幸せね」

「ミモザも、この件が済んだら素敵な方と結婚すれば良いわ」

「その為にはこの件をどうにかしませんとね。ローザ様、監禁されたりしないと良いですけど……」

「あの男、監禁とかするんっすか?」

「しそうな目はしてたけど、どうかしらね」

「お義姉様、隠密に探ってもらう事は出来ますか? もちろん、決して無理のない範囲で」

「ニルなら出来るだろうけど……」

「オレはミモザ様からぜってぇ離れませんよ。何があるか分かりませんから」

「そうよね。ちょっと確認するわ。今日は帰るわね。ニル、後は任せるわ。ミモザをよろしくね」

「かしこまりました。奥様」
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