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第十七話

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「ミモザ様……貴方様はもうお子は望めないでしょう」

ど、どうして?! わたくし、そんなに身体にダメージがありますの?! 痛くもないのに?! 何故ですか!

「ふん、そうかい。まぁローザちゃんが来るなら構わない。その分しっかり働きなさいよ。この女は働けるね?」

「お腹へのダメージが重く、少し休まれた方が……」

「移動ぐらいは構わないだろ。さっさと商会に戻って働きなさい。このベッドはローザちゃんの物だからね。ああ、お前が使ってしまったから新しいものに変えてあげないと。品を手配しなさい。お金は伯爵家が出してくれるだろ」

ローザ様のベッドに使用しているマットレスやシーツは、最高級品です。売ればそこそこのお金になります。そのお金は、お義母様が使うのでしょう。

わたくしは、子ができないと言われたショックでぼんやりしています。ああ、でも返事をしないとまた罵倒されますわ……。

「かしこまりました。お義母様の言う通りに致します」

「今後は家には戻らなくて良いよ。商会でもっと稼ぎなさい。領地経営もしっかりやりなさいよ。そうそう、アンタの部屋にあるものは全て売り払ったからお前はこの家に部屋はないから。正妻が来るんだからお前は邪魔だろ。でも、逃げようなんて思わない事ね。実家にも戻れないし、子が出来ないなら離婚しても行き場も無いから逃げる事も出来ないだろうけど。全くアンタは期待はずれだよ。ま、ローザちゃんが来れば孫も出来るだろう。楽しみだ。そうそう、持参金もあるんだってね。さすが伯爵家だ、お前みたいな貧乏男爵の娘とは違う。ほら! さっさと出ていきな。今日はローザちゃんが来る予定なんだから」

両親が嫁入り道具にとくれた家具を勝手に売り払うなんて……。持参金は、この結婚を取りやめたい父がわざと払えないと言ったんです! 持参金なんて要らないから、嫁げって言ったのは貴方でしょう?!

「ワシは医者です。心配ですし移動ぐらいは付き添いましょう。移動で負担がかかれば、突然亡くなってしまう事もありますからな。もちろん、追加料金などかかりませんぞ」

「……仕方ないね。医者の付き添いを認めるよ。死なれても困るしね」

「さ、参りましょう奥様。やはりずいぶん弱っておいでだ、歩けますかな?」

こんな場所にもう居たくない。ショックで呆然としておりましたら、お義母様に怒鳴られました。

「邪魔だよ! 早く出ていきな!」

「はい……」

それからは、お医者様に導かれるまま馬車に乗りました。子はもう望めず、母が選んでくれた家具も売られてしまいました。

お医者様に付き添われて、馬車に乗り込んでもショックは癒えません。お医者様は、そんなわたくしに優しく話しかけて下さいます。こんなに優しくされたのはいつぶりでしょうか。

馬車に乗り込み、ドアを閉めて馬車が動き出すと、腰が曲がっていたお医者が、急にシャキッとお立ちになられました。

「馬車の中に監視は居ない。御者は見張ってるけど、会話までは聞こえねぇから安心してくれ」

お爺さん……の筈なんですが……。この、声は……。

「ミモザはギズひとつ付いてねぇ。子が出来ないっても嘘だ。売られた家具も確保してある。商会に持って行くとバレるから、今は渡せねぇけど、ちゃんとあるから安心してくれ」

「なんで……なんで……ニルがここに居るの……?」
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