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「メアリー! ステイ!」
「お姉様? どうしたの?」
「どうしたのじゃないわよ。なんでフィリップ様を罵倒してるのよ! 大体、フィリップ様はわたくしの婚約者じゃない。ほったらかすな、なんて貴女が怒る理由はない。それに、何度も言ったわよね?! 身分差を理解しなさいと! フィリップ様、申し訳ありません。妹には言い聞かせますので、今回だけはお許し下さい」
「嫌です」
う、確かにメアリーの行為はその場で切り捨てられても仕方がない。
「……お、お姉様……だって私……」
「メアリー、貴女は平民よ。いい加減理解しなさい!」
「フィリップ様、マリベル様、申し訳ありません。もう二度とお二人とは接触させません。彼女は私が守ります」
メアリーの恋人が、頭を下げる。
「なんでっ! もうお姉さまに会えないって……!」
「いいか、マリベル様の仰る通りメアリーはもう家名のない平民だ。マリベル様のご厚意で勘違いしていたんだろうが、本来なら私達はマリベル様にも、フィリップ様とも直接言葉を交わせる身分ではない。だが、マリベル様はメアリーを心配しておられた。だから私はフィリップ様に武術を習えたんだ。私が一緒に居れば安心だと思ってもらえるようにね。メアリー、君の家族はもうマリベル様だけだと言っていたね。だが、マリベル様とは身分が違う。領主のお孫様が定期的に訪ねてくれば、メアリーも危険だ」
「……確かに、わたくしが大事にしていると分かれば、メアリーを狙う者が現れるわ」
気が付かなかったわたくしがいけないんだわ。つい、メアリーが可愛くなってしまって身分差を考えていなかった。
「そんな……私の家族はお姉さましかいないのに……」
「私がメアリーの家族になる」
「彼なら、一般人の驚異からはメアリー様を守って下さるでしょう」
「最初から……そのつもりだったのですか?」
メアリーが、怯えながらフィリップ様を見る。
「いいえ。可能ならマリベル様がメアリー様と交流を持ち続けてほしいと願っていました。だけど、その為にはメアリー様が屋敷に住み込みで働くくらいしか方法がない。だけど、それは流石に不可能だ。ガンツ様が許すわけない」
「私の親は……リリア様を殺そうとした……」
「メアリー様はマリベル様のおっしゃる通り、大きな罪はない。逆ならまだしも、子が親の罪を背負う必要はない。だけど、リリア様はメアリー様の顔を見る度に辛い記憶を思い出す。ガンツ様や、リチャード様……リリア様を愛する方々はメアリー様を許せない」
「そっか、そりゃそうですよね。……お姉さまだって……私のことなんて……」
「違う!」
「お姉さま?」
「そりゃ、最初はメアリーの事を好きになれなかった! けど、今は違う! 心配なの! 貴女がちゃんと、生きていけるか心配なの! メアリーのこと、好きよ! 家族として大事に思ってる!」
「けど、今までみたいに会うのは無理?」
「……そうね。今までメアリーを危険にさらしていたんだと今気が付いたわ。気が付かなくてごめんなさい。だからフィリップ様はメアリーとあまり会わない方が良いと仰ったのね」
忙しいのもあったが、フィリップ様が様子を見に行くと言ってくれたのでメアリーの対応をお任せしてしまっていた。お祖父様や新しいお父様が良い顔しないからって、あまり深く考えていなかった。フィリップ様はメアリーに会いたいんじゃないかって恥ずかしい勘違いまでして……。
「そうです。俺はあまり顔が知られていないので、少し変装をすればメアリー様に言い寄る男と偽装できますが、マリベル様は領民に顔が知られすぎているので目立ちます。ご安心下さい。メアリー様には守ってくれるナイトがおります。彼は強いです。数年平民として馴染めば、メアリー様に注目する者はいなくなる」
「……もしかして、彼は貴方が……」
「それは貴女のために必死で強くなった男性に対して失礼ですよ。成人した男性が身体を鍛えるには、どれほどの努力が必要だとお思いですか?」
「ごめ……ごめんなさい」
「良いんだ。フィリップ様はいきなり子爵位を賜る英雄。そんな人に平民の僕が師事出来るなんてありえない。疑って当然だ。浮世離れしたメアリーにも警戒心があったと分かって嬉しいよ」
「ごめんなさい……」
「僕は一生懸命働いているメアリーに惚れたんだ。疑うかい?」
「疑わない。もう疑わない。信じるわ。騙されても良い」
「騙したりしない。メアリーには絶対嘘を吐かない。神様に誓うよ。メアリー、私と結婚してくれ。マリベル様。貴女の大事な妹君は僕が必ず守ります。一生をかけて、幸せにします」
「それじゃあ、大事な妹を任せられないわ」
「お姉さま! 私、絶対世界一幸せになります! 彼を幸せに出来るのは私だけだもの! お姉さまに心配かけないように、ちゃんと生きます。真面目に、ちゃんと平民として生きる。だからお姉さま、ここに絶対お姉さまの事大事に思っている妹が居るって、覚えておいて」
「そうか。そうだったね。僕はメアリーと一緒に頑張ります。メアリーを守りますし、メアリーに助けてもらいます。二人で協力して、生きていきます」
「お姉さま。次にお会いした時はお姉さまとは呼びません。マリベル様、フィリップ様、今までの無礼な態度をお詫びします」
「フィリップ様、妹の結婚祝いとして……メアリーの無礼を許して頂けないでしょうか?」
「結婚祝いですか。それじゃあ許さないわけにいきませんね。可愛い弟子の結婚祝いです」
「師匠……ありがとうございます」
「メアリー、お幸せにね。もう姉とは名乗れないけど、貴女の、いいえ、あなた達の幸せを祈ってるわ」
「お姉様? どうしたの?」
「どうしたのじゃないわよ。なんでフィリップ様を罵倒してるのよ! 大体、フィリップ様はわたくしの婚約者じゃない。ほったらかすな、なんて貴女が怒る理由はない。それに、何度も言ったわよね?! 身分差を理解しなさいと! フィリップ様、申し訳ありません。妹には言い聞かせますので、今回だけはお許し下さい」
「嫌です」
う、確かにメアリーの行為はその場で切り捨てられても仕方がない。
「……お、お姉様……だって私……」
「メアリー、貴女は平民よ。いい加減理解しなさい!」
「フィリップ様、マリベル様、申し訳ありません。もう二度とお二人とは接触させません。彼女は私が守ります」
メアリーの恋人が、頭を下げる。
「なんでっ! もうお姉さまに会えないって……!」
「いいか、マリベル様の仰る通りメアリーはもう家名のない平民だ。マリベル様のご厚意で勘違いしていたんだろうが、本来なら私達はマリベル様にも、フィリップ様とも直接言葉を交わせる身分ではない。だが、マリベル様はメアリーを心配しておられた。だから私はフィリップ様に武術を習えたんだ。私が一緒に居れば安心だと思ってもらえるようにね。メアリー、君の家族はもうマリベル様だけだと言っていたね。だが、マリベル様とは身分が違う。領主のお孫様が定期的に訪ねてくれば、メアリーも危険だ」
「……確かに、わたくしが大事にしていると分かれば、メアリーを狙う者が現れるわ」
気が付かなかったわたくしがいけないんだわ。つい、メアリーが可愛くなってしまって身分差を考えていなかった。
「そんな……私の家族はお姉さましかいないのに……」
「私がメアリーの家族になる」
「彼なら、一般人の驚異からはメアリー様を守って下さるでしょう」
「最初から……そのつもりだったのですか?」
メアリーが、怯えながらフィリップ様を見る。
「いいえ。可能ならマリベル様がメアリー様と交流を持ち続けてほしいと願っていました。だけど、その為にはメアリー様が屋敷に住み込みで働くくらいしか方法がない。だけど、それは流石に不可能だ。ガンツ様が許すわけない」
「私の親は……リリア様を殺そうとした……」
「メアリー様はマリベル様のおっしゃる通り、大きな罪はない。逆ならまだしも、子が親の罪を背負う必要はない。だけど、リリア様はメアリー様の顔を見る度に辛い記憶を思い出す。ガンツ様や、リチャード様……リリア様を愛する方々はメアリー様を許せない」
「そっか、そりゃそうですよね。……お姉さまだって……私のことなんて……」
「違う!」
「お姉さま?」
「そりゃ、最初はメアリーの事を好きになれなかった! けど、今は違う! 心配なの! 貴女がちゃんと、生きていけるか心配なの! メアリーのこと、好きよ! 家族として大事に思ってる!」
「けど、今までみたいに会うのは無理?」
「……そうね。今までメアリーを危険にさらしていたんだと今気が付いたわ。気が付かなくてごめんなさい。だからフィリップ様はメアリーとあまり会わない方が良いと仰ったのね」
忙しいのもあったが、フィリップ様が様子を見に行くと言ってくれたのでメアリーの対応をお任せしてしまっていた。お祖父様や新しいお父様が良い顔しないからって、あまり深く考えていなかった。フィリップ様はメアリーに会いたいんじゃないかって恥ずかしい勘違いまでして……。
「そうです。俺はあまり顔が知られていないので、少し変装をすればメアリー様に言い寄る男と偽装できますが、マリベル様は領民に顔が知られすぎているので目立ちます。ご安心下さい。メアリー様には守ってくれるナイトがおります。彼は強いです。数年平民として馴染めば、メアリー様に注目する者はいなくなる」
「……もしかして、彼は貴方が……」
「それは貴女のために必死で強くなった男性に対して失礼ですよ。成人した男性が身体を鍛えるには、どれほどの努力が必要だとお思いですか?」
「ごめ……ごめんなさい」
「良いんだ。フィリップ様はいきなり子爵位を賜る英雄。そんな人に平民の僕が師事出来るなんてありえない。疑って当然だ。浮世離れしたメアリーにも警戒心があったと分かって嬉しいよ」
「ごめんなさい……」
「僕は一生懸命働いているメアリーに惚れたんだ。疑うかい?」
「疑わない。もう疑わない。信じるわ。騙されても良い」
「騙したりしない。メアリーには絶対嘘を吐かない。神様に誓うよ。メアリー、私と結婚してくれ。マリベル様。貴女の大事な妹君は僕が必ず守ります。一生をかけて、幸せにします」
「それじゃあ、大事な妹を任せられないわ」
「お姉さま! 私、絶対世界一幸せになります! 彼を幸せに出来るのは私だけだもの! お姉さまに心配かけないように、ちゃんと生きます。真面目に、ちゃんと平民として生きる。だからお姉さま、ここに絶対お姉さまの事大事に思っている妹が居るって、覚えておいて」
「そうか。そうだったね。僕はメアリーと一緒に頑張ります。メアリーを守りますし、メアリーに助けてもらいます。二人で協力して、生きていきます」
「お姉さま。次にお会いした時はお姉さまとは呼びません。マリベル様、フィリップ様、今までの無礼な態度をお詫びします」
「フィリップ様、妹の結婚祝いとして……メアリーの無礼を許して頂けないでしょうか?」
「結婚祝いですか。それじゃあ許さないわけにいきませんね。可愛い弟子の結婚祝いです」
「師匠……ありがとうございます」
「メアリー、お幸せにね。もう姉とは名乗れないけど、貴女の、いいえ、あなた達の幸せを祈ってるわ」
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