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28【フィリップ視点】
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俺は何か失礼な事を言ってしまっただろうか……。一緒にファーストダンスを踊った時はとても楽しそうだったマリベル様は、なんだか元気がない。
もしかして、まだ踊りたかったのだろうか? 何度も同じ人とダンスは踊れないし、他の男と踊ると護衛しにくいからとこちらに連れて来てしまったが、嫌だったのではないか?
嫌なら嫌と仰る方ではあるが、今は周りの目もある。俺に気を遣って下さったのでは? お優しいマリベル様ならあり得る。本当は、踊りたい男が居たんじゃないのか?
いや、しかしそれならそいつがエスコートするだろうし、マリベル様があんな男と婚約させられる事もなかっただろう。
やはり王子がお好きなのだろうか?
待て、落ち着け。それはない。マリベル様は王子を苦手だと思っておられる。いくら人の気持ちに疎い俺でも、マリベル様の事はずっと見ていたんだ。なんとなくだが、分かる。
分かるからこそ困っている。
今のマリベル様は、どこか不機嫌なご様子だ。
「エリザベスと踊らなくて、良かったのですか?」
いつも真っ直ぐ俺の目を見て話して下さるマリベル様が、目を逸らしながら俯いておられる。
これか!
これがマリベル様が不機嫌になられた理由か!
マリベル様と、エリザベス様は明らかに親しいご様子だった。友人を蔑ろにしたオレにお怒りなんだな?!
そうだ。俺は友人なんて居ないから分からなかったが、友人を蔑ろにされたら怒るよな。先ほども、やたらとエリザベス様から話しかけられたが全く気の利いた事を言えなかった。エリザベス様はずいぶん積極的なお方だった、
まさか、俺をダンスを誘うとは……。
お受けした方が良いのかと思ったが、マリベル様から離れてはならんと思いお断りした。
そしたら、見計らったように王子が声をかけてきた。わざわざ俺に伺いを立てたのも試す為だったんだろう。断る度胸があるか、マリベル様をどう思っているか探ったんだ。しかも、俺の名が変わってない事をわざわざ口にするとは抜け目がない。さすが王族だ。彼の言う通り、俺はガンツ様の養子になったが名が変わった訳ではない。あくまでも、ガンツ様に庇護されただけ。
……あの王子は、マリベル様を狙っておられる。第二王子だから、王家に残る事はないだろう。国内最強のガンツ様の家に王族が入れば、王家の力は一気に増す。
マリベル様は、いつも早く戦が無くなって欲しい。平和が良いと仰っていた。王子とマリベル様が結婚すれば、彼女の望んだ未来に近づく。
「マリベル様こそ、ヴィクター殿下と踊らなくてよろしいのですか?」
「……ええ。わたくしがわざわざ踊らなくても、ヴィクター殿下はたくさんの方と踊っておられるもの」
やはり、マリベル様はヴィクター殿下と踊りたかったのか?!
ファーストダンスは目立つから嫌だと仰っていた。ファーストダンスでなければ、王子と踊るつもりだったのでは?!
……ダンスの時間は1時間程度。先ほどファーストダンスを踊り、残り時間は30分ある。ラストダンスを踊ると、目立つよな。なら、もう少ししたらホールに戻る方が良いのでは?
ガンツ様とミア様は1時間ずっとペアで踊り続けておられる。ガンツ様の近くなら、安全だろう。
もしかして、まだ踊りたかったのだろうか? 何度も同じ人とダンスは踊れないし、他の男と踊ると護衛しにくいからとこちらに連れて来てしまったが、嫌だったのではないか?
嫌なら嫌と仰る方ではあるが、今は周りの目もある。俺に気を遣って下さったのでは? お優しいマリベル様ならあり得る。本当は、踊りたい男が居たんじゃないのか?
いや、しかしそれならそいつがエスコートするだろうし、マリベル様があんな男と婚約させられる事もなかっただろう。
やはり王子がお好きなのだろうか?
待て、落ち着け。それはない。マリベル様は王子を苦手だと思っておられる。いくら人の気持ちに疎い俺でも、マリベル様の事はずっと見ていたんだ。なんとなくだが、分かる。
分かるからこそ困っている。
今のマリベル様は、どこか不機嫌なご様子だ。
「エリザベスと踊らなくて、良かったのですか?」
いつも真っ直ぐ俺の目を見て話して下さるマリベル様が、目を逸らしながら俯いておられる。
これか!
これがマリベル様が不機嫌になられた理由か!
マリベル様と、エリザベス様は明らかに親しいご様子だった。友人を蔑ろにしたオレにお怒りなんだな?!
そうだ。俺は友人なんて居ないから分からなかったが、友人を蔑ろにされたら怒るよな。先ほども、やたらとエリザベス様から話しかけられたが全く気の利いた事を言えなかった。エリザベス様はずいぶん積極的なお方だった、
まさか、俺をダンスを誘うとは……。
お受けした方が良いのかと思ったが、マリベル様から離れてはならんと思いお断りした。
そしたら、見計らったように王子が声をかけてきた。わざわざ俺に伺いを立てたのも試す為だったんだろう。断る度胸があるか、マリベル様をどう思っているか探ったんだ。しかも、俺の名が変わってない事をわざわざ口にするとは抜け目がない。さすが王族だ。彼の言う通り、俺はガンツ様の養子になったが名が変わった訳ではない。あくまでも、ガンツ様に庇護されただけ。
……あの王子は、マリベル様を狙っておられる。第二王子だから、王家に残る事はないだろう。国内最強のガンツ様の家に王族が入れば、王家の力は一気に増す。
マリベル様は、いつも早く戦が無くなって欲しい。平和が良いと仰っていた。王子とマリベル様が結婚すれば、彼女の望んだ未来に近づく。
「マリベル様こそ、ヴィクター殿下と踊らなくてよろしいのですか?」
「……ええ。わたくしがわざわざ踊らなくても、ヴィクター殿下はたくさんの方と踊っておられるもの」
やはり、マリベル様はヴィクター殿下と踊りたかったのか?!
ファーストダンスは目立つから嫌だと仰っていた。ファーストダンスでなければ、王子と踊るつもりだったのでは?!
……ダンスの時間は1時間程度。先ほどファーストダンスを踊り、残り時間は30分ある。ラストダンスを踊ると、目立つよな。なら、もう少ししたらホールに戻る方が良いのでは?
ガンツ様とミア様は1時間ずっとペアで踊り続けておられる。ガンツ様の近くなら、安全だろう。
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