転生チートな妹に婚約者を奪われたけど、モラハラ男と縁を切れてラッキーです!

編端みどり

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24【フィリップ視点】

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何故、俺は天使をエスコートしているんだ。

「リリアはまだ体調が良くない。それに、すぐに再婚しては周りがうるさいからな。一年ほど屋敷から出さず療養中という事にする。だから、王の誕生日のパーティーはマリベルを連れて行く。フィリップ、マリベルをエスコートしてくれ。ワシは祖父だから、ずっと共に過ごす訳にいかんのじゃ。身内以外のエスコート役なら、婚約者候補となり馬鹿どもを牽制出来る。常に一緒に居ても問題ない。マリベルと結婚しろとは言わん。だが、今回だけは頼む。ワシが信用出来て、マリベルを託せるのはフィリップしかおらんのだ。頼む、マリベルを守ってやってくれ」

ガンツ様にそう言われてしまえば、お断りする選択肢など存在しない。

結果、俺は天使をエスコートするという栄誉を授かった。ガンツ様が戻られるまで、ずっとマリベル様を護衛していたが、彼女は間違いなく天使だ。領民や使用人を気遣い、毎日遅くまで働いておられた。成人したばかりの妹は着飾って婚約者を探す事しか考えていないのに、マリベル様は質素な服装でテキパキと働いておられる。

いつもの姿もお美しいが、パーティーの為に着飾ったマリベル様は、天使のように美しい。ガンツ様が心配するのも分かる。きちんと見ていないと、すぐに攫われてしまいそうだ。

「フィリップ様、お祖父様が無理を言ったようで申し訳ありません。エスコート、よろしくお願いします」

「ガンツ様が心配するのは当然です! 必ず!! 命に代えてもお守りします!」

「いくら戦争ばかりでも王家主催のパーティーだけは休戦となりますので、大丈夫ですわ」

王家主催のパーティーで揉め事を起こしたら、爵位剥奪。貴族だからこそ争っているのだ。貴族の地位を剥奪されるなら、争う意味はない。

「はっ! しかし、本日は俺から離れないで下さい! ガンツ様のご指示ですのでっ!」

あああ……! なんで俺はそんな言い方しか出来ないんだっ!

ガンツ様が戻られてすぐに、マリベル様は王家に嫁ぐべきだと訴えた。しかし、マリベル様はあまり乗り気ではないらしい。だから、ガンツ様は何もしないと仰っていた。

今のところ婚約の申し出はないが、今日のパーティーでマリベル様の魅力を知った男どもから申し込みが殺到するだろう。もしかしたら、下らない噂を聞いてマリベル様を侮辱する者もいるかもしれん。

揉め事は厳禁だから、滅多な事は起きないだろうが……マリベル様が傷つかないように守らなくては。

「フィリップ様は、他にエスコートしたい方がいらっしゃったのではありませんか? パーティー会場に入ってしまえば安全でしょうし、会場から出る時は必ずフィリップ様にお声がけしますから、わたくしの事は気にせず社交をして下さいまし」

「いえ! 俺は仲の良い貴族などおりませんし、友人も、懇意にしている令嬢もおりません! だから、マリベル様から離れる必要はありません」

何言ってんだ俺!
確かに友人なんて居ないし、仲の良い令嬢など居ない。言ってて悲しくなるが真実だ。けど、もうちょっと言い方があるだろ!

「なら、ずっとご一緒出来ますね。わたくしの友人をご紹介しますわ。婚約者を探している令嬢も多いので、素敵な出会いがあればよろしいですわね」

優しそうに、少しだけ寂しそうに微笑むマリベル様。俺なんか、護衛として居ないものとして扱って下さって構わないのに。

他の令嬢を紹介なんてしないでくれ。

勝手な気持ちを押し殺し、マリベル様の手を取った。彼女の手は華奢で、触れたら壊れてしまいそうだ。

この手を離したくない。浅ましい欲を抑えつけ、周りを注視する。パーティーは3時間程度。必ず、マリベル様を守ってみせる。
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