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今は戦争が多くてお金も不足気味だから、予算の管理もシビアだ。家のお金は、私的な事には一切使えない。だから、わたくしもお母様も個人の資産を別に持っている。お父様は私財があるくせに伯爵家の予算を使ってたけどね。お母様に咎められて、お母様を暗殺しようとしたのが今回の事件の発端だもの。

お母様も仰ってたけど、お父様が無駄遣いした分はリチャードがうまく補填してたのよね。帳尻はなんとかあってたからギリギリセーフだけど、本当は良くない事だ。リチャードは、なんとかお母様を守りたかったんだと思う。

わたくしは、お父様みたいな事はしない。だって面倒だもの。悪い事をしようとすると、誤魔化す為に余計な労力が必要になる。

それなら、最初から問題ない方法を取る方が良い。

「マリベル様は、清廉潔白なお方ですね」

「そんな事ありませんわ。守れる法律やルールは極力守りますけど、人命を助けられるなら法律を無視するくらいの事はします。わたくしは、そんなに良い子ではありませんわ」

「それは、良い子と言うのですよ。さすが、ガンツ様のお孫様だ」

フィリップ様は、眩しそうにわたくしを見ておられる。なんだか誤解があるみたいね。わたくしはどちらかと言うと、悪い子よ。

お父様が実家に戻されてどうなるのか、なんとなく想像はつく。きっと死ぬか、死ぬ方がマシだと思う目に遭うだろう。愛人様は、間違いなく殺されると思う。彼女は伯爵令嬢らしいからご実家が上手く助ければ生きてるかもしれないけど……望みは薄いだろう。

お祖父様達は、一切手を出さない。ただお父様と愛人様をご実家に置いて、同盟を解消すると言うだけだ。だからこそ、お父様達の命は……。

メアリーは上手くマシュー様に愛されれば良いけど、可能性は低いと思う。彼は妻を大事にする方ではない。いずれ、わたくしの同じような目に遭うと思う。

分かっているのに、わたくしは何もしなかった。お祖父様やお祖母様に頼めば、お父様は無理でもメアリーは助けられた。マシュー様と結婚させずに、平民として暮らすように誘導する事は出来た。

だけど、わたくしはメアリーとマシュー様の婚姻を望んだ。自分が助かりたくて。マシュー様と万が一にでも結婚したくなくて、メアリーがウダウダ言うのが面倒で、マシュー様というモラハラ男をメアリーに押し付けたんだ。

メアリーが幸せになる望みは、薄いと分かっていたのに。わたくしはお祖父様の孫だから、命は奪われないと思う。だけど、メアリーはどうかしら。

メアリーが死ぬかもしれないと分かってたのに、わたくしは……。
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