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今日、リチャードがお母様を連れて帰って来る予定だ。お祖母様とお祖父様は、お母様と会ってお話ししたみたいだけど、わたくしはまだお母様に会えていない。お祖父様が信頼できる護衛を付けたと言っていたから、安全だろう。リチャードだけでも充分だと思ったけど、何故かお祖父様がそれはまだ早いと仰せになられた。お母様が帰って来るのが楽しみで、ミリィと一緒に部屋を飾った。本当は得意料理のクッキーを焼きたいが、物資の無駄遣いは出来ない。消化の良い通常の食事を用意して、お母様を出迎える。
「マリベル! 心配かけてごめんね!」
リチャードに支えられたお母様が、フラフラになりながら帰って来た。嬉しくて、涙でお母様の顔が見えませんわ。
「お母様……よくぞご無事で……」
「ごめんなさい……。わたくしがもっと早くあの男と縁を切っていれば……こんな事にはならなかったのに……。心配ばかりかけて、あんな嫌な男と婚約させられて……」
「良いのです。お祖父様達が来て下さったから、結婚しなくて済みましたもの。わたくしはお父様とお母様が離婚する事を望んでおりました。あの男を父親だと思った事などありませんもの」
「でも……貴女に婚約がなくなった令嬢という傷を付けてしまった」
ああそうか。この世界は婚約が無しになるなんて余程欠陥があるんだと思われてしまうんだったわね。そうなるとわたくしの結婚は厳しくなるかしら。普通の家なら難のある方と結婚させられるか、年上の方の後妻にさせられるか……難のある方は困るけど、年上の殿方は性格に問題なければアリね。少なくとも、マシュー様より良いわ。
「お母様、気にしないで下さいまし。わたくしは性格に問題があったりしなければ、歳上の方の後妻でも気にしませんわ。少なくとも、マシュー様と結婚するより良いです。マシュー様は少しでも思い通りにならないとすぐに殴るし怒鳴るし不機嫌になるし……とてもじゃありませんけど結婚生活を送れるとは思えませんでした。メアリーには優しかったですけど、あれもいつまで保つか分かりませんわ。メアリーが耐えられるのか心配です。お祖母様がお怒りでしたから、離婚は不可能ですし……」
「散々うちで好き勝手していたんだもの。当然の報いよ」
「確かに、そうなのですが……」
メアリーは無知なだけだった。転生してハイになり、両親に甘やかされ調子に乗っていただけだと思う。確かに結構意地悪だったけど、お父様みたいに暴力を振るったりしなかったし、愛人様みたいにわたくしを殺そうとはしなかった。
「優しいのね。でも、甘いわ。貴方達が生きていた時代とは違うの。あの子も、あの子の両親もやり過ぎた。お祖母様のお怒りを鎮める事は出来ないわ。マリベルは何度もメアリーに忠告した。その度にあのクズ男に殴られたり、水をかけられたり、笑われたり……わたくしは、貴女を守れなかった。下らない常識に囚われて、あの男に逆らえなかった。リチャードが教えてくれたの。貴女、何度もあの女に殺されそうになったんでしょう?」
「マリベル! 心配かけてごめんね!」
リチャードに支えられたお母様が、フラフラになりながら帰って来た。嬉しくて、涙でお母様の顔が見えませんわ。
「お母様……よくぞご無事で……」
「ごめんなさい……。わたくしがもっと早くあの男と縁を切っていれば……こんな事にはならなかったのに……。心配ばかりかけて、あんな嫌な男と婚約させられて……」
「良いのです。お祖父様達が来て下さったから、結婚しなくて済みましたもの。わたくしはお父様とお母様が離婚する事を望んでおりました。あの男を父親だと思った事などありませんもの」
「でも……貴女に婚約がなくなった令嬢という傷を付けてしまった」
ああそうか。この世界は婚約が無しになるなんて余程欠陥があるんだと思われてしまうんだったわね。そうなるとわたくしの結婚は厳しくなるかしら。普通の家なら難のある方と結婚させられるか、年上の方の後妻にさせられるか……難のある方は困るけど、年上の殿方は性格に問題なければアリね。少なくとも、マシュー様より良いわ。
「お母様、気にしないで下さいまし。わたくしは性格に問題があったりしなければ、歳上の方の後妻でも気にしませんわ。少なくとも、マシュー様と結婚するより良いです。マシュー様は少しでも思い通りにならないとすぐに殴るし怒鳴るし不機嫌になるし……とてもじゃありませんけど結婚生活を送れるとは思えませんでした。メアリーには優しかったですけど、あれもいつまで保つか分かりませんわ。メアリーが耐えられるのか心配です。お祖母様がお怒りでしたから、離婚は不可能ですし……」
「散々うちで好き勝手していたんだもの。当然の報いよ」
「確かに、そうなのですが……」
メアリーは無知なだけだった。転生してハイになり、両親に甘やかされ調子に乗っていただけだと思う。確かに結構意地悪だったけど、お父様みたいに暴力を振るったりしなかったし、愛人様みたいにわたくしを殺そうとはしなかった。
「優しいのね。でも、甘いわ。貴方達が生きていた時代とは違うの。あの子も、あの子の両親もやり過ぎた。お祖母様のお怒りを鎮める事は出来ないわ。マリベルは何度もメアリーに忠告した。その度にあのクズ男に殴られたり、水をかけられたり、笑われたり……わたくしは、貴女を守れなかった。下らない常識に囚われて、あの男に逆らえなかった。リチャードが教えてくれたの。貴女、何度もあの女に殺されそうになったんでしょう?」
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