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「さすがリリアね。そうだわ、マリベルはこの男をどうしたい?」

「お母様やお祖父様、お祖母様の望むままに。元より、あの男を父とは思っておりませんわ」

お祖母様は、優しい笑みを浮かべて……気絶したお父様を蹴り上げました。見事な蹴りです。お父様が一瞬起きて、すぐにうめき声を上げてまた気を失いました。お祖父様が惚れ惚れとお祖母様を見つめておられます。

その時、リチャードがメアリーとマシュー様を連れて来ました。ふてぶてしい態度でしたが、お祖父様を見るなりマシュー様は震えておられます。

わたくし達は、暗号でお母様の生存を知られないようにすると決め合い、マシュー様達に向き合いました。

「……マリベル、これはどういう事だ?」

「見ての通り、戦が終わってお祖父様達がご帰還なさったのですわ。お祖父様、こちらが婚約者のマシュー・デュ・カーライル様。隣で腕を組んでいるのが妹のメアリーですわ」

「当主のガンツ・オブ・レズリーだ。ずいぶんはしたないな」

お祖父様の圧に、慌てて2人が距離を取りました。リチャードが淡々と、お祖父様に報告します。

「おふたりは、庭で口付けを交わしておられました」

「そうか。マリベル、この婚約者は必要か? 愛してるか?」

「いいえ。全く。お父様に勝手に婚約者にされましたから、愛してなどおりません」

「ワシが認めておらんのだから、婚約は成立しておらん。此奴の家もワシの庇護を欲しがっておったが、それなのにワシの大事な孫を殴るとは余程死にたいらしいな」

「違う……違うのです! 私は、マリベル様を愛しています! 殴った事などありません! 誤解です! 彼女は手紙に私を愛していると書いてあったでしょう」

「あの手紙が来たから、ワシはすぐに帰って来たのだ。使用人をクビにしたのは愚策だったな。手紙が届く前にみんながワシの元へ集ってくれた。いやあ、久しぶりに血が騒いだわい」

「ふふっ、我が家の使用人はみんな元兵士なの。男性も、女性もね。おかげで、マリベルからの手紙が届いた時には敵は降伏してくれていたし、後処理も任せられた。だからすぐ帰れたの。あの手紙、嘘しか書かれてなかったのよ。マリベルが助けを求めてるのは分かったわ」

「……なんで……暗号なんて書かれてなかった……書いてるところも……見張ったのに……」

「貴様に教える義理はない。とにかく、マリベルが貴様の事を心から嫌っているのは知っておる。ああ、そうじゃそこな小娘。何故ワシの屋敷に住んでおるんじゃ。しかも……ワシの愛しのミアの部屋に……」

「ししし……知りません! お父様がここに住めって言ったんです!」

「そうか。やはりあやつは殺すか」

「あなた」

「むぅ……しかしミアの部屋を荒らすなど……」

「この子は、親に振り回されただけの被害者でしょう?」
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