上 下
43 / 48

43.男は考える

しおりを挟む
少し時は遡り、ケネスがジェシカの腕を振り払った直後、ジーナはモヤモヤする気持ちを抱えていた。

『ジェシカ様、お美しい方だったわ。親しそうになさっていたけど、ケネス殿下はお嫌そうだった。彼女は公爵令嬢よね? 王太子殿下から、要注意人物として頂いたリストに名前があったわ。彼女は、ケネス殿下を馬鹿にしていた筆頭の筈。どうして、殿下の腕を取るの?』

ジーナが気持ちを落ち着かせようと、人気のない廊下の隅で深呼吸をしていると、見知らぬ男達に声をかけられた。

「お前がケネス殿下の侍女、ジーナか?」

「ええ、そうですよ。あなた方はどなたですか?」

「悪いけど一緒に来てくれるか?」

「無理ですわ。仕事中ですもの」

「ちっ……だったら無理矢理来て貰うだけだ!」

数名の男達が、ジーナを取り囲む。

「仕事中だと申し上げましたわよね?」

が、すぐにほとんどの男達が倒され、立っているのは1人だけになった。

「は……?!」

「残りはあなただけですわ。見たところ、リーダーのようですわね。さ、わたくしになんの用ですか?」

「マジかよ……」

「用がないのなら……」

「ま、待て! 待て待て! 俺たちは、ケネス殿下の恋人に雇われたんだ!!!」

最悪のパターンの時に使う切り札を、初手で切る羽目になった哀れな男は、必死で叫んだ。

「お仕えして1ヵ月、そのような方とはお会いしておりません。確かに、殿下は素敵な方ですから恋人の1人や2人いてもおかしくは……いや、2人はありえませんね。そんな不誠実な事をなさる方ではありません。それに、恋人がいらっしゃれば大事に慈しんでいらっしゃいますわ。1ヵ月ご一緒していて、手紙を書いたりお会いしたりするお姿を拝見しておりません。そんな不誠実な事をなさる方ではありませんわ! 確かに、最初はあまりに素敵な方ですし、恋人がいらっしゃるのだと思っておりましたが……お聞きしたら、恋人は居ないと仰いました。ケネス殿下は嘘をつくような方ではありません! ですから、あなたが嘘をついているのですわ! 何が狙いですか?!」

「あ……あの……」

『怖えぇ! あの出来損ない王子に心酔してるってマジなんだな! このお嬢ちゃん、強すぎんだろ。さすが王子の侍女って事か。くっそ、あのお貴族様め! 侍女は平民だから脅しゃあ簡単だって言ってたけど、やっぱり裏があるんじゃねぇか! おとなしいって聞いてたけど、念のため情報収集しておいて良かったぜ。あの出来損ないに恋人が居るって聞いて、動揺してやがる。けどこんな仕事、割にあわねぇぞ! もっと金を出させりゃ良かった。ま、この嬢ちゃんにやられちまった奴らの取り分を貰えば良いか……。さーてどうすっかな……。テキトーに連れ去って、どっかに売れば良いかと思ってたけど、これじゃあ城から出てくれねえぞ」

「早くなさい! そろそろパーティーが終わります」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。

yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~) パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。 この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。 しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。 もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。 「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。 「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」 そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。 竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。 後半、シリアス風味のハピエン。 3章からルート分岐します。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。 表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。 https://waifulabs.com/

王太子エンドを迎えたはずのヒロインが今更私の婚約者を攻略しようとしているけどさせません

黒木メイ
恋愛
日本人だった頃の記憶があるクロエ。 でも、この世界が乙女ゲームに似た世界だとは知らなかった。 知ったのはヒロインらしき人物が落とした『攻略ノート』のおかげ。 学園も卒業して、ヒロインは王太子エンドを無事に迎えたはずなんだけど……何故か今になってヒロインが私の婚約者に近づいてきた。 いったい、何を考えているの?! 仕方ない。現実を見せてあげましょう。 と、いうわけでクロエは婚約者であるダニエルに告げた。 「しばらくの間、実家に帰らせていただきます」 突然告げられたクロエ至上主義なダニエルは顔面蒼白。 普段使わない頭を使ってクロエに戻ってきてもらう為に奮闘する。 ※わりと見切り発車です。すみません。 ※小説家になろう様にも掲載。(7/21異世界転生恋愛日間1位)

あなたを愛するつもりはない、と言われたので自由にしたら旦那様が嬉しそうです

あなはにす
恋愛
「あなたを愛するつもりはない」 伯爵令嬢のセリアは、結婚適齢期。家族から、縁談を次から次へと用意されるが、家族のメガネに合わず家族が破談にするような日々を送っている。そんな中で、ずっと続けているピアノ教室で、かつて慕ってくれていたノウェに出会う。ノウェはセリアの変化を感じ取ると、何か考えたようなそぶりをして去っていき、次の日には親から公爵位のノウェから縁談が入ったと言われる。縁談はとんとん拍子で決まるがノウェには「あなたを愛するつもりはない」と言われる。自分が認められる手段であった結婚がうまくいかない中でセリアは自由に過ごすようになっていく。ノウェはそれを喜んでいるようで……?

公爵令嬢は愛に生きたい

拓海のり
恋愛
公爵令嬢シビラは王太子エルンストの婚約者であった。しかし学園に男爵家の養女アメリアが編入して来てエルンストの興味はアメリアに移る。 一万字位の短編です。他サイトにも投稿しています。

「君を愛す気はない」と宣言した伯爵が妻への片思いを拗らせるまで ~妻は黄金のお菓子が大好きな商人で、夫は清貧貴族です

朱音ゆうひ
恋愛
アルキメデス商会の会長の娘レジィナは、恩ある青年貴族ウィスベルが婚約破棄される現場に居合わせた。 ウィスベルは、親が借金をつくり自殺して、後を継いだばかり。薄幸の貴公子だ。 「私がお助けしましょう!」 レジィナは颯爽と助けに入り、結果、彼と契約結婚することになった。 別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0596ip/)

【完結】伯爵の愛は狂い咲く

白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。 実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。 だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。 仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ! そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。 両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。 「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、 その渦に巻き込んでいくのだった… アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。 異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点) 《完結しました》

公爵家の1人娘と思っていたら!取り替えられていたようです。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 クレオ・ボンジュル・ベルモット公爵令嬢 15歳と、思っていたら違うようです。 ユージン・ボンジュル・ベルモット公爵 クレオの祖父。 ジャンポール・ボンジュル・ベルモット公爵令息 クレオの父。 ドヌーブ・ボンジュル・ベルモット クレオの母 ユーリアス・ウルフハウンド・トレイン クレオの婚約者 カミーラ・ボルドー・ビードルフ 侯爵令嬢ユージンの愛人 ピーチ・ボルドー・ビードルフ カミーラの娘15歳 レンブラン・ファン・ベルモット王太子 17歳クレオの従兄 ベルモット国は今の王様が即位して作り上げた若い国である、王族とも親戚で大公爵の娘 クレオ・ボンジュール・ベルモット蝶よ花よと育てられ、少々傲慢な性格で 使用人達に嫌われていた。 ある日クレオはベルモット公爵の愛人カミーラの娘だと解り混乱していた。

【完結】偽物と呼ばれた公爵令嬢は正真正銘の本物でした~私は不要とのことなのでこの国から出ていきます~

Na20
恋愛
私は孤児院からノスタルク公爵家に引き取られ養子となったが家族と認められることはなかった。 婚約者である王太子殿下からも蔑ろにされておりただただ良いように使われるだけの毎日。 そんな日々でも唯一の希望があった。 「必ず迎えに行く!」 大好きだった友達との約束だけが私の心の支えだった。だけどそれも八年も前の約束。 私はこれからも変わらない日々を送っていくのだろうと諦め始めていた。 そんな時にやってきた留学生が大好きだった友達に似ていて… ※設定はゆるいです ※小説家になろう様にも掲載しています

処理中です...