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43.男は考える
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少し時は遡り、ケネスがジェシカの腕を振り払った直後、ジーナはモヤモヤする気持ちを抱えていた。
『ジェシカ様、お美しい方だったわ。親しそうになさっていたけど、ケネス殿下はお嫌そうだった。彼女は公爵令嬢よね? 王太子殿下から、要注意人物として頂いたリストに名前があったわ。彼女は、ケネス殿下を馬鹿にしていた筆頭の筈。どうして、殿下の腕を取るの?』
ジーナが気持ちを落ち着かせようと、人気のない廊下の隅で深呼吸をしていると、見知らぬ男達に声をかけられた。
「お前がケネス殿下の侍女、ジーナか?」
「ええ、そうですよ。あなた方はどなたですか?」
「悪いけど一緒に来てくれるか?」
「無理ですわ。仕事中ですもの」
「ちっ……だったら無理矢理来て貰うだけだ!」
数名の男達が、ジーナを取り囲む。
「仕事中だと申し上げましたわよね?」
が、すぐにほとんどの男達が倒され、立っているのは1人だけになった。
「は……?!」
「残りはあなただけですわ。見たところ、リーダーのようですわね。さ、わたくしになんの用ですか?」
「マジかよ……」
「用がないのなら……」
「ま、待て! 待て待て! 俺たちは、ケネス殿下の恋人に雇われたんだ!!!」
最悪のパターンの時に使う切り札を、初手で切る羽目になった哀れな男は、必死で叫んだ。
「お仕えして1ヵ月、そのような方とはお会いしておりません。確かに、殿下は素敵な方ですから恋人の1人や2人いてもおかしくは……いや、2人はありえませんね。そんな不誠実な事をなさる方ではありません。それに、恋人がいらっしゃれば大事に慈しんでいらっしゃいますわ。1ヵ月ご一緒していて、手紙を書いたりお会いしたりするお姿を拝見しておりません。そんな不誠実な事をなさる方ではありませんわ! 確かに、最初はあまりに素敵な方ですし、恋人がいらっしゃるのだと思っておりましたが……お聞きしたら、恋人は居ないと仰いました。ケネス殿下は嘘をつくような方ではありません! ですから、あなたが嘘をついているのですわ! 何が狙いですか?!」
「あ……あの……」
『怖えぇ! あの出来損ない王子に心酔してるってマジなんだな! このお嬢ちゃん、強すぎんだろ。さすが王子の侍女って事か。くっそ、あのお貴族様め! 侍女は平民だから脅しゃあ簡単だって言ってたけど、やっぱり裏があるんじゃねぇか! おとなしいって聞いてたけど、念のため情報収集しておいて良かったぜ。あの出来損ないに恋人が居るって聞いて、動揺してやがる。けどこんな仕事、割にあわねぇぞ! もっと金を出させりゃ良かった。ま、この嬢ちゃんにやられちまった奴らの取り分を貰えば良いか……。さーてどうすっかな……。テキトーに連れ去って、どっかに売れば良いかと思ってたけど、これじゃあ城から出てくれねえぞ」
「早くなさい! そろそろパーティーが終わります」
『ジェシカ様、お美しい方だったわ。親しそうになさっていたけど、ケネス殿下はお嫌そうだった。彼女は公爵令嬢よね? 王太子殿下から、要注意人物として頂いたリストに名前があったわ。彼女は、ケネス殿下を馬鹿にしていた筆頭の筈。どうして、殿下の腕を取るの?』
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「お前がケネス殿下の侍女、ジーナか?」
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「ま、待て! 待て待て! 俺たちは、ケネス殿下の恋人に雇われたんだ!!!」
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「あ……あの……」
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「早くなさい! そろそろパーティーが終わります」
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