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31.幼い頃の過ち
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「……この場で不敬はなしね。ちょっとズルイけど、部屋に入った時に宣言した事にしといて。ライアン、それで良い?」
黙って頷くライアンの顔を拭きながら、デュークはケネスの気遣いに礼を言った。
デュークは、稀にだがライアンと話す時に敬語を使わない。ライアンもそれを許している。だが、他の王族が側に居れば別だ。本来なら、先程のデュークの発言を王子であるケネスは咎めないといけない。だけど、不敬はなしだと宣言すれば多少砕けた話し方でも許される。
『これで、デュークがライアンに敬語を使わなくても許される。さっき教わったばかりだけど、僕みたいになんでも許すのは駄目なんだ。兄上にも散々言われてたけど、罰を与えるのが怖かったからどうしても上手く出来なかった。けど、罰っていっても最初なら1ヶ月減給される程度。兄上がすぐクビだ処刑だって言うから誤解してた。僕が舐められるから、罰が酷くなってただけなんだ。今までみたいに人に会わないなら良いけど、これからはちゃんと覚えないと。僕の悪口が聞こえたらジーナはさっきみたいに怒る。その前にちゃんと、僕が注意すれば大丈夫。特別な時は、今みたいに不敬を許すって先に宣言すれば良いって先生が言ってた。砕けた話し方をして欲しい時や、本音が聞きたい時は前もって宣言しろって……。それでも、王族に本音を言う人はなかなか居ない、だから本音で話してくれて、本気で注意してくれる臣下は大事にしないと。デュークは大事にしなきゃいけない人だ。ライアンがここまで泣いてる姿は、見た事ない。でも、デュークの慣れた様子からしてデュークの前では泣いてたんだ』
「この場で誰がどんな発言をしても絶対に咎めない。だから、ライアンを助けてあげて」
「ありがとうございます。ケネス殿下。なぁ、ライアン、もう思いっ切り泣いちまえ。ケネス殿下はライアンが悪いなんて思ってねぇし、何を言ってもライアンを嫌ったりしない。大丈夫だ。良い機会だから、ちゃんと本音を言え」
「……デューク、お願い。僕の代わりに言って……。全部言っていいから……」
「本当に良いのか?」
頷くライアンの頭を撫で、デュークはケネスに説明を始めた。
「ライアンは、今でこそケネス殿下を慕っていますけど、幼い頃はそうじゃありませんでした」
ビクリと怯えるライアンに、ケネスは笑いながら言った。
「知ってる。いつも僕を馬鹿にしてるライアンを、デュークが叱ってたもんね」
「……え、なんで知ってるんですか?!」
「あの人ね、わざと僕の悪口を言う人の近くに僕を連れて行くの。全部聞いてたよ。父上や母上だって、僕の事を心配してるって言いながらもどう扱って良いのか分からない感じだった。兄上の近くに行った事はないから分からないけど、似たようなものだったのかもね」
「兄上は違いますよ。僕が間違いに気が付いたのも、兄上のおかげですから」
「あの頃の王太子殿下とライアンの仲は最悪でしたよ。ライアンは今よりずっと我儘で、自分勝手でした。王太子殿下がしょっちゅうライアンを叱ってましたけど……」
「僕は、兄上の話も、デュークの話も聞かなかった。兄様より僕の方が優れてるってみんなが言うからそれを鵜呑みにして、調子に乗ってました」
「あの乳母の罪を明らかにした後、王太子殿下はライアンを無理矢理牢に連れて行きました。散々ケネス殿下の事を馬鹿にする姿を見て、ライアンは疑問を持ったんです。それから、国王陛下が食事会を行うようになり、ケネス殿下と話すようになりました。ライアンは、自分の間違いに気が付いたんです」
「兄様は、みんなが言うような人じゃなかった。優しくて、賢かった。僕は王族としていっぱい仕事をしてると思ってたけど、兄様の半分もこなせてなかった。自分が間違っていたと分かりました。だから、必死でみんなに訴えたんです。僕が間違ってた。兄様は凄い人なんだって」
黙って頷くライアンの顔を拭きながら、デュークはケネスの気遣いに礼を言った。
デュークは、稀にだがライアンと話す時に敬語を使わない。ライアンもそれを許している。だが、他の王族が側に居れば別だ。本来なら、先程のデュークの発言を王子であるケネスは咎めないといけない。だけど、不敬はなしだと宣言すれば多少砕けた話し方でも許される。
『これで、デュークがライアンに敬語を使わなくても許される。さっき教わったばかりだけど、僕みたいになんでも許すのは駄目なんだ。兄上にも散々言われてたけど、罰を与えるのが怖かったからどうしても上手く出来なかった。けど、罰っていっても最初なら1ヶ月減給される程度。兄上がすぐクビだ処刑だって言うから誤解してた。僕が舐められるから、罰が酷くなってただけなんだ。今までみたいに人に会わないなら良いけど、これからはちゃんと覚えないと。僕の悪口が聞こえたらジーナはさっきみたいに怒る。その前にちゃんと、僕が注意すれば大丈夫。特別な時は、今みたいに不敬を許すって先に宣言すれば良いって先生が言ってた。砕けた話し方をして欲しい時や、本音が聞きたい時は前もって宣言しろって……。それでも、王族に本音を言う人はなかなか居ない、だから本音で話してくれて、本気で注意してくれる臣下は大事にしないと。デュークは大事にしなきゃいけない人だ。ライアンがここまで泣いてる姿は、見た事ない。でも、デュークの慣れた様子からしてデュークの前では泣いてたんだ』
「この場で誰がどんな発言をしても絶対に咎めない。だから、ライアンを助けてあげて」
「ありがとうございます。ケネス殿下。なぁ、ライアン、もう思いっ切り泣いちまえ。ケネス殿下はライアンが悪いなんて思ってねぇし、何を言ってもライアンを嫌ったりしない。大丈夫だ。良い機会だから、ちゃんと本音を言え」
「……デューク、お願い。僕の代わりに言って……。全部言っていいから……」
「本当に良いのか?」
頷くライアンの頭を撫で、デュークはケネスに説明を始めた。
「ライアンは、今でこそケネス殿下を慕っていますけど、幼い頃はそうじゃありませんでした」
ビクリと怯えるライアンに、ケネスは笑いながら言った。
「知ってる。いつも僕を馬鹿にしてるライアンを、デュークが叱ってたもんね」
「……え、なんで知ってるんですか?!」
「あの人ね、わざと僕の悪口を言う人の近くに僕を連れて行くの。全部聞いてたよ。父上や母上だって、僕の事を心配してるって言いながらもどう扱って良いのか分からない感じだった。兄上の近くに行った事はないから分からないけど、似たようなものだったのかもね」
「兄上は違いますよ。僕が間違いに気が付いたのも、兄上のおかげですから」
「あの頃の王太子殿下とライアンの仲は最悪でしたよ。ライアンは今よりずっと我儘で、自分勝手でした。王太子殿下がしょっちゅうライアンを叱ってましたけど……」
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