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19.家族のディナー 5
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「好きそうな物の話をしたり、脈があると思ったら少し距離を近づけてみたりですかね」
「ライアンを基準にしない方がいいよ。勝手に令嬢が寄ってきて、最終的に化けの皮が剥がれて捨ててるんだもん。参考にならないよ」
「国内の貴族は駄目だとか言って、婚約すらしていない兄上に言われたくありません! まぁ、兄上の場合は僕らを守るために婚約しないんでしょうけど」
「言い訳するのもそろそろ限界なんだよねー。とはいえ、あんな信用できない人達と結婚する気になれなくてさ」
「そんなんだから、変な噂が立つんでしょ」
「あー……俺が女嫌いじゃないかってやつ?」
「そう。その噂、すっかり定番ですよ。跡継ぎを作らない国王なんて要らない、僕が国王になるチャンスだってさ」
「……へぇ、ライアン、王になりたいの?」
「嫌に決まってるでしょ。兄上が国王になって下さいよ。僕にはフィリップみたいに命懸けで守ろうとする臣下はいませんからね。なんで僕が王に向いてるなんて馬鹿な事を言い出したんだろう。これ、そんな事言った貴族の一覧です。マークしてれば、そのうち何かやらかすんじゃないですか?」
「ふーん、下位貴族ばかりだね。俺の政策で損をした奴らと繋がってるかな」
「調べる。リストを私にもくれ」
「全員分用意してありますよ。コイツらが近づいてきたら気をつけて下さい」
「分かったわ。ふぅん……わたくしはお茶をした事すらないわね……」
「ほとんど男爵家だからな。逆に怪しい。地域が偏ってるから……きっと何か関連があるだろうな」
「あの、この家って飢饉の時に支援が足りないと言ってきた貴族達ばかりじゃないですか?」
「あ……本当だ。さすがケネス、よく気が付いたね」
「確か、王家が直接炊き出ししたんでしたっけ?」
「ああ、一部の領地だけ優遇する訳にいかないし、被害状況も他の領地と同程度。支援金を出せと騒いでいたが、領民を救う為に炊き出しをして終わらせた」
「ケニオン伯爵家は、餓死者が1人も出なかったと言ってましたけど、支援金が必要な程だったんでしょうか?」
「フィリップも税の免除だけでもありがたかったのに、物資まで届いて驚いたって言ってたよ。免除された税金の分、領地に注ぎ込んだんだって。餓死者は、出てないと言われてるけど……領地の中までは分からないからね。あれだけ備蓄を出したんだから、普通は大丈夫な筈なんだけど」
「どうせ、自分達の事しか考えてないんでしょうよ。下品な香水の匂いを漂わせた女が、僕が王になれば良いって言ってました。兄上と兄様に何かするつもりって聞いたら、怯えてどっかに行きましたけど」
「……顔と名前、分かる?」
「もちろんです。シャロン・オブ・キニア、男爵令嬢ですよ」
「ふぅん、ケネスの侍女をしてるエレノアと仲が良かったね。ねぇケネス、そろそろあの侍女要らないんじゃない? ジーナ嬢に、絡んでたよ」
「確かに、大声は聞こえましたけど……、エレノアだったんですね。ジーナに絡んでいたとは?」
冷たい声で聞くケネスの目は、澱んでいた。本気で怒ると、ケネスの目は澱み、声はとても冷たくなる。家族はケネスが本気で怒っている事を察した。
「会話までは分からないんだけど、ジーナ嬢がじっとエレノアの顔を見て、しばらくするとエレノアが大騒ぎでジーナに詰め寄ったらしいよ。ジーナ嬢は、涼しい顔をしていたみたいだけど最後は怒ってたって。ケネスの悪口でも言われたんじゃない?」
「ジーナに、危害を加えたりは?」
「それはないよ! キャンキャン騒いでたエレノアをジーナ嬢があしらってる感じだったって。だから、怒りを鎮めて貰えるかな?!」
「そうですか。なら良かった。エレノアは僕の侍女から外して下さい。クビにはしなくて良いので。僕に近づいて来ないから都合が良かったんですけど、ジーナに手を出すなら要りません。新しい侍女は付けなくて良いです」
「だが、メイド1人というのは……!」
「なら、ジーナに侍女の仕事もして貰いましょう。侍女の制服も用意して下さい。とにかく、僕に付けるのはジーナだけにします。彼女はきちんと仕事をしてくれるのだから問題ないでしょう」
「分かった! 望み通りにする! だから落ち着け!」
「ありがとうございます。父上」
ようやくいつものように穏やかに笑った息子を見て、父はほっと胸を撫で下ろした。
「ライアンを基準にしない方がいいよ。勝手に令嬢が寄ってきて、最終的に化けの皮が剥がれて捨ててるんだもん。参考にならないよ」
「国内の貴族は駄目だとか言って、婚約すらしていない兄上に言われたくありません! まぁ、兄上の場合は僕らを守るために婚約しないんでしょうけど」
「言い訳するのもそろそろ限界なんだよねー。とはいえ、あんな信用できない人達と結婚する気になれなくてさ」
「そんなんだから、変な噂が立つんでしょ」
「あー……俺が女嫌いじゃないかってやつ?」
「そう。その噂、すっかり定番ですよ。跡継ぎを作らない国王なんて要らない、僕が国王になるチャンスだってさ」
「……へぇ、ライアン、王になりたいの?」
「嫌に決まってるでしょ。兄上が国王になって下さいよ。僕にはフィリップみたいに命懸けで守ろうとする臣下はいませんからね。なんで僕が王に向いてるなんて馬鹿な事を言い出したんだろう。これ、そんな事言った貴族の一覧です。マークしてれば、そのうち何かやらかすんじゃないですか?」
「ふーん、下位貴族ばかりだね。俺の政策で損をした奴らと繋がってるかな」
「調べる。リストを私にもくれ」
「全員分用意してありますよ。コイツらが近づいてきたら気をつけて下さい」
「分かったわ。ふぅん……わたくしはお茶をした事すらないわね……」
「ほとんど男爵家だからな。逆に怪しい。地域が偏ってるから……きっと何か関連があるだろうな」
「あの、この家って飢饉の時に支援が足りないと言ってきた貴族達ばかりじゃないですか?」
「あ……本当だ。さすがケネス、よく気が付いたね」
「確か、王家が直接炊き出ししたんでしたっけ?」
「ああ、一部の領地だけ優遇する訳にいかないし、被害状況も他の領地と同程度。支援金を出せと騒いでいたが、領民を救う為に炊き出しをして終わらせた」
「ケニオン伯爵家は、餓死者が1人も出なかったと言ってましたけど、支援金が必要な程だったんでしょうか?」
「フィリップも税の免除だけでもありがたかったのに、物資まで届いて驚いたって言ってたよ。免除された税金の分、領地に注ぎ込んだんだって。餓死者は、出てないと言われてるけど……領地の中までは分からないからね。あれだけ備蓄を出したんだから、普通は大丈夫な筈なんだけど」
「どうせ、自分達の事しか考えてないんでしょうよ。下品な香水の匂いを漂わせた女が、僕が王になれば良いって言ってました。兄上と兄様に何かするつもりって聞いたら、怯えてどっかに行きましたけど」
「……顔と名前、分かる?」
「もちろんです。シャロン・オブ・キニア、男爵令嬢ですよ」
「ふぅん、ケネスの侍女をしてるエレノアと仲が良かったね。ねぇケネス、そろそろあの侍女要らないんじゃない? ジーナ嬢に、絡んでたよ」
「確かに、大声は聞こえましたけど……、エレノアだったんですね。ジーナに絡んでいたとは?」
冷たい声で聞くケネスの目は、澱んでいた。本気で怒ると、ケネスの目は澱み、声はとても冷たくなる。家族はケネスが本気で怒っている事を察した。
「会話までは分からないんだけど、ジーナ嬢がじっとエレノアの顔を見て、しばらくするとエレノアが大騒ぎでジーナに詰め寄ったらしいよ。ジーナ嬢は、涼しい顔をしていたみたいだけど最後は怒ってたって。ケネスの悪口でも言われたんじゃない?」
「ジーナに、危害を加えたりは?」
「それはないよ! キャンキャン騒いでたエレノアをジーナ嬢があしらってる感じだったって。だから、怒りを鎮めて貰えるかな?!」
「そうですか。なら良かった。エレノアは僕の侍女から外して下さい。クビにはしなくて良いので。僕に近づいて来ないから都合が良かったんですけど、ジーナに手を出すなら要りません。新しい侍女は付けなくて良いです」
「だが、メイド1人というのは……!」
「なら、ジーナに侍女の仕事もして貰いましょう。侍女の制服も用意して下さい。とにかく、僕に付けるのはジーナだけにします。彼女はきちんと仕事をしてくれるのだから問題ないでしょう」
「分かった! 望み通りにする! だから落ち着け!」
「ありがとうございます。父上」
ようやくいつものように穏やかに笑った息子を見て、父はほっと胸を撫で下ろした。
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