4 / 48
4.馬鹿にされる第二王子
しおりを挟む
「言ったな! 言ったんだな?!」
「言ったわよ! 人の見た目を馬鹿にするなんて教養がなってない。そもそも殿下は不細工じゃない。そんな美意識の破綻した人の話を聞く必要はない。耳が汚れるって言ったわ!」
「ジーナ! 頼むからその毒舌をなんとかしろ!!! 今の発言だって、遠回しに高位貴族を貶してる事になるんだぞ! うちは貧乏伯爵家なんだ! 目をつけられたらどうする!」
「なんでよ! 殿下の方が立場が上でしょう?!」
「……そうなんだけどな……城ではちょっと事情が違うんだ……」
フィリップは溜息を吐きながらジーナに説明を始めた。
「ケネス殿下は、髪の色が違うだろう?」
「ああ、そういえばそうね。でも、確か3代前の国王陛下がケネス殿下のような茶色の髪だったわよね。普通にあり得るじゃない」
「そう思わない貴族も多いんだよ! ビクター……殿下やライアン殿下は、見事な金髪で見目麗しいから余計目立つんだろうな。使用人達もケネス殿下を馬鹿にした態度を取るんだ。俺も最初は驚いたけど、それが当たり前になってしまっていてケネス殿下なら多少馬鹿にしても良いと思ってる貴族も多いんだ。だからケネス殿下は女性に人気がない。夜会でも誰とも踊らないし、誰も声をかけないらしい。俺達は警備だから黙っているしかないんだけど、イライラした事はよくある。幼い頃からお辛い思いをなさっていたんだろうな。使用人もあまり信用なさっておられないらしくて、ひとりで部屋に引き篭もる事が多いから、少しぽっちゃりなさっていて自信なさげな態度なのも女性から人気がない理由のようだ」
「……え? あんなに素敵な方なのに? 王子を馬鹿にする方が馬鹿なのではなくて? それとも無能なのかしら? あ、身の程知らずなのね!」
「やめろ! 気持ちは分かるけど、そんな奴らばっかりじゃねぇよ!! 王太子殿下だってケネス殿下を可愛がってるんだからさ! 頼むから城で余計な事を言うなよ! ただでさえ俺が隊長になって睨まれてるんだから!」
「お兄様は実力で隊長になったでしょう。それに、平民の隊長さんだっていらっしゃるじゃない」
「そうなんだけど……俺の前の隊長が、アレだったからさ……」
「ああ、コネで隊長になって調子に乗ってメイドを誘って振られたからって酔って暴れてクビだっけ? 彼を隊長にした人も騎士団から追い出されたんですってね。せっかく大役を仰せつかったのに、勿体無いわよねぇ。最初はコネでも、実力を認めさせれば良かったのに」
「そんな殊勝な考えのヤツがコネで隊長になるかよ」
「言われてみればそうね。お兄様みたいに実績を積めば良かったのに」
「俺は確かに実績が認められて隊長になったけど、一応貴族だろ? コネじゃねぇかって声もあるんだ。分かってくれてる奴も多いんだけど、俺は隊長になったばかりだからさ……」
「お兄様なら、そのうち皆様分かって下さるわよ。でも、そんな状況で剣を忘れるのはどうかと思うわ」
「すまん。本当に反省してる」
「まぁいいわ。じゃあ、わたくしは行くわね。あまり殿下をお待たせするのは良くないし」
「ジーナ、あまり長居するなよ。本に夢中で、殿下の話を聞かないなんて失礼な事もするなよ!」
「しないわよ。わたくしだって立場を弁えてるわ。せっかくお許し頂いたのに、処罰されたりしたら困るじゃない。わたくし、本気で死んだと思ったわ」
「何やったんだよ!」
「お兄様の剣を持って殿下の部屋に侵入しようとしたのよ。わたくしの命くらい差し出さないとお家が取り潰しになるじゃない。だから覚悟してたんだけど、本が傷つくのが嫌で剣を置いていたから危害を加える気はなかっただろうと仰って、お許し頂けたの。わたくし、殿下がいらっしゃる事に気が付かなくて……殿下を踏んでしまったのに……本当にケネス殿下はお優しいお方ね」
「はぁぁ?! 何やってんだよ! 俺もケネス殿下と話す。確かにケネス殿下の部屋は本だらけだからジーナが我を忘れるのも分かるけど、気をつけてくれよ。城の図書館は、入り口に必ず司書が居るから、司書が居ない部屋は図書館じゃない。覚えておいてくれ。事前に教えなかった俺のせいでもあるな……はぁ……すまん」
「ごめんなさい。お兄様。もし処罰されるとしても、どうにかわたくしだけにして貰えるようお願いするわ。それにしても、ケネス殿下のお部屋は素敵だったわ。本の良い匂いがしたの……」
ジーナは、ケネスの本棚を思い出してうっとりと微笑む。
「頼むから我を忘れるなよ!」
フィリップの叫び声が執務室に響き渡った。
「言ったわよ! 人の見た目を馬鹿にするなんて教養がなってない。そもそも殿下は不細工じゃない。そんな美意識の破綻した人の話を聞く必要はない。耳が汚れるって言ったわ!」
「ジーナ! 頼むからその毒舌をなんとかしろ!!! 今の発言だって、遠回しに高位貴族を貶してる事になるんだぞ! うちは貧乏伯爵家なんだ! 目をつけられたらどうする!」
「なんでよ! 殿下の方が立場が上でしょう?!」
「……そうなんだけどな……城ではちょっと事情が違うんだ……」
フィリップは溜息を吐きながらジーナに説明を始めた。
「ケネス殿下は、髪の色が違うだろう?」
「ああ、そういえばそうね。でも、確か3代前の国王陛下がケネス殿下のような茶色の髪だったわよね。普通にあり得るじゃない」
「そう思わない貴族も多いんだよ! ビクター……殿下やライアン殿下は、見事な金髪で見目麗しいから余計目立つんだろうな。使用人達もケネス殿下を馬鹿にした態度を取るんだ。俺も最初は驚いたけど、それが当たり前になってしまっていてケネス殿下なら多少馬鹿にしても良いと思ってる貴族も多いんだ。だからケネス殿下は女性に人気がない。夜会でも誰とも踊らないし、誰も声をかけないらしい。俺達は警備だから黙っているしかないんだけど、イライラした事はよくある。幼い頃からお辛い思いをなさっていたんだろうな。使用人もあまり信用なさっておられないらしくて、ひとりで部屋に引き篭もる事が多いから、少しぽっちゃりなさっていて自信なさげな態度なのも女性から人気がない理由のようだ」
「……え? あんなに素敵な方なのに? 王子を馬鹿にする方が馬鹿なのではなくて? それとも無能なのかしら? あ、身の程知らずなのね!」
「やめろ! 気持ちは分かるけど、そんな奴らばっかりじゃねぇよ!! 王太子殿下だってケネス殿下を可愛がってるんだからさ! 頼むから城で余計な事を言うなよ! ただでさえ俺が隊長になって睨まれてるんだから!」
「お兄様は実力で隊長になったでしょう。それに、平民の隊長さんだっていらっしゃるじゃない」
「そうなんだけど……俺の前の隊長が、アレだったからさ……」
「ああ、コネで隊長になって調子に乗ってメイドを誘って振られたからって酔って暴れてクビだっけ? 彼を隊長にした人も騎士団から追い出されたんですってね。せっかく大役を仰せつかったのに、勿体無いわよねぇ。最初はコネでも、実力を認めさせれば良かったのに」
「そんな殊勝な考えのヤツがコネで隊長になるかよ」
「言われてみればそうね。お兄様みたいに実績を積めば良かったのに」
「俺は確かに実績が認められて隊長になったけど、一応貴族だろ? コネじゃねぇかって声もあるんだ。分かってくれてる奴も多いんだけど、俺は隊長になったばかりだからさ……」
「お兄様なら、そのうち皆様分かって下さるわよ。でも、そんな状況で剣を忘れるのはどうかと思うわ」
「すまん。本当に反省してる」
「まぁいいわ。じゃあ、わたくしは行くわね。あまり殿下をお待たせするのは良くないし」
「ジーナ、あまり長居するなよ。本に夢中で、殿下の話を聞かないなんて失礼な事もするなよ!」
「しないわよ。わたくしだって立場を弁えてるわ。せっかくお許し頂いたのに、処罰されたりしたら困るじゃない。わたくし、本気で死んだと思ったわ」
「何やったんだよ!」
「お兄様の剣を持って殿下の部屋に侵入しようとしたのよ。わたくしの命くらい差し出さないとお家が取り潰しになるじゃない。だから覚悟してたんだけど、本が傷つくのが嫌で剣を置いていたから危害を加える気はなかっただろうと仰って、お許し頂けたの。わたくし、殿下がいらっしゃる事に気が付かなくて……殿下を踏んでしまったのに……本当にケネス殿下はお優しいお方ね」
「はぁぁ?! 何やってんだよ! 俺もケネス殿下と話す。確かにケネス殿下の部屋は本だらけだからジーナが我を忘れるのも分かるけど、気をつけてくれよ。城の図書館は、入り口に必ず司書が居るから、司書が居ない部屋は図書館じゃない。覚えておいてくれ。事前に教えなかった俺のせいでもあるな……はぁ……すまん」
「ごめんなさい。お兄様。もし処罰されるとしても、どうにかわたくしだけにして貰えるようお願いするわ。それにしても、ケネス殿下のお部屋は素敵だったわ。本の良い匂いがしたの……」
ジーナは、ケネスの本棚を思い出してうっとりと微笑む。
「頼むから我を忘れるなよ!」
フィリップの叫び声が執務室に響き渡った。
2
お気に入りに追加
734
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
思い出しちゃダメ!? 溺愛してくる俺様王の事がどうしても思い出せません
紅花うさぎ
恋愛
「俺がお前を妻にすると決めたんだ。お前は大人しく俺のものになればいい」
ある事情から元王女という身分を隠し、貧しいメイド暮らしをしていたレイナは、ある日突然フレイムジールの若き王エイデンの元に連れてこられてしまう。
都合がいいから自分と結婚すると言うエイデンをひどい男だと思いながらも、何故かトキメキを感じてしまうレイナ。
一方エイデンはレイナを愛しているのに、攫ってきた本当の理由が言えないようで……
厄介な事情を抱えた二人の波瀾万丈の恋物語です。
☆ 「小説家になろう」にも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
追放聖女35歳、拾われ王妃になりました
真曽木トウル
恋愛
王女ルイーズは、両親と王太子だった兄を亡くした20歳から15年間、祖国を“聖女”として統治した。
自分は結婚も即位もすることなく、愛する兄の娘が女王として即位するまで国を守るために……。
ところが兄の娘メアリーと宰相たちの裏切りに遭い、自分が追放されることになってしまう。
とりあえず亡き母の母国に身を寄せようと考えたルイーズだったが、なぜか大学の学友だった他国の王ウィルフレッドが「うちに来い」と迎えに来る。
彼はルイーズが15年前に求婚を断った相手。
聖職者が必要なのかと思いきや、なぜかもう一回求婚されて??
大人なようで素直じゃない2人の両片想い婚。
●他作品とは特に世界観のつながりはありません。
●『小説家になろう』に先行して掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
悪役令嬢は反省しない!
束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢リディス・アマリア・フォンテーヌは18歳の時に婚約者である王太子に婚約破棄を告げられる。その後馬車が事故に遭い、気づいたら神様を名乗る少年に16歳まで時を戻されていた。
性格を変えてまで王太子に気に入られようとは思わない。同じことを繰り返すのも馬鹿らしい。それならいっそ魔界で頂点に君臨し全ての国を支配下に置くというのが、良いかもしれない。リディスは決意する。魔界の皇子を私の美貌で虜にしてやろうと。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。
window
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。
幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。
一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。
ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】すり替わられた小間使い令嬢は、元婚約者に恋をする
白雨 音
恋愛
公爵令嬢オーロラの罪は、雇われのエバが罰を受ける、
12歳の時からの日常だった。
恨みを持つエバは、オーロラの14歳の誕生日、魔力を使い入れ換わりを果たす。
それ以来、オーロラはエバ、エバはオーロラとして暮らす事に…。
ガッカリな婚約者と思っていたオーロラの婚約者は、《エバ》には何故か優しい。
『自分を許してくれれば、元の姿に戻してくれる』と信じて待つが、
魔法学校に上がっても、入れ換わったままで___
(※転生ものではありません) ※完結しました
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
聖なる巫女は隣国の王子と真実の愛を誓う
千堂みくま
恋愛
わけあって山村で生きてきた王女セイラには、聖なる巫女という不思議な力があった。何も知らずに暮らしていた彼女だが、ある日突然、敗戦国の姫として敵国に嫁ぐことになってしまう。
夫となった王子は見惚れるような美男子だったが愛情表現が病的で、いつでも妻と一緒にいようとする。重たい愛に疲れてくるセイラ。
彼の愛をかわしたいと思っていたのに、聖の女神は「巫女の使命は夫と真実の愛を誓うこと」などと、とんでもない神託を授けてきた。
女神の力によって王子の過去を知ったセイラは彼を懸命に愛そうとするのだが、王子の心の闇はなかなか深く……。
(過去になろうで公開していた作品です。)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】伯爵の愛は狂い咲く
白雨 音
恋愛
十八歳になったアリシアは、兄の友人男爵子息のエリックに告白され、婚約した。
実家の商家を手伝い、友人にも恵まれ、アリシアの人生は充実し、順風満帆だった。
だが、町のカーニバルの夜、それを脅かす出来事が起こった。
仮面の男が「見つけた、エリーズ!」と、アリシアに熱く口付けたのだ!
そこから、アリシアの運命の歯車は狂い始めていく。
両親からエリックとの婚約を解消し、年の離れた伯爵に嫁ぐ様に勧められてしまう。
「結婚は愛した人とします!」と抗うアリシアだが、運命は彼女を嘲笑い、
その渦に巻き込んでいくのだった…
アリシアを恋人の生まれ変わりと信じる伯爵の執愛。
異世界恋愛、短編:本編(アリシア視点)前日譚(ユーグ視点)
《完結しました》
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】おしどり夫婦と呼ばれる二人
通木遼平
恋愛
アルディモア王国国王の孫娘、隣国の王女でもあるアルティナはアルディモアの騎士で公爵子息であるギディオンと結婚した。政略結婚の多いアルディモアで、二人は仲睦まじく、おしどり夫婦と呼ばれている。
が、二人の心の内はそうでもなく……。
※他サイトでも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる