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27.謀
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「だから、この男は魔力無しなんです!」
声高にアランの声が響くと、8割程度の来賓がクライブに冷たい目を向けた。
「危うく騙されるところだったよ。我が国は国交を断絶する」
アランの兄がクライブに宣言した瞬間、笑い声が響いた。
「私が……魔力無しですか? そんなわけないでしょう。なんなら、魔法をお見せしましょうか?」
クライブは大きな虹を幻影魔法で創り出すと会場にざわめきが広がり、とある国の王族が声を上げた。
「クライブ殿の魔力の核は、虹色に輝いておりますぞ。こんなに美しい核を見たのは初めてです。彼が魔力無しなんてありえない。そもそも、魔力のない人などおりませぬ。少ない人はおりますが、全くないというのは聞いたことがない」
「う、うそだ! クライブは時を戻して……!」
「とうの昔に失われた魔法ですよね。そんなもの、私は使えませんよ。なんなら自白魔法を使って頂いても構いません。アラン様なら、自白魔法をお使いになれるのでは? このような事態ですし、彼が魔法を使ってもお咎めはないでしょう。ねぇ、国王陛下、王太子殿下」
「……いや……自白魔法なんて……」
「使ってやる! 見てろ!」
「アラン! やめろ!」
兄が止めるのも聞かず、クライブの挑発に乗ったアランは自白魔法を使用した。
「時を戻る魔法を使えるだろう! 白状しろ!!!」
「そんなもの使えませんよ」
自白魔法にかかった者特有の赤い目、操り人形のような動き、来賓はアランが自白魔法を使ったと信じた。
「う……嘘だ! お前は、リーリアが好きだろう! だからあいつを助ける為に魔法を……!」
「リーリアの事は世界一愛しています。リーリアの為なら、どんな魔法も使いますよ」
「だから! 時を戻す魔法を使えるのだろう!」
「使えませんよ」
「嘘だ! あの時、お前はリーリアと消えた! 僕がリーリアの家族を殺したから! 時を戻して家族を救おうとしたんだろう!! 時を戻す魔法を使えるはずだ! 吐け!」
「リーリアの家族はみな生きています。私は時を戻す魔法なんて使えませんよ」
「う、嘘だ……嘘だ嘘だ!」
アランの魔法が暴走して、クライブの自白魔法が解けたように周りには見えた。
「……記憶が曖昧なのですが……なにが起きたのでしょうか?」
クライブは魔法が解けたふりをした。親切な王族が、クライブに一部始終を説明する。
「なるほど。私が魔法を使えないと思われたのですね。幻影魔法では証拠が薄いですかね。すぐ戻って参ります」
クライブは転移魔法を使い、消えた。転移魔法まで使える人物を魔力なしと罵倒したアランに厳しい視線が向けられる。
慌ててアランを退室させようと王太子達が動き出したが、すぐにクライブがリーリア達を連れて戻って来た。
「アラン様はどのような意図があってわたくしの大切な婚約者を侮辱するんですの?」
「リーリア王女……違うんだ……息子の勘違いで……」
国王は、謝るしかできない。王太子は歯軋りをしながら弟を睨みつけている。
「勘違いで国交を断絶されたらかなわないね。父上、いっそこちらから縁を切ったらどうですか?」
「ああ、そうさせてもらう。我々の未来の家族が侮辱されたんだ。今までのお付き合いには感謝するが、今後は我が国と関わらないで頂きたい。そちらの王太子殿下が既に宣言してくれたようだが、我が国もフィグ王国との国交を断絶させて頂きますよ」
「ま……待ってくれドゥーラント王……」
「こうなった理由の報告と、正式な謝罪を頂くまではフィグ王国とは関わりません。それだけの事をなさったと、理解しておられるでしょう? それではみなさん、失礼致します。ああそうだ、こんな空気の悪いところ、いたくないでしょう。クライブ、良かったら希望する方は送って差し上げてはどうだ?」
「良いですね。私は魔力が多いので、ここにいる皆様くらいならお送りできますよ」
「疲れたらわたくしが魔力をクライブにあげるわ」
「それでしたらお付きの方もお送りできるでしょうね」
呼ばれた王族達は、緊急だったので全員転移魔法で来ていた。自国に転移魔法の使い手がいない国は、フィグ王国が転移魔法を使った。フィグ王国は転移魔法の使い手が3人もいるのが自慢だった。
その3人が1日がかかりで送った人員をクライブはリーリアから魔力を貰いながら1時間程度で送り届けてしまった。
国王や王太子がフィグ王国が送ると言っても、誰も首を縦に振らなかった。
どこに送られるかわかったものじゃないと言った者もいたが、反論はできなかった。
彼等は、呆然とするアランを追い出す事しか出来ず、多くの国の要人の前で恥を晒した。
最後にクライブ達が消えると、国王と王太子の怒鳴り声が城中に木霊した。
声高にアランの声が響くと、8割程度の来賓がクライブに冷たい目を向けた。
「危うく騙されるところだったよ。我が国は国交を断絶する」
アランの兄がクライブに宣言した瞬間、笑い声が響いた。
「私が……魔力無しですか? そんなわけないでしょう。なんなら、魔法をお見せしましょうか?」
クライブは大きな虹を幻影魔法で創り出すと会場にざわめきが広がり、とある国の王族が声を上げた。
「クライブ殿の魔力の核は、虹色に輝いておりますぞ。こんなに美しい核を見たのは初めてです。彼が魔力無しなんてありえない。そもそも、魔力のない人などおりませぬ。少ない人はおりますが、全くないというのは聞いたことがない」
「う、うそだ! クライブは時を戻して……!」
「とうの昔に失われた魔法ですよね。そんなもの、私は使えませんよ。なんなら自白魔法を使って頂いても構いません。アラン様なら、自白魔法をお使いになれるのでは? このような事態ですし、彼が魔法を使ってもお咎めはないでしょう。ねぇ、国王陛下、王太子殿下」
「……いや……自白魔法なんて……」
「使ってやる! 見てろ!」
「アラン! やめろ!」
兄が止めるのも聞かず、クライブの挑発に乗ったアランは自白魔法を使用した。
「時を戻る魔法を使えるだろう! 白状しろ!!!」
「そんなもの使えませんよ」
自白魔法にかかった者特有の赤い目、操り人形のような動き、来賓はアランが自白魔法を使ったと信じた。
「う……嘘だ! お前は、リーリアが好きだろう! だからあいつを助ける為に魔法を……!」
「リーリアの事は世界一愛しています。リーリアの為なら、どんな魔法も使いますよ」
「だから! 時を戻す魔法を使えるのだろう!」
「使えませんよ」
「嘘だ! あの時、お前はリーリアと消えた! 僕がリーリアの家族を殺したから! 時を戻して家族を救おうとしたんだろう!! 時を戻す魔法を使えるはずだ! 吐け!」
「リーリアの家族はみな生きています。私は時を戻す魔法なんて使えませんよ」
「う、嘘だ……嘘だ嘘だ!」
アランの魔法が暴走して、クライブの自白魔法が解けたように周りには見えた。
「……記憶が曖昧なのですが……なにが起きたのでしょうか?」
クライブは魔法が解けたふりをした。親切な王族が、クライブに一部始終を説明する。
「なるほど。私が魔法を使えないと思われたのですね。幻影魔法では証拠が薄いですかね。すぐ戻って参ります」
クライブは転移魔法を使い、消えた。転移魔法まで使える人物を魔力なしと罵倒したアランに厳しい視線が向けられる。
慌ててアランを退室させようと王太子達が動き出したが、すぐにクライブがリーリア達を連れて戻って来た。
「アラン様はどのような意図があってわたくしの大切な婚約者を侮辱するんですの?」
「リーリア王女……違うんだ……息子の勘違いで……」
国王は、謝るしかできない。王太子は歯軋りをしながら弟を睨みつけている。
「勘違いで国交を断絶されたらかなわないね。父上、いっそこちらから縁を切ったらどうですか?」
「ああ、そうさせてもらう。我々の未来の家族が侮辱されたんだ。今までのお付き合いには感謝するが、今後は我が国と関わらないで頂きたい。そちらの王太子殿下が既に宣言してくれたようだが、我が国もフィグ王国との国交を断絶させて頂きますよ」
「ま……待ってくれドゥーラント王……」
「こうなった理由の報告と、正式な謝罪を頂くまではフィグ王国とは関わりません。それだけの事をなさったと、理解しておられるでしょう? それではみなさん、失礼致します。ああそうだ、こんな空気の悪いところ、いたくないでしょう。クライブ、良かったら希望する方は送って差し上げてはどうだ?」
「良いですね。私は魔力が多いので、ここにいる皆様くらいならお送りできますよ」
「疲れたらわたくしが魔力をクライブにあげるわ」
「それでしたらお付きの方もお送りできるでしょうね」
呼ばれた王族達は、緊急だったので全員転移魔法で来ていた。自国に転移魔法の使い手がいない国は、フィグ王国が転移魔法を使った。フィグ王国は転移魔法の使い手が3人もいるのが自慢だった。
その3人が1日がかかりで送った人員をクライブはリーリアから魔力を貰いながら1時間程度で送り届けてしまった。
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どこに送られるかわかったものじゃないと言った者もいたが、反論はできなかった。
彼等は、呆然とするアランを追い出す事しか出来ず、多くの国の要人の前で恥を晒した。
最後にクライブ達が消えると、国王と王太子の怒鳴り声が城中に木霊した。
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