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9.やり直す日々
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時を戻ったリーリアは、クライブとの約束通り魔力を鍛える修行を続けている。酔っているような気持ち悪さはあるが、次第に慣れて平然と過ごせるようになった。あふれる魔力を抑える術も会得しているので、リーリアは魔力を抑えて生きている。クライブと約束した年数は過ぎたので修行をやめても問題ないのだが、リーリアは修行をやめられなかった。
クライブとリーリアは、時を戻る前にふたつの約束をした。魔力を鍛え、来るべき時に備える。もうひとつの約束は、本当の魔力量を誰にも知られないようにする。
魔力量を正確に測る方法はない。使える魔法や、回数で推測するしかない。リーリアは魔法の授業がある日は朝から魔法を使い、魔力を減らしている。
クライブが丁寧に年齢に応じた平均的な魔力量を教えてくれたので、リーリアは一般的な貴族や王族と変わらない魔力を持つと認識されている。以前のように魔力が少ない王女だと馬鹿にされる事はない。
努力の割に魔力量が低いと言う教師はいたが、わがままを一切言わず、周りを気遣う王女になったリーリアの評判は高い。
そんなリーリアを、兄達は以前と変わらず溺愛していた。上の兄のカシムは、リーリアに良いところを見せたいと以前よりも魔法の練習に励んでおり国一番の魔法使いだと評判だ。下の兄のクリストファーは魔法で兄に勝てないと拗ねていたが、リーリアが慰めたので立ち直り、勉学と剣術に励んでいる。
「クリストファーお兄様、なにをなさっているの?」
「おおリーリアか。勉強をしているのだよ。リーリアもやるかい?」
(前回は、勉強が嫌いだと泣いたのよね。それ以来、教育は甘くなって家庭教師の回数も減って……今度は、間違えないわ)
「やります! 民の為にお勉強をするお兄様はかっこいいですわ。わたくしも、お兄様のように立派な王族になります」
「そうか! リーリアはすごいな! 私もリーリアに負けないように頑張ろう」
「わたくしも負けませんわ!」
以前と変わらない優しい兄達と娘に甘い両親。リーリアはやり直した6年間で、自分がどれだけ甘やかされていたか充分に理解していた。
叱られた経験がなければ、わがままになるのも仕方ない。クライブがいつも言っていた言葉を思い出したリーリアは、クライブに会いたくなった。
「ねぇお兄様。わたくし、お友達が欲しいわ」
「そうか……リーリアはもう6歳だものな」
以前クライブと会ったのはリーリアが6歳の時だった。偶然城に来ていたクライブが、リーリアの泣き声を聞いて駆けつけてくれたのだ。
クライブと出会った日は覚えていないが、暑い季節だった。今は既に秋だ。このままではクライブに会えないと思ったリーリアは、クライブと会う方法を模索し始めていた。
「ええ。歳の近い貴族の方とお話したいわ。10歳くらいまでの高位貴族の男女を集めてお茶会をしても良いかしら?」
以前のリーリアはマナーがなっておらず、初めて茶会を主催したのは13歳の時だった。クライブが茶会を主催したのは5歳と聞いて驚き、恥ずかしかった。
目の前の兄も、既に茶会を主催していた。
6歳でも茶会を主催できると知っているリーリアは、茶会を利用してクライブと会おうとした。クライブとリーリアの年齢差は3歳。クライブは現在8歳だ。
(クライブの誕生日を知らないから、念のため10歳までにしておけば確実に入るはず。クライブはあれだけしっかりしてたのだから、茶会にもう出ているわ。きっと、わたくしが主催すれば来てくれる。早く、クライブに会いたいわ。ああでも、お父様に気を付けないと)
リーリアは、クライブの留学が父の手配であると知っていた。クライブはなにも言わなかったが、時を戻る寸前に親しくなった侍女達から聞いていたのだ。
「私が茶会を初めて主催したのも6歳だったし、リーリアはしっかりしているからな。分かった。父上に話をしておくよ」
「ありがとうお兄様! 呼ぶ子は自分で決めたいの。できる?」
「ふむ……分かった。兄さんが一緒に選ぶ。それでもいいかい?」
「ええ! ありがとうお兄様! 大好き!」
クライブに会えると思ったリーリアは飛び跳ねて喜んだ。可愛い妹を喜ばせたい兄は、すぐに父に会いに行った。
クライブとリーリアは、時を戻る前にふたつの約束をした。魔力を鍛え、来るべき時に備える。もうひとつの約束は、本当の魔力量を誰にも知られないようにする。
魔力量を正確に測る方法はない。使える魔法や、回数で推測するしかない。リーリアは魔法の授業がある日は朝から魔法を使い、魔力を減らしている。
クライブが丁寧に年齢に応じた平均的な魔力量を教えてくれたので、リーリアは一般的な貴族や王族と変わらない魔力を持つと認識されている。以前のように魔力が少ない王女だと馬鹿にされる事はない。
努力の割に魔力量が低いと言う教師はいたが、わがままを一切言わず、周りを気遣う王女になったリーリアの評判は高い。
そんなリーリアを、兄達は以前と変わらず溺愛していた。上の兄のカシムは、リーリアに良いところを見せたいと以前よりも魔法の練習に励んでおり国一番の魔法使いだと評判だ。下の兄のクリストファーは魔法で兄に勝てないと拗ねていたが、リーリアが慰めたので立ち直り、勉学と剣術に励んでいる。
「クリストファーお兄様、なにをなさっているの?」
「おおリーリアか。勉強をしているのだよ。リーリアもやるかい?」
(前回は、勉強が嫌いだと泣いたのよね。それ以来、教育は甘くなって家庭教師の回数も減って……今度は、間違えないわ)
「やります! 民の為にお勉強をするお兄様はかっこいいですわ。わたくしも、お兄様のように立派な王族になります」
「そうか! リーリアはすごいな! 私もリーリアに負けないように頑張ろう」
「わたくしも負けませんわ!」
以前と変わらない優しい兄達と娘に甘い両親。リーリアはやり直した6年間で、自分がどれだけ甘やかされていたか充分に理解していた。
叱られた経験がなければ、わがままになるのも仕方ない。クライブがいつも言っていた言葉を思い出したリーリアは、クライブに会いたくなった。
「ねぇお兄様。わたくし、お友達が欲しいわ」
「そうか……リーリアはもう6歳だものな」
以前クライブと会ったのはリーリアが6歳の時だった。偶然城に来ていたクライブが、リーリアの泣き声を聞いて駆けつけてくれたのだ。
クライブと出会った日は覚えていないが、暑い季節だった。今は既に秋だ。このままではクライブに会えないと思ったリーリアは、クライブと会う方法を模索し始めていた。
「ええ。歳の近い貴族の方とお話したいわ。10歳くらいまでの高位貴族の男女を集めてお茶会をしても良いかしら?」
以前のリーリアはマナーがなっておらず、初めて茶会を主催したのは13歳の時だった。クライブが茶会を主催したのは5歳と聞いて驚き、恥ずかしかった。
目の前の兄も、既に茶会を主催していた。
6歳でも茶会を主催できると知っているリーリアは、茶会を利用してクライブと会おうとした。クライブとリーリアの年齢差は3歳。クライブは現在8歳だ。
(クライブの誕生日を知らないから、念のため10歳までにしておけば確実に入るはず。クライブはあれだけしっかりしてたのだから、茶会にもう出ているわ。きっと、わたくしが主催すれば来てくれる。早く、クライブに会いたいわ。ああでも、お父様に気を付けないと)
リーリアは、クライブの留学が父の手配であると知っていた。クライブはなにも言わなかったが、時を戻る寸前に親しくなった侍女達から聞いていたのだ。
「私が茶会を初めて主催したのも6歳だったし、リーリアはしっかりしているからな。分かった。父上に話をしておくよ」
「ありがとうお兄様! 呼ぶ子は自分で決めたいの。できる?」
「ふむ……分かった。兄さんが一緒に選ぶ。それでもいいかい?」
「ええ! ありがとうお兄様! 大好き!」
クライブに会えると思ったリーリアは飛び跳ねて喜んだ。可愛い妹を喜ばせたい兄は、すぐに父に会いに行った。
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