聖女は世界を愛する

編端みどり

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37.怒られてばかりの聖女サマ 

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「サンドイッチ美味しかったです! ありがとうございます!」

「良かったです。他にもいろいろ用意していますよ。どれがお好きですか?」

そう言ってニックさんはカバンの中の物を全部出した。って、カバンの中全部食べ物だったの?!

美味しそうなクッキーや、ケーキ、小さめのハンバーガーなど、どれも女の子が好きそうな可愛らしい食べ物ばかりだ。こんなに色んな食べ物があるのね。だけど、ずっと粗食だったせいで胃がそこまで食べ物を受け付けない。

「その、どれも好きなのですが、食べきれないです。もったいないのでニックさんも食べませんか?」

「……そうですか……」

なに、なんでこんなに落ち込んでるの?! あぁ、そうか! 私のために用意してくれたんだもんね。要らないって聞こえちゃったんだ!

「す、すいません! 傷んでしまうともったいないので、無限収納に入れていいですか!? ここなら、時間が止まるから腐らないし。それで、ゆっくり一緒に食べましょう?」

「無限収納とは何でしょうか?」

あぁぁ、またやらかした?!

「あの、こんな感じで物をたくさん収納できるんです。時間も止まるから、あったかいものは温かいままだし、冷たいものは冷たいままです」

わたしはニックさんの目の前で、無限収納に大量の食糧を詰め込んだ。目の前から食べ物が消えて、ニックさんは驚いている。

「これは、凄いですね。どのくらい入るんですか?」

「無限だし、多分無限に入ると思います」

「これは、オレも使えますか?」

しばらくニックさんに無限収納の説明をしていると、ニックさんのカバンが消えた。

「できましたね。これは便利です。ありがとうございます」

「やったね! じゃぁついでに、透明化もイメージしたら出来るんじゃない?」

「いいですね、出来たらいつでも聖女サマに会いに来られますね」

それは、ホントにいいなぁ。でもニックさんだって忙しいよねぇ。お母さんも病気だって言ってたし。そうだ! 癒しってどのくらい広げられるんだろう? この街全部とか範囲にすれば、お母さん元気になるんじゃない?

「神様、神様、この街中のすべての人が元気になりますように!」

おぉう、なんか物凄い光が出てますけど。効いたかな。どうかな? ニックさんのお母さん元気になると良いなぁ。しばらくすると光も収まり、呆然としたニックさんがこっちを見ている。あ、あれ? ニックさんにも癒しいってるよね? なんで、顔が赤いの?!

『何をしておるのだ!』

うぉう、神様が来た。あ、あれ? 額に青筋が見えるのは気のせい?

「……あのその、街中の人が元気になればいいなと、その、ごめんなさぁい!」

『ニック、ちゃんと監督せぃ』

「申し訳ありません。しかしなぜ急に聖女様は癒しを出されたのですか?」

「その、ニックさんのお母さんの話聞いてて、前から気になってて、美味しいもの食べて元気出たし、今なら街中の人を癒せたりしないかなぁと、思いまして、やってみた次第でございます……」

段々小さな声になりながら、神様とニックさんに説明する。

『神殿に病人が次々回復しているが我の力かと問い合わせがあったそうじゃ。これは我の力ということにするが、よいな?』

「それでお願いします……目立つ事してすいませんでした」

『では我は外に説明をしてくる。いいか! くれぐれも勝手な行動はするなよ! ニック、ちゃんと見張っておれ! 聖女は何か行動を起こす前に必ずニックに伝えよ! 頼むからおとなしくしておれ!』

神様が外に出て、みんなに説明をしだした。

「聖女の祈りが強く、皆を思う慈悲深い祈りの力により、我は奇跡を起こすことができた。其方たちの体調は改善しておろう? 街を確認してみよ。皆も同じであろう。さ、我の力が分かったのなら我の求める質問の答えを教えよ。なぁに、まだ1週間ある。ゆっくりと答えを出すがよい」

すいません、すいません神様!

ニックさん、さっきからぽかーんとしてますけど。ご迷惑をおかけしました。本当にすいません!
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