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番外編
4.聖女様の仕業に決まってる
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しばらくアリサちゃんに頼んで挨拶をしていると、騒がしくなってきた。
なんか、偉そうな人が通信魔道具に怒鳴りつけている。すぐに国王陛下に話しかけていて、大騒ぎしてる。
「い、イツキ様の仕業ですか?!」
「なんじゃい、我はずっとここにおったぞ。それに我にはそんな力はないぞ」
「では、やはり聖女様ですね!」
ひぇえ! 多分スラムの件がバレたんだろうけど、わたしを見る目がギラギラしてる。
「愛梨沙様、少しお伺いしてもよろしいですか?」
「もちろんですわ、国王陛下」
「聖女様は、我が国のスラムをお助け下さったのでしょう?! 長年我が国の悩みの種だったのです! 聖女様! ありがとうございます! 我が国を助けたのですから、ぜひ我が国にいらして下さい!」
な……なんなのこの人! 他国の人間に証拠もなしに決めつけた事言うなんて……しかも、スラムを長年悩みの種ですって! スラムを作ったのは自分達でしょ! 死んでた人もこの人が対処すれば生きてたかもしれないのに。国自体が貧しかったわけではない事は既に調査済みだ。それどころか、王族の浪費が激しい事も調べはついてる。浪費せずに、スラムに予算を回していれば、こんな事になってない。
……許さない。わたしがした事だ、きっちり責任を持とう。
「スラム……ですか。我が国には、そのような場所、ございませんわよね国王陛下」
「もちろんです。飢饉の時などは、スラムになりかける事はありますが、年単位でスラム化しているなど我が国では決してあり得ません」
「そうですわよね。スラムを長年放置なんて自分が無能と言っている証ですもの」
「……なっ! いくら聖女様でも言っていい事と悪い事がありますぞ!」
「先程から、わたくしを聖女と呼びますけど、わたくし、聖女として貴方様にご挨拶致しましたかしら?」
してない。ってか、話すのも初めてだ。
「それに、スラムを助けたと言いますけど、それはいつ?」
「たった今です! このような奇跡、聖女様しかあり得ない! ですから、聖女様は英雄殿と我が国に……」
「あははは……」
わざと、大声で笑う。みんな引いてるけどごめんね。
「わたくしが、この夜会の会場から出たところを見た方はいらっしゃるの?」
「聖女様は注目されておりますから、会場から出れば必ず気がつきます。どなたか、聖女様と英雄様が会場から出たところを見た方はいらっしゃいますか」
アリサちゃんからも、声がかかるが誰も手をあげたりはしない。そうだ!
「いらっしゃるなら、仰ってね。わたくし、短時間しか使えないけど、嘘が見破れるの。1週間に3回しか使えないし、制限も多いんですけど……ほら、こんなふうに」
嘘発見魔法を自分に使う。
「わたくしは、男性よ」
電球が光る。みんな見た事ない魔法にビビってるけど、ここは使い所だろう。
「さ、貴方様にもお使いするわね。嘘はこんなふうに光るのよ」
ビビってる間に、問答無用で魔法を使ってやる。
「ねぇ、教えて? わたくしが貴方の国のスラムを癒した証拠はあるの?」
「聖女様は遠くの場所も癒せると言うではないか!」
「そう……でも、わたくし知らない場所は癒せないわ。見たことあったり、場所が分かれば良いけど、わたくしが他国のスラムをどうやって知ったの? スラムの話を聞いていても、場所が分からなければ癒せないわ」
スラムを知ってるなんて、言わない。あくまで、分からなければ癒せないと言っただけ。気を引き締めろ、これは、わたしの今後に関わるんだ。
「そんな奇跡、聖女様しかありえない! 調べればわかる!」
「国王陛下、他国の事ですが、オレ達も調査させて頂いてよろしいですか? 愛梨沙はずっとオレの側にいました。我々に虚偽の報告をして、愛梨沙を連れ去ろうとしている危険性があります」
「なっ……無礼だぞ!」
「他国の人間を、いちゃもんつけて誘拐しようとする方が余程無礼でしょう。愛梨沙がやった証拠はあんのか? 目撃者が大量にいる夜会の最中に、なんでわざわざスラムを癒しに行くんだ」
「うるさい! 聖女様は我が国にくるべきだ!」
「なぁ? 聞いていいか? この子の名前、分かるよな?」
ニックが、わたしを引き寄せて抱きしめる。
「それは……分かるぞ! 当然だ!」
名前すら名乗らない失礼なおじさんの、頭がピカピカ光った。
なんか、偉そうな人が通信魔道具に怒鳴りつけている。すぐに国王陛下に話しかけていて、大騒ぎしてる。
「い、イツキ様の仕業ですか?!」
「なんじゃい、我はずっとここにおったぞ。それに我にはそんな力はないぞ」
「では、やはり聖女様ですね!」
ひぇえ! 多分スラムの件がバレたんだろうけど、わたしを見る目がギラギラしてる。
「愛梨沙様、少しお伺いしてもよろしいですか?」
「もちろんですわ、国王陛下」
「聖女様は、我が国のスラムをお助け下さったのでしょう?! 長年我が国の悩みの種だったのです! 聖女様! ありがとうございます! 我が国を助けたのですから、ぜひ我が国にいらして下さい!」
な……なんなのこの人! 他国の人間に証拠もなしに決めつけた事言うなんて……しかも、スラムを長年悩みの種ですって! スラムを作ったのは自分達でしょ! 死んでた人もこの人が対処すれば生きてたかもしれないのに。国自体が貧しかったわけではない事は既に調査済みだ。それどころか、王族の浪費が激しい事も調べはついてる。浪費せずに、スラムに予算を回していれば、こんな事になってない。
……許さない。わたしがした事だ、きっちり責任を持とう。
「スラム……ですか。我が国には、そのような場所、ございませんわよね国王陛下」
「もちろんです。飢饉の時などは、スラムになりかける事はありますが、年単位でスラム化しているなど我が国では決してあり得ません」
「そうですわよね。スラムを長年放置なんて自分が無能と言っている証ですもの」
「……なっ! いくら聖女様でも言っていい事と悪い事がありますぞ!」
「先程から、わたくしを聖女と呼びますけど、わたくし、聖女として貴方様にご挨拶致しましたかしら?」
してない。ってか、話すのも初めてだ。
「それに、スラムを助けたと言いますけど、それはいつ?」
「たった今です! このような奇跡、聖女様しかあり得ない! ですから、聖女様は英雄殿と我が国に……」
「あははは……」
わざと、大声で笑う。みんな引いてるけどごめんね。
「わたくしが、この夜会の会場から出たところを見た方はいらっしゃるの?」
「聖女様は注目されておりますから、会場から出れば必ず気がつきます。どなたか、聖女様と英雄様が会場から出たところを見た方はいらっしゃいますか」
アリサちゃんからも、声がかかるが誰も手をあげたりはしない。そうだ!
「いらっしゃるなら、仰ってね。わたくし、短時間しか使えないけど、嘘が見破れるの。1週間に3回しか使えないし、制限も多いんですけど……ほら、こんなふうに」
嘘発見魔法を自分に使う。
「わたくしは、男性よ」
電球が光る。みんな見た事ない魔法にビビってるけど、ここは使い所だろう。
「さ、貴方様にもお使いするわね。嘘はこんなふうに光るのよ」
ビビってる間に、問答無用で魔法を使ってやる。
「ねぇ、教えて? わたくしが貴方の国のスラムを癒した証拠はあるの?」
「聖女様は遠くの場所も癒せると言うではないか!」
「そう……でも、わたくし知らない場所は癒せないわ。見たことあったり、場所が分かれば良いけど、わたくしが他国のスラムをどうやって知ったの? スラムの話を聞いていても、場所が分からなければ癒せないわ」
スラムを知ってるなんて、言わない。あくまで、分からなければ癒せないと言っただけ。気を引き締めろ、これは、わたしの今後に関わるんだ。
「そんな奇跡、聖女様しかありえない! 調べればわかる!」
「国王陛下、他国の事ですが、オレ達も調査させて頂いてよろしいですか? 愛梨沙はずっとオレの側にいました。我々に虚偽の報告をして、愛梨沙を連れ去ろうとしている危険性があります」
「なっ……無礼だぞ!」
「他国の人間を、いちゃもんつけて誘拐しようとする方が余程無礼でしょう。愛梨沙がやった証拠はあんのか? 目撃者が大量にいる夜会の最中に、なんでわざわざスラムを癒しに行くんだ」
「うるさい! 聖女様は我が国にくるべきだ!」
「なぁ? 聞いていいか? この子の名前、分かるよな?」
ニックが、わたしを引き寄せて抱きしめる。
「それは……分かるぞ! 当然だ!」
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