聖女は世界を愛する

編端みどり

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番外編

1.新婚旅行

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「ニック、この街すごい!」

移動は全て船で、街中は水路が張り巡らせてある。水の都だ。水が光を反射して輝いており、人々が生き生きと暮らしている。船が集まって市場みたいになっている場所もあって、ワクワクする。

「気に入ったなら、ここに住むか?」

「んー、たまに来るくらいで良いかな。ニックだってお仕事あるじゃん」

「瞬間移動ありゃあ、出勤出来るぜ」

そっか、瞬間移動便利ね。今まで思いつかなかったのが不思議。これあれば脱走も楽だったのに。

「便利ね、瞬間移動」

「愛梨沙は、すげえよな。よく色々思いつくぜ」

「わたしの世界、魔法ないけど、魔法を扱った本はいっぱいあるから、みんな好き勝手想像するの。だから、イメージしやすいのかも」

「なるほどな。オレらはどうしても今ある魔法しか使えねぇって思っちまうんだよな」

「なるほどね」

「瞬間移動は、まだオレとイツキくらいしか使えねぇし、切り札にするから誰にも言うなって言われてるけど、無限収納は広がりつつあるぜ。便利だよな。おかげで遠征は楽になったし、今は商人が習得しようと必死みたいだぜ」

「この世界の魔法、新しく作っても、人に危害加えられないから良いよね。無限収納は自分の物しか入れられないし、瞬間移動も同意した人だけ。優しい世界だよ」

「罪人への罰は別だけどな。今後はわかんねぇけど」

「やっぱりイツキの力なくなったら色々問題ある?」

「あったとしても、オレらで対処するべきもんだからな。今は悪い事に魔法使えねぇってみんな思ってるけど、もし使えるって分かれば犯罪増えるかもな。そうならないよう、オレらがちゃんと街を守るよ」

「頼もしいね。ニックは凄いね」

「愛梨沙にそんな事言われるなんて光栄だな」

「ね、ニックが行った事ある街はまだあるの?」

「あるぜ、ただ愛梨沙に見せるのはここまでだ」

「なんで?!」

「愛梨沙をスラムに連れて行けるかよ」

「スラムとかあるんだ」

「うちの国にはねぇけどな。そんな顔してっけど、さすがに目立つからスラム行って癒しや浄化は出来ねえぞ」

「……うん、分かった」

「なぁ、今度夜会あんだよ。知ってるか?」

「う、うん。マナーとか必死で覚えてる」

「そん時さ、同盟国の要人がいっぱい来るんだよ。多分オレらは注目されて、ずっと抜けられねぇ」

「憂鬱だよねー……」

「だからさ、ちょっとくらい幻影使っても良いと思わねぇか? アリサ様にサポートを頼めば、10分は誤魔化せる」

「……まさか」

「スラムを救う聖女様に、妻が祭り上げられるのは困るんだよ。他国の事に介入したからうちの国に住めとか言われそうだし。けど、オレもスラムはなんとかしたい。あの国、なんも手助けしねぇんだ。うちの国王陛下なら絶対放っておかないのに」

「見た目全然違う、ヨボヨボしたおじいちゃんとおばあちゃんに変装したら、バレないかな?」

「夜会にぶつければ、絶対バレねえな」

「アリサちゃん、黙っててくれるかな?」

「口止めしとけ。でないと通信魔道具みたいにすぐ伝わるぜ。アリサ様は愛梨沙が口止めしたら、拷問されても言わねぇよ」

「それは可哀想だから、アリサちゃんが痛い目にあわない限り黙っててって頼む!」

「……それ、余計言わないやつだぜ」

「じゃあ、夜会の時に、スラムに癒しと、浄化と、食べられる作物生やしに行こうね!」

「愛梨沙、また新しい魔法考えやがったのか!」

「こないだ、孤児院の畑で……」

「新しい事をやったら必ず報告してくれよ。狙いそうなやつ調べるからさ」

「そんな過保護にしなくても、わたしも攫われそうになったら瞬間移動とかで逃げられるんだよ?」

「そうじゃねぇ、愛梨沙攫おうとしたヤツなんか八つ裂きに決まってんだろ。そこまで行く前に警告するんだよ。穏便に」

「ニックの穏便な話し合いの定義が気になるよ……」
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