聖女は世界を愛する

編端みどり

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48.ニックの奮闘記【ニック視点】

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愛梨沙と恋人になってから神殿から護衛任務が来ることは無くなった。

愛梨沙は、ほぼ結界に居るのだから当然だ。

やはり、透明化を覚えて正解だったな。オレは暇さえあれば透明化で愛梨沙の結界に入り込んだ。

ただ、愛梨沙や、神様と相談して透明化をオレが自由に使える事は言ってない。でも、愛梨沙と会わないのも不審がるだろうし、仲間達はオレ達の事を応援してくれるから全てを隠したくはない。

そこで、愛梨沙が魔道具を作れる事は騎士団に言う事にした。愛梨沙が作る透明化の魔道具は、持続時間は1時間、邪な事には使えないように制限をかけて貰い、いくつか量産して騎士団に持って行った。愛梨沙は悪い事には使えないし、好きに使って良いよなどと軽く言うが、だいぶヤバいシロモンだから、団長預かりにしてある。たまに捜査に使わせて貰っている程度だ。

んで、オレがそれを定期的に貰ってるって事にしたって訳だ。オレが持つ分は、愛梨沙んところ行って帰る分しかないって言えば、誰も他の事に使うとは思わねぇらしく、今では女性が喜ぶアイテムをやたら教えて貰えるようになった。

片っ端から愛梨沙にやっていたら、多すぎて使いきれないと言われてしまった。化粧水などは作る事もできるから大丈夫だと。

何か失敗したかと思い、ダリスに相談したらマリアから叱られた。オレは、プレゼントのセンスが無いそうだ……。

「大量にコスメ貰っても困るわよ! 店の商品を全部買うなんて馬鹿じゃないの?! コスメは好みもあるんだから全商品なんて貰っても使いにくくてしょうがないわ!」

「ま、まぁまぁマリア、落ち着け」

「せっかく好きな女の子出来たのに、こんな体たらくじゃ愛想尽かされるわよ! ニックは壊滅的にセンスがないわ! 今まであげたもので喜んだのは何?!」

「……食べ物、だろうか?」

「はあ?! 何そのアバウトな答え!!! 食べ物にも種類あるでしょうよ!」

「しかし、全て美味しそうに食べてくれたぞ?」

「ニック、まさかと思うけど、以前私に聞いてきたオススメの店の食べ物、全部一気にあげたんじゃないわよねぇ……?」

「……ままま、マリア、落ち着こうか。ほら、ニックのお相手はなかなか会えないんだよ。だから会えた時に色々プレゼントしたくなるんだ」

「好きな人に貰うものは特別なんだから、大量にあげてもありがたみが薄れるわよ! 自分も同じくらい返さなきゃいけなくなるし、そんなのお相手は負担になるに決まってるじゃない! そもそもダリス、あなた一緒に選びに行ったわよね?! なんで止めないのおバカ!」

「す、すまん! ニックが必死だったからつい……」

「ついじゃない! 親友ならフォローしろ!」

「ごめん、悪かったよ。だから落ち着こうか。ね、お腹の子にも触るし」

「……そうね。ごめんなさい。とにかくニック、今後は会う時渡す程度のプレゼントは相手が負担にならない金額のものにするのよ。それこそ、ふたりで食べるくらいの量のお菓子なんて最適ね。で、誕生日とか記念日とかにアクセサリーをひとつあげるといいわ。コスメは好みが分かるまでは、やめなさい。いいわね、プレゼントは必ずひとつよ! 貴族ならまだしも、庶民で大量のプレゼントはまともな子なら引くわ! ……まさか、貴族の方と禁断の恋とかじゃないわよね?」

「大丈夫、ニックのお相手は貴族じゃないよ。ある意味、貴族の方が楽だろうけど……」

ダリス、マリアにも聞こえなくくらいの小さな呟きは刺さる。だが、オレは愛梨沙しか愛せない。絶対、愛梨沙を手に入れてやる。

マリアのアドバイスを愛梨沙に話したら、ものすごく笑われた。たしかにひとつの方が大事に出来て嬉しいとも、ニックが来るだけで嬉しいから、ものは別に要らないとも言われた。やはり多すぎても良くないらしい。だが、愛梨沙はプレゼントはとても嬉しかったし、使えるからと全てを組み合わせて、全部使い切ってくれた。結界の中でしか化粧しないから色々試すのが楽しかったと言うが、確かにマリアの言う通りコスメはプレゼントのハードルが高いな。化粧をした愛梨沙は、大人びていて美しかったから、良いものを見れたし良しとしよう。

愛梨沙が無条件で喜ぶのはやはり食べ物だ。他のものは魔法でも作り出せるらしいが、食物は無理らしく、食べ物はとても喜んで貰える。

だから、毎回少量の菓子を持っていく事にした。真っ赤な顔の愛梨沙に食べさせるのはとても楽しい。
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