聖女は世界を愛する

編端みどり

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42.満たされたココロ

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「神様、もうすぐ神殿長からご報告ができます。長らくお待たせして申し訳ありません」

神様に報告に来たのは2日経ってから。早いよ。1週間粘ってくれたら良いのに。

「早すぎるよぉ」

「ひとまず、毎日結界で1人で祈らないといけないって事にするか?」

「そうだね。通信魔道具あるし、いつでも連絡して。えっと、仕事中とか忙しい時は留守電で」

「留守番? どうやるんだ?」

「んと、ここひねって留守番モードに出来るよ。話せる時は宝石の色が濃い青、話せない時は薄い青で、薄い青の時はメッセージ預かれる。メッセージあれば、チカチカ光るから宝石を触ると聞けるよ。透明化とかで隠す時は薄い青にしとけば安心かな?」

「……ほんっと規格外だよな、愛梨沙は」

「そお? わたしも結界の外では留守番にして隠しておく。あと、寝る時とかもこれからは結界出して寝る。寝る前に祈り捧げて、そのまま寝るって事にするから。神様の前で宣言する事にすれば、うまくいくとは思う。できるだけ結界の中にいるつもりではあるんだけど……どうやればニックに会えるかなぁ」

「ひとまずオレは結界が解除されたら透明化で神殿から出る。オレの魔力じゃ、いつまで透明化保つかわかんねぇからな」

「やっぱりわたしがかけとく?」

「それだと、いつ解除されるか分かんねぇだろ?」

「んー……、そうだ! ニック、手貸して!」

「……愛梨沙、今度は何を思いついた? もう時間ねぇぞ」

「大丈夫! 大丈夫!」

「お前の大丈夫は信用できねぇよ!」

「ひっどーい! 手貸して! ね!」

「……分かったよ。手ェなんて繋いだら離したくなくなるじゃねーかよ」

「それは、そうなんだけどっ! とにかく手を貸せ!」

ニックの手を無理矢理触り、魔力を渡してみる。魔力は暖かい感覚だからそれをニックに流すイメージでやってみる。

「オイ! なんだこれ! 魔力が溢れてんぞ!」

「ごめん、またやらかした?」

ニックが、光る。

「愛梨沙、説明!」

「ニックに魔力流しました。以上」

「コレどーすんだよ!?」

「魔力、身体に流す感じにして、んで、光を抑えます」

「……くっそ、やってやるよ!」

「教皇が来る前に、頑張って!」

「愛梨沙、そろそろ手加減を覚えてくれよ! っしゃあ、出来た! こんでどうだよ?!」

「できてる! 光ってないよ! すごい!」

「こんで、透明化すりゃあ良いんだよな。どうよ?! 魔力感知されねーように、魔力も透明化しておこう」

「まったくわかんないよ! すごい! でも寂しいから出てきて欲しい……」

「悪りぃ。おいで」

もう時間がないのは分かってるから、必死でニックに抱きつく。なんだろ、ニックと居るとすっごく暖かい。

「このままがいいなぁ」

「そうだなぁ、いっそ、時間が止まりゃあ良いのにな」

「ホントだよね。神様、神様、時間を止めてって言いたく……」

「余計な事をするなと言ったじゃろうがぁ!!!」

かかか、神様ぁ!!!

「すいません、わたし、何やりました?」

「結界の外を見てみぃ」

わたしが作ったテレビ、外見れるのよね。話に夢中でほぼ見てなかったけど。

「……止まってますね、時間」

「か、神様?」

「さすがにせいぜい数時間しか保たないだろうがな」

数時間保つの?!

「まぁ良い、其方達とゆっくり話す時間が出来たと思おう。まずは、聖女よ、通信魔道具を2組作れ。早急に」

「は、はぁい。カタチは何がいい?」

「ふむ、腕輪でどうじゃ? ニック、透明化で隠しておくとして腕輪は邪魔か?」

「まぁ、そこまで邪魔ではありませんが、常につけておくとなると少し邪魔かもしれませんね」

「あ、イヤーカフは?」

小さめのイヤーカフを作り、2組用意する。一応無くさないように、持ち主をニックに登録し、万が一別の人が触ると消えてなくなるようにした。

ペンダントも、同じ魔法をかける。昔なんかの漫画で読んだファンタジーのイメージで、自分以外触れたら壊れるとか、落としても願えば手元に戻るとかは結構あっさり出来た。良かったなぁ、漫画とか小説読みまくってて。

魔法の説明をしたら、ニックと神様が呆れた顔をした気がするけど、気にしない。

「……愛梨沙の行動、ほんっと予想できねぇよな」

「そ、そう? でもこれで安心だよ! 壊れたら片割れに合図いくから、出来るだけ早く会おうね! 壊れるのは一瞬だし、分かんないと思うよ。あ、一応不安だから予備作っておこ? ペンダントと、イヤーカフの予備作ったから、無限収納に隠しておいて! 予備は留守番モードにしておいて、壊れた合図きたら予備を確認しよ?」

「万端じゃな。ではその2組の片割れと、予備を我に渡せ」

「は?! 神様と直通電話?」

「そうじゃ、我から連絡出来るのは具現化している時だけじゃが、不便じゃからな。我から連絡したら早めに出よ」

「あの、オレにも要ります? 神様の連絡手段」

「むしろ其方に要る」

「……かしこまりました」

「それから、聖女、いや、愛梨沙よ」

「……神様、もしかしてわたしたちの話、聞いてました?」

「我の力を借りて作った結界じゃぞ? 見えるに決まっておる。途中からはあまりに2人の世界じゃったから見ておらんから安心せぇ。それはさておき、愛梨沙は今、とても満たされておる筈じゃ。憎しみなどの心はほぼ無かろう? 頼むからそのままでおってくれ。ニック、愛梨沙を頼む」

「憎しみかぁ、ないねー。なんだろ? あってもおかしくないはずなんだけど」

あったかくて、ポカポカしてて、今ならあのシスターにも優しくできるかも?

「オレは神殿への怒りや憎しみで溢れておりますが」

「ニックは、まぁ良い。人間じゃし、憎しみがあっても当然じゃ。じゃが、聖女は違う。聖女はしあわせであるべきなのじゃ。聖女が憎しみに囚われれば……逃れられなくなる」

「……逃れられなくなるとは、どういうことでしょう? まさかと思いますが、結界を出した直後の愛梨沙から出た黒いモヤの事ですか?」
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