聖女は世界を愛する

編端みどり

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40.甘い時間

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「大好き」

「オレも好きだよ」

照れる。ニックの顔は真っ赤。多分、わたしもだ。

だけど、今までにないくらい安心して、心があったかくなる。こんなに満たされたのは、もしかしたら前の世界でもなかったかもしれない。不思議と、身体の中がポカポカする。

恋人同士になって、さっきよりも近い距離感でくっつく。恋人って何するの? 初めてキスしたけど、まだドキドキしてるんですけどっ!

「ちなみに聞いて良いか?」

「ん? なぁに?」

「その、オレは愛梨沙を好きになった理由は話したが、愛梨沙はなんでオレを好きになってくれたんだ?」

「最初、から?」

「……最初オレは助けてと言った愛梨沙を助ける事もしなかったんだが」

「あの時は、意識朦朧としてたし、ニックはずっと辛そうにわたしを見ててくれたよね。祈るのだって、助けてくれたし、初めて人前に出る時も、不安なの察してこっそり教えてくれた。そんなの続いたらさ、好きになるよねそりゃ」

「そうか、オレはむしろ最初助けなかったからな、シスターと同類だと思ってたぞ」

「あんなのと一緒にしないでよ! ニックはずっと優しかったよ」

「しかし、多分オレの同僚が護衛に来ていたら、最初の懲罰も止めてた筈だ」

「……そんで、あのシスター止められたわけ? あの人よく知らないけど多分かなり神殿で権力あるよね? 呼び出された瞬間に、祈れとか言われてさ、意味わかんない。家に帰せって言ったら、帰れないって言うから、誘拐じゃんって言ったの。そしたら速攻で鞭ですよ。それ、周りにいる奴誰も止めないんだよ? 神殿長ですらね。そのシスターに逆らってその場は止められても、その後、絶対クビだよ? そんなのヤダよ。ニックが我慢してくれたから、護衛として側に居てくれたんじゃん? わたしは、ニックが護衛で良かったと思うよ」

「愛梨沙、もう一回言ってくれ」

「わたしは、ニックが護衛で良かったよ?」

「いや、そこも嬉しくて大事なんだが、呼ばれてすぐに懲罰を受けたのか?」

「うん、わずかな会話でいきなり鞭」

「愛梨沙、今すぐ神殿を破壊してくる。このようなまどろっこしい事をせずとも、物理的に神殿が無くなれば良いのだ。透明化があればわからん。悪いがちょっと結界を出てくる」

結界は、作った人が認めれば出入り自由らしいんだよね。ニックから黒い気配がしますよ。ちょっと嬉しいけど、それこそ作戦が台無しだから止めないと。

「やだ! 1人にしないで!」

ニックが神殿を壊すのも困るけど、寂しいから居なくならないで欲しかった。

「神殿なんか、どーでもいい! 一緒にいる時間が無くなるのは嫌」

「そうか、なら愛梨沙の側にいる事にするよ」

恥ずかしいけど、ニックに抱きついたらあっさり意見を翻してくれて助かった。なんかまだ怒りを感じるけどまあ良いか。

「……今は、愛梨沙に免じて何もしないでおいてやる」

ニックの呟きは、小さすぎて聞こえなかった。
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