36 / 82
36.どれだけ買う気だ【ダリス視点】
しおりを挟む
「ダリス、すまん教えてくれ!」
親友のニックが俺に頭を下げたことは、ほぼなかったんだが、ここ1ヶ月で2回も見る事になるとは思わなかった。ニックが神殿から戻り、団長室にこもった次の日に極秘任務として騎士団全員に通達されたのは、神様の計画の手伝い。団長が騎士団全体に聖女様の扱いを公開したもんだから、俺たち騎士の神殿への怒りはものすごかった。
俺もニックと団長から聞いた時にはものすごく腹が立ったからみんなの怒りは当然だし、もう聖女様が虐げられないなら、全力で協力することにしようと騎士団の心はひとつになった。神殿の懲罰を受けたことがあるものは騎士にもいたが、確かにあれは理不尽な暴力だと皆口をそろえて言っていた。
そこからは早かった。ニックは遠征準備のためと偽り、神殿に騎士の交代を申請したらすんなり通った。その間にニックはしばらく不在でも問題ないように根回しをする。ニックの母の容体は安定しているから、うちがしばらく面倒をみることになった。その間も、聖女様の護衛に騎士が交代で赴く。俺も一度行ったが、ずいぶんとおとなしい少女のように見えた。というか、元気がないのではないか? ニックや団長の話を聞いて、ずいぶんたくましい女性を想像していたのだがな。あぁ、それからシスターは確かにダメだ。俺たちは接する時間はわずかだったが、聖女様への言動は呆れるしかないし、あんなにも人を馬鹿にした言動を嬉しそうに言う女など初めて見た。幸い、懲罰などはなかったが、皆怒りを抑えられず、護衛任務は複数人で交代で行うことにした。ニックはすごいな。俺なら、最初の懲罰を見た瞬間にシスターを殴っていた自信がある。しかしそんなことをしては、クビになるだけで聖女様の助けにはならなかっただろう。
すべての準備が終わり、俺とニックが明日は神殿に行くことになった。ニックは遠征前にお世話になった神殿に挨拶に来たという触れ込みだ。そしてトラブルが起きる寸前に神殿を出たと思わせるために俺がついていく。もう後は、明日に備えて休むだけなのだが、何故俺はニックのつむじを見つめているのだ。
「どうした、ニック。頼みとはなんだ?」
「その、ダリスというか、ダリスの奥様に聞きたいことがあってだな……」
なんでだ、俺の妻に何の用だ。そんな赤い顔で言われたら警戒するんだが。
「じょ、女性の好きな食べ物を売っている店を出来るだけたくさん教えてくれないだろうか……」
「お前、聖女様に差し入れでも持っていくのか?」
涙目で頷いているニックは、俺の知らない表情をしていた。そうか、ニックは聖女様が好きなんだな。なんとなくそんな気はしていたが、確信した。ニックと恋の話ができる日が来るとは思わなかった。いつも女性は寄ってくるが、適当に躱していて、口説き文句なんて言ってるのは聞いたことがない。それが本気で口説こうとするとこんなにも照れる姿を見せるのか。
「よし分かった! マリアに色々聞きに行こうぜ!」
マリアと結婚できたのも、ニックの根回しのおかげだからな。ニックは色んな奴の縁結びをしている割に、自分のことには無頓着だったし、寄ってくる女性も適当にあしらっていた。まさか買い物ひとつでここまで迷うとは面白い。
マリアに手伝ってもらい、人気の店を聞く。面白そうだから俺も買い物に付き合うことにしたのだが
「おぃニック、こんなに買っても食べきれんぞ!」
「どれが気に入るか分からないではないか! あ、あちらの店も女性が好きそうだ。つきあってくれ」
まさか、男二人で持ちきれんほど買うとは……。聖女様が喜んでくれるといいな、ニック。
親友のニックが俺に頭を下げたことは、ほぼなかったんだが、ここ1ヶ月で2回も見る事になるとは思わなかった。ニックが神殿から戻り、団長室にこもった次の日に極秘任務として騎士団全員に通達されたのは、神様の計画の手伝い。団長が騎士団全体に聖女様の扱いを公開したもんだから、俺たち騎士の神殿への怒りはものすごかった。
俺もニックと団長から聞いた時にはものすごく腹が立ったからみんなの怒りは当然だし、もう聖女様が虐げられないなら、全力で協力することにしようと騎士団の心はひとつになった。神殿の懲罰を受けたことがあるものは騎士にもいたが、確かにあれは理不尽な暴力だと皆口をそろえて言っていた。
そこからは早かった。ニックは遠征準備のためと偽り、神殿に騎士の交代を申請したらすんなり通った。その間にニックはしばらく不在でも問題ないように根回しをする。ニックの母の容体は安定しているから、うちがしばらく面倒をみることになった。その間も、聖女様の護衛に騎士が交代で赴く。俺も一度行ったが、ずいぶんとおとなしい少女のように見えた。というか、元気がないのではないか? ニックや団長の話を聞いて、ずいぶんたくましい女性を想像していたのだがな。あぁ、それからシスターは確かにダメだ。俺たちは接する時間はわずかだったが、聖女様への言動は呆れるしかないし、あんなにも人を馬鹿にした言動を嬉しそうに言う女など初めて見た。幸い、懲罰などはなかったが、皆怒りを抑えられず、護衛任務は複数人で交代で行うことにした。ニックはすごいな。俺なら、最初の懲罰を見た瞬間にシスターを殴っていた自信がある。しかしそんなことをしては、クビになるだけで聖女様の助けにはならなかっただろう。
すべての準備が終わり、俺とニックが明日は神殿に行くことになった。ニックは遠征前にお世話になった神殿に挨拶に来たという触れ込みだ。そしてトラブルが起きる寸前に神殿を出たと思わせるために俺がついていく。もう後は、明日に備えて休むだけなのだが、何故俺はニックのつむじを見つめているのだ。
「どうした、ニック。頼みとはなんだ?」
「その、ダリスというか、ダリスの奥様に聞きたいことがあってだな……」
なんでだ、俺の妻に何の用だ。そんな赤い顔で言われたら警戒するんだが。
「じょ、女性の好きな食べ物を売っている店を出来るだけたくさん教えてくれないだろうか……」
「お前、聖女様に差し入れでも持っていくのか?」
涙目で頷いているニックは、俺の知らない表情をしていた。そうか、ニックは聖女様が好きなんだな。なんとなくそんな気はしていたが、確信した。ニックと恋の話ができる日が来るとは思わなかった。いつも女性は寄ってくるが、適当に躱していて、口説き文句なんて言ってるのは聞いたことがない。それが本気で口説こうとするとこんなにも照れる姿を見せるのか。
「よし分かった! マリアに色々聞きに行こうぜ!」
マリアと結婚できたのも、ニックの根回しのおかげだからな。ニックは色んな奴の縁結びをしている割に、自分のことには無頓着だったし、寄ってくる女性も適当にあしらっていた。まさか買い物ひとつでここまで迷うとは面白い。
マリアに手伝ってもらい、人気の店を聞く。面白そうだから俺も買い物に付き合うことにしたのだが
「おぃニック、こんなに買っても食べきれんぞ!」
「どれが気に入るか分からないではないか! あ、あちらの店も女性が好きそうだ。つきあってくれ」
まさか、男二人で持ちきれんほど買うとは……。聖女様が喜んでくれるといいな、ニック。
2
お気に入りに追加
339
あなたにおすすめの小説

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

二度目の召喚なんて、聞いてません!
みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。
その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。
それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」
❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。
❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。
❋他視点の話があります。
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。
みゅー
恋愛
異世界へ転生していると気づいたアザレアは、このままだと自分が死んでしまう運命だと知った。
同時にチート能力に目覚めたアザレアは、自身の死を回避するために奮闘していた。するとなぜか自分に興味なさそうだった王太子殿下に溺愛され、聖女をざまぁし、チート能力で世界を救うことになり、国民に愛される存在となっていた。
そんなお話です。
以前書いたものを大幅改稿したものです。
フランツファンだった方、フランツフラグはへし折られています。申し訳ありません。
六十話程度あるので改稿しつつできれば一日二話ずつ投稿しようと思います。
また、他シリーズのサイデューム王国とは別次元のお話です。
丹家栞奈は『モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します』に出てくる人物と同一人物です。
写真の花はリアトリスです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる