聖女は世界を愛する

編端みどり

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31.作戦を立てろバカ者ども

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あああ! 真っ赤な顔で気絶しそうになってたところを抱きとめて貰ったよ! 顔ちっか! カッコいいぃ……。

わたしは、だいぶパニックなんですけど、ニックさんはなんでこんなに落ち着いてるんです?!

「あ、あのっ!」

『いい加減作戦を立てろバカ者共!』

やばっ! 神様がキレた!

「なっ! さっきからなんだこの声?!」

「え? ニックさんも神様の声聞こえるの?」

「これ神様の声なんですか?!」

「神様、なんでニックさんも聞こえるの?」

『我の声が聞こえるのは聖女の力で具現化した時か、聖女または我が加護を与えた者だけじゃ。今我が加護を与えておるのはアリサだけじゃから、ニックが聞こえるのは聖女、其方の力だろう?』

「いや、わたしなんにもしてないってば!」

してない……よね?
思い当たる事がないんだけど。

『其方、事あるごとにニックに話しかけておったではないか』

「え、わたしニックさんと話すの今が初めてだけど?」

「……いえ、聖女様はよくオレの頭の中に話しかけて下さいましたよね。今日も、幻影だから心配するなと」

「あ、あああ!!!」

『それじゃな、多分今ならニックが聖女に話しかける事も出来るのではないか?』

『聞こえます? 聖女サマ』

ききき、聞こえるぅ! これなら結界の中じゃなくてもおしゃべりできる?

『出来ますね、オレも嬉しいですよ?』

なんで嬉しいって分かったぁ!

『……もう良いから話を進めるぞ』

はいぃ……。

『ニックよ、我と聖女は神殿の所業に憂いておる』

「と、言いますと?」

『其方も見ただろう? 聖女が懲罰の名で虐げられるのを。アレは我の教えなどではない。我の名を使い人を虐げるのは我慢ならん。今までは、我の声を聞こえる者はおらなんだから、どうしようもなかったが、今は違う。聖女にまた我を呼んでもらい、我の言葉を伝えたいのだが、我も聖女もこの国の仕組みや、常識を知らん。我は聖女視点でしか世界が見れんうえに、聖女を辞めたら見ることは出来なくなる。聖女の期間は、ほぼ神殿から出ないじゃろ? だから、神殿の中、しかも聖女視点でしか分からん。魔法を覚えた途端、脱走する聖女など此奴くらいじゃ』

いいじゃん! おかげでアリサちゃんと会えたんだし!

「脱走……?」

『そうじゃ、此奴は魔法を使えるようになった途端、神殿を脱走しおったのじゃ』

「やはり脱走するくらいお辛かったですよね。お助け出来ず、申し訳ありません……やはり神殿は許せんな」

「大丈夫です! ニックさんが助けてくれなかったら逃げる元気もなかったんで!」

『ニック、責任を取って我らに協力せぃ』

「ちょ! 神様! なんて誘い方すんの?!」

「オレが出来る事は何でもしましょう。今までは神殿のルールもあって手を出せませんでしたが、神様が否定なさるのなら、遠慮はいりません。そろそろ我慢も限界でしたので」

『其方が物理的に動く前に我らの作戦に誘えて僥倖だったかのぅ』

「聖女様のためならどこまでも我慢する気ではおりましたが、神殿の懲罰、アレは拷問です。聖女様にあのような行為は許されません。最近は聖女様が幻影と言って下さったので我慢しましたが、幻影であっても許されない」

『では、我らの作戦へ協力を頼む。我への信仰は、どの程度なのじゃ?』

「定期的に聖女様が来られている事もあり、信仰心は高いと思いますよ」

「あ、そうなんだ」

「元聖女様のお力もありますし、市民は神に祈る事も日常です。神様が現れれば、大騒ぎでしょうね」

『其方はなかなか大胆な事を言うのぉ』

「ただ……聖女様が神様を降臨できるとなると、聖女様の自由がなくなる恐れがあります」

「ん? わたしもともと自由ないけど魔法で好き勝手にしてるよ? どうせ一生ここから出れないんでしょ?」

「いや、今までの聖女様は3年の任期でした」

「え?! たった3年?」

『しかも、聖女が力をつけんと我も下界を見れないからのぅ。たいていは、聖女から見る下界を数ヶ月しか見れなんだ』

「なんでわたしはこんなに早いのさ!」

『我が最初に其方の声を聞いて下界を見たら、ニックが聖女をそばで支えておったぞ』

「ああ! あの時か! って最初に祈ったときじゃん! なんでよ! 今までの聖女様って数ヶ月しか祈ってないわけ?」

「いや、たいていは1~3ヶ月ほどで祈り始める聖女様が多いです。もっとお時間がかかる方もいらっしゃいます。おそらくですが、聖女様が祈られても、最初は神に祈りが届かないのでしょう。言われてみると、聖女様の任期が終わる寸前になると、一気に魔物が減ります。その時には聖女様の結婚が決まっていることが多いので、聖女様の幸せに対する神の祝いではないかと言われておりましたが、単純に聖女様の祈りを神に届けるまでにそのくらいの期間が必要なのですね」

「え、聖女ってそんなすぐ結婚するの?」

「たいていは、すぐに貴族が目をつけて口説き始めますからね。でも、聖女様のご意思が最優先されますので嫌な相手と無理やり結婚させられることは決してありませんよ。ちなみに、護衛騎士と結婚した聖女様もおられますよ」

ひぇぇ、なんか意識しちゃう! そんなイケメンな顔でこっち向いて言わないで! こんな優しい人と結婚できる人はいいなぁ。でも、わたしには無理な話だよね。あのシスターは一生ここにいろって言ったんだから、今までは辞めれても今回は辞めさせるつもりがないのだろう。まぁ、今ここで話せるだけでも幸せだよね。

『其方の祈りは強かったからのぅ、我もこのような強い祈りで呼ばれたのは久しぶりじゃ』

「まぁ、そうね、お腹すいてたし、痛かったし、必死だったのは確かかも」

「本当に腹立たしいですね、神のご許可が頂けるなら、このような神殿はいますぐ潰しましょう」

「それはやめよう! クビになっちゃうよ!」

「そうですね、聖女サマとお話しできないのも困りますし」

う……なんかさっきからニックさんが積極的なんですけど。意識しちゃうじゃないさ!

『とにかく、神殿の外の様子を知りたい。ニック、いろいろ教えてくれ。実際見られればそれが一番なのだが、我の加護はニックにつけられん』

「やっぱり加護って100年に1回とかしか無理なの?」

『違う、ニックには其方の加護が異様に強くついておる。我の力で上書きするのは無理じゃ』

「へ? 加護?」

わたし、そんなことしましたっけ?
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