24 / 82
24.アリサのその後【団長視点】
しおりを挟む
神殿は、神様が降臨したと大騒ぎだ。ニックを護衛に残し、早急に神殿から出ろと追い出された。あんな指示が出れば当然か。アリサを連れて、家までゆっくり歩いていく事にする。最初は馬車がいいかと思ったんだが、わずかだがアリサは馬車を怖がっていたので徒歩にすることにした。
しかし、ニックがいきなり神殿に呼ばれた時は驚いたな。見廻りをした部下からも、早朝に橋の下でまぶしい光が目撃されたと報告が上がっていた。そのあと神殿の馬車が大量にいたとも聞いている。おそらくだが、聖女様が神殿を抜け出されてアリサを保護したのだろう。あの厳戒態勢の神殿からどうやって抜け出されたのかわからんが、あのような光を出せばすぐに神殿に見つかるからな。
神は、確実に聖女様の味方のようで良かった。あんなにも虐待を警戒なさるのは、神殿では問題があるとおっしゃっているのと同じだ。ニックを指名したのも、聖女様が唯一信用できる人物だからだな。良かったなニック、少なくとも聖女様の信頼は勝ち得ているようだぞ?
「名前はアリサで良かったな?」
「はい!」
急に自分の立場が変われば、怯えたりするものだがずいぶんしっかりしているな。
「今後は私がアリサの親代わりだ。色々最初は戸惑うだろうが、よろしく頼む」
「はい! よろしくお願いします!」
「ずいぶんしっかりしているな」
「シスターの言う事聞けばご飯貰えるって! シスターは、団長さんについていけって言われたのでこれでご飯貰えるから、大丈夫! あ、ごめんなさい! 敬語使えって言われてたのに! 申し訳ありません! ちゃんと言う事聞くからご飯ください!」
あのシスターは、こんな小さな子に何を言ったんだ。シスターは随分異常な思考をしている。先ほどもニックが殺気を出していたが、あの状態で泣かれている聖女様を見て、何故神に会って感動しているなどと言えるのだ。明らかに違うだろう! あれは感動の涙ではない。初対面の俺でも分かるというのに。まさか、得意げに自分の手柄のように喜ぶとは……ニックの殺気にも驚いたが、神がフォローしてくださって良かった。神よ、ありがとうございます。
今後のことを考えるとニックは少し感情を抑える訓練がいるな。あの様子なら気に入らない人物はすぐに排除しそうな気配を感じる。今ニックも排除されてはおそらく聖女様が持たない。うまく隠されているが、ニックを信頼されているご様子だからな。元々ニックは、そんなに感情を表に出すやつではなかったんだが、これも聖女様の影響か。
「食事は毎食必ず食べられる。大人になれば、自分でもどうにか出来るようになるし、そのやり方も全て教えてやる。だから、食事目当てに人の言う事を聞いたりしなくていい」
アリサはキョトンとしている。まぁ、おいおい伝えていくとしよう。
「ご飯貰えればなんでも大丈夫です! それに、聖女様はわたしが団長さんと一緒にいくって決まったらとっても嬉しそうでした! だから、きっと大丈夫です」
よく見ているな。おそらく今回の事は聖女様の願いだったのだろう。神様が、ひとりの子どもを助けろなど、ありえなくはないがあまり考えにくい。
神殿は、何としてもアリサを確保したかっただろうが、神様の指示には逆らえまい。しかし、万が一もあるからな。我が家の隠密部隊の手を借りるか。
「聖女様は、お優しかったか」
「はい! わたしご飯なくて、お腹すいて泣いてたんです。そしたら聖女様が来てくれて、ご飯はないけどって、魔法をかけてくれたんです! そしたら、お腹すいて苦しいのなくなって、それからわたしを抱きしめてくれたの!」
ご自分が苦しんでおられるのに、まさに聖女様だな。ニックは食事を心配していたが魔法でどうにかしていたのだな。今回のことで神殿も聖女様をないがしろにはしなくなるだろうから、まともな食事にありつけると良いが。他にも気になることはあるが、ずいぶん晴れやかなお顔をされていた。だが、結局アリサに声をおかけにはならなかったな。ずいぶん気にされているご様子だったが、会話をしないようにシスターが指示しているとニックも言っていたし、状況は芳しくないのかもしれん。国王様にご報告しないわけにはいかないが、こうなってくるとますます聖女様は神殿から離れられなくなるだろうな。どうにか、あのシスターを引き離したいが、神殿長様のお子で権力もあるからな……。なにか表ざたになる大きな失態でもあればいいのだが聖女様の名声が高まればシスターコリンナの地位も上がるからますます難しくなる。
聖女様の扱いは大罪だが、神殿の権力でもみ消されてしまうだろう。ニックの証言だけでは弱い。聖女様ご本人が告発なされば良いのだろうが、あのご様子だと難しそうだ。下手に逆らうと、さらにひどいことになる可能性もあるし、現状は、様子を見て聖女様の扱いが良くなることを期待するしかないだろう。神殿の内部は、うちの隠密部隊も手を出せん。神殿独自の結界魔法は汎用性が高く、厄介なのだ。
「アリサはどこにいたのだ?」
「あ、あそこです! あの橋の下!」
路上で生活していたのか。どうりでたくましいはずだ。
「アリサのことを教えてくれ。いままでのことも、これからのことも。やりたいことも、すべてとはいかないができるだけかなえられるようにするから。言葉も敬語でなくていい。その辺は生活に慣れてから教えるから、今は話しやすい言葉で話してくれ」
「本当?」
「ああ、本当だ」
「じゃぁね、お願いあるの。動かなくなったお母さん、そのままなの。お母さん、寒いと思うの。助けてあげて?」
いかん、涙が出そうだ。しかし、こんなところで泣いている場合ではない。
「そうか、じゃあお母さんのところに連れて行ってくれるかい?」
「うん!」
その後、パトロール中だった団員を数人呼んで、アリサの母を弔った。団員にもいずれ説明したいが外では話せんから、聖女様がアリサを保護した事だけは言っておく。アリサの加護だけ秘密にすればいい。アリサも、加護の事を言う様子はない。おそらくシスターに言い含められたのだろう。素直すぎるのが気がかりだ、あとでシスターに何を言われたのか、全部確認してやる。口止めしてることがあるのではないだろうか? アリサの話を聞いたダリスは号泣していた。変わらんな、あいつは。
「これなら、お母さん寒くないね!」
うれしそうなアリサを見て、改めてこの子を守っていこうと誓う。
しかし、ニックがいきなり神殿に呼ばれた時は驚いたな。見廻りをした部下からも、早朝に橋の下でまぶしい光が目撃されたと報告が上がっていた。そのあと神殿の馬車が大量にいたとも聞いている。おそらくだが、聖女様が神殿を抜け出されてアリサを保護したのだろう。あの厳戒態勢の神殿からどうやって抜け出されたのかわからんが、あのような光を出せばすぐに神殿に見つかるからな。
神は、確実に聖女様の味方のようで良かった。あんなにも虐待を警戒なさるのは、神殿では問題があるとおっしゃっているのと同じだ。ニックを指名したのも、聖女様が唯一信用できる人物だからだな。良かったなニック、少なくとも聖女様の信頼は勝ち得ているようだぞ?
「名前はアリサで良かったな?」
「はい!」
急に自分の立場が変われば、怯えたりするものだがずいぶんしっかりしているな。
「今後は私がアリサの親代わりだ。色々最初は戸惑うだろうが、よろしく頼む」
「はい! よろしくお願いします!」
「ずいぶんしっかりしているな」
「シスターの言う事聞けばご飯貰えるって! シスターは、団長さんについていけって言われたのでこれでご飯貰えるから、大丈夫! あ、ごめんなさい! 敬語使えって言われてたのに! 申し訳ありません! ちゃんと言う事聞くからご飯ください!」
あのシスターは、こんな小さな子に何を言ったんだ。シスターは随分異常な思考をしている。先ほどもニックが殺気を出していたが、あの状態で泣かれている聖女様を見て、何故神に会って感動しているなどと言えるのだ。明らかに違うだろう! あれは感動の涙ではない。初対面の俺でも分かるというのに。まさか、得意げに自分の手柄のように喜ぶとは……ニックの殺気にも驚いたが、神がフォローしてくださって良かった。神よ、ありがとうございます。
今後のことを考えるとニックは少し感情を抑える訓練がいるな。あの様子なら気に入らない人物はすぐに排除しそうな気配を感じる。今ニックも排除されてはおそらく聖女様が持たない。うまく隠されているが、ニックを信頼されているご様子だからな。元々ニックは、そんなに感情を表に出すやつではなかったんだが、これも聖女様の影響か。
「食事は毎食必ず食べられる。大人になれば、自分でもどうにか出来るようになるし、そのやり方も全て教えてやる。だから、食事目当てに人の言う事を聞いたりしなくていい」
アリサはキョトンとしている。まぁ、おいおい伝えていくとしよう。
「ご飯貰えればなんでも大丈夫です! それに、聖女様はわたしが団長さんと一緒にいくって決まったらとっても嬉しそうでした! だから、きっと大丈夫です」
よく見ているな。おそらく今回の事は聖女様の願いだったのだろう。神様が、ひとりの子どもを助けろなど、ありえなくはないがあまり考えにくい。
神殿は、何としてもアリサを確保したかっただろうが、神様の指示には逆らえまい。しかし、万が一もあるからな。我が家の隠密部隊の手を借りるか。
「聖女様は、お優しかったか」
「はい! わたしご飯なくて、お腹すいて泣いてたんです。そしたら聖女様が来てくれて、ご飯はないけどって、魔法をかけてくれたんです! そしたら、お腹すいて苦しいのなくなって、それからわたしを抱きしめてくれたの!」
ご自分が苦しんでおられるのに、まさに聖女様だな。ニックは食事を心配していたが魔法でどうにかしていたのだな。今回のことで神殿も聖女様をないがしろにはしなくなるだろうから、まともな食事にありつけると良いが。他にも気になることはあるが、ずいぶん晴れやかなお顔をされていた。だが、結局アリサに声をおかけにはならなかったな。ずいぶん気にされているご様子だったが、会話をしないようにシスターが指示しているとニックも言っていたし、状況は芳しくないのかもしれん。国王様にご報告しないわけにはいかないが、こうなってくるとますます聖女様は神殿から離れられなくなるだろうな。どうにか、あのシスターを引き離したいが、神殿長様のお子で権力もあるからな……。なにか表ざたになる大きな失態でもあればいいのだが聖女様の名声が高まればシスターコリンナの地位も上がるからますます難しくなる。
聖女様の扱いは大罪だが、神殿の権力でもみ消されてしまうだろう。ニックの証言だけでは弱い。聖女様ご本人が告発なされば良いのだろうが、あのご様子だと難しそうだ。下手に逆らうと、さらにひどいことになる可能性もあるし、現状は、様子を見て聖女様の扱いが良くなることを期待するしかないだろう。神殿の内部は、うちの隠密部隊も手を出せん。神殿独自の結界魔法は汎用性が高く、厄介なのだ。
「アリサはどこにいたのだ?」
「あ、あそこです! あの橋の下!」
路上で生活していたのか。どうりでたくましいはずだ。
「アリサのことを教えてくれ。いままでのことも、これからのことも。やりたいことも、すべてとはいかないができるだけかなえられるようにするから。言葉も敬語でなくていい。その辺は生活に慣れてから教えるから、今は話しやすい言葉で話してくれ」
「本当?」
「ああ、本当だ」
「じゃぁね、お願いあるの。動かなくなったお母さん、そのままなの。お母さん、寒いと思うの。助けてあげて?」
いかん、涙が出そうだ。しかし、こんなところで泣いている場合ではない。
「そうか、じゃあお母さんのところに連れて行ってくれるかい?」
「うん!」
その後、パトロール中だった団員を数人呼んで、アリサの母を弔った。団員にもいずれ説明したいが外では話せんから、聖女様がアリサを保護した事だけは言っておく。アリサの加護だけ秘密にすればいい。アリサも、加護の事を言う様子はない。おそらくシスターに言い含められたのだろう。素直すぎるのが気がかりだ、あとでシスターに何を言われたのか、全部確認してやる。口止めしてることがあるのではないだろうか? アリサの話を聞いたダリスは号泣していた。変わらんな、あいつは。
「これなら、お母さん寒くないね!」
うれしそうなアリサを見て、改めてこの子を守っていこうと誓う。
1
お気に入りに追加
339
あなたにおすすめの小説

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑
岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。
もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。
本編終了しました。
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

二度目の召喚なんて、聞いてません!
みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。
その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。
それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」
❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。
❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。
❋他視点の話があります。
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。
みゅー
恋愛
異世界へ転生していると気づいたアザレアは、このままだと自分が死んでしまう運命だと知った。
同時にチート能力に目覚めたアザレアは、自身の死を回避するために奮闘していた。するとなぜか自分に興味なさそうだった王太子殿下に溺愛され、聖女をざまぁし、チート能力で世界を救うことになり、国民に愛される存在となっていた。
そんなお話です。
以前書いたものを大幅改稿したものです。
フランツファンだった方、フランツフラグはへし折られています。申し訳ありません。
六十話程度あるので改稿しつつできれば一日二話ずつ投稿しようと思います。
また、他シリーズのサイデューム王国とは別次元のお話です。
丹家栞奈は『モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します』に出てくる人物と同一人物です。
写真の花はリアトリスです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて
nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる