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22.アリサは誰が育てるの?
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「緊急の要件との事で参上致しました」
あのあと大騒ぎだったけど、神様の言葉に逆らえない神殿の方々は、ニックさんをダッシュで大聖堂に呼んだ。
「ニック、この子を預けたい」
神様! いきなりすぎます。もうちょっと説明してあげてください。具体的には、あなたが誰かをまず教えてあげて。
『む、すまん』
わざわざ謝ってくれるなんて、さすが神様、寛大です。
『そうだろう、そうだろう』
なんか、神様との会話が楽しくなってきた。そっか、わたしおしゃべりするのも久しぶりだ。ありがとう神様! って、神様ご機嫌な様子で笑ってますね! んで、神殿のみんなはビビってますけど?! 笑顔が怖いの!? そんなのあのシスターだけでいいよ!
「我は神だ。そこな聖女の力により具現化しておる。我が指示をし、子どもを聖女が保護した。神殿関係者以外で其方が信頼できそうだったのでな、この子の養育は可能か?」
「申し訳ありません。うちには年老いた母がおりますが、病に伏せっております。私も騎士団の任務があり、とても幼い子を育てられる環境では……」
「其方は、妻や恋人はおらぬのか?」
「私は独り身でございます。恋人などもおりません」
神様! 何聞いてんの!!!
『良かったのぉ、恋人も居らぬようだぞ』
ああもう、余計な事聞かないでよっ!
『しかし、この流れなら聞いてもさほど違和感はあるまい』
まぁそうね、お兄さん改めニックさんは、恋人は居ない。と。いや、それわたしが聞いてどーするよ。どうせ一生ここに居なきゃなのに。
……? 神様顔顰めてどーしました?
「では、其方が最も信頼でき、養育が可能と思われる者は誰じゃ?」
「我が騎士団の団長であるフィル・ポール・マーシャル様でございます。」
「ふむ、公爵家ならば金銭は問題ないな。その家は、虐待などはあり得るか?」
うぉい! 神様、なんちゅー聞き方すんですかぁ! ほらぁ、ニックさんが固まってるじゃん!
『しかしのぉ、其方の願いであろう?』
そうね、そうですね、ありがとう神様! でももうちょいデリカシーってのが欲しかったよっ!
「団長以外の公爵家の方は私は存じません。ですが、団長は鍛錬では厳しいですが、虐待などと言う非道な事をなさる方では決してごさいません。ましてや、何も分からない子どもに理不尽な暴力を与えるなど、団長のいちばん嫌う所業です。団長は決してそのような事はなさらないでしょう」
ほらぁ! 信頼してる団長さんのこと疑うから怒ってんじゃん!
『いや、アレはそういった意味の怒りではないぞ』
焦った神様の声がするけど、ジト目で神様を見つめてやる。
「ふむ、ではその団長を呼べ。外におるであろう?」
逃げるように話題を変える神様をもっかいジト目で見てやる。わたしの表情は位置的に神様しか見えないから多少表情変わっても大丈夫。ラスボスは土下座中だし。お、すぐに団長さんと思われる人が来た。ナイスミドルだ!
『なんじゃ? 其方は団長の方が好みかの?』
いや、団長さんもカッコ良いけどわたしはどちらかと言うと……って、何言わすんじゃあ! 神様!
とにかく、いきなり神殿が呼び出すからなんかあったのかとニックさんを心配して上司の団長もついてきた感じかな?
『まぁ、近い』
そっか、部下の事心配してついてくるなんて、素敵な上司だね。神様? なぜジト目でわたしを見るのよ?
『其方は、愛に気がつかないのぉ』
愛? 恋人いない歴が年齢のわたしにそれ言いますぅ? 神様は、わたしを無視してサッサと話を進めだした。
「フィル・ポール・マーシャルで間違いないか?」
「はっ」
「我は、そこな聖女の力で具現化しておる。だが、そろそろ時間がない。手短に聞く、ここにいる子どもを成人まで養育する事は可能か?」
「可能でごさいます」
「公爵家ならば、金銭的には問題ないだろうが、虐待などあっては困るぞ?」
「もちろんにございます。私も目を光らせますが、我が家は皆、使用人も含めて虐待のような卑怯な事が大嫌いでごさいます。使用人にも、厳しく禁じておりますし、恥ずべき事として教えております。家庭教師なども、隠れて虐待などができぬよう、きっちりチェックを行っております。以前、教育と称して虐待をする教師がおりましたが、初回で発覚し、虐待を行う前に出入り禁止としました」
「ほぅ、どうやってわかったのだ?」
「それは、とても長くなりますがよろしいですか?」
「いや、安全ならば問題ない」
「大人になる為にさまざまな事を学ぶ中で、厳しい指導をする事もあるでしょう。ですが、虐待などと言う意味のない事は我が家にいる限り起こさせません。ましてや、神様に託されたお子にそのような事、私の命にかけてないと誓いましょう」
「ふむ、では其方にこの子を任せる。名はアリサだ。肉親はもうおらぬ。また、我の守護を受けているが、それが知られると通常の暮らしは送れぬであろう。そのため、秘匿する事を命じる。其方の信頼できる者には言っても構わんが、人は選べよ」
「かしこまりました。謹んでお受けいたします」
「では、すぐにこの子を連れて神殿を出よ。我はアリサに外の世界を見て欲しいのじゃ」
「神殿の者も、もうアリサに構うでないぞ。我はいつでもアリサから世界を覗けるのだからな。それからシスターコリンナ」
「は、はいっ!」
「もうしゃべって良いぞ。今後は時間も構わず、聖女を通して我の言葉を伝える事もあろう。其方がいちばん聖女の近くにおるからな。何かあればすぐに神殿長などに連絡せよ。ただし、今回のように秘匿して頼みごとをする事もあるからの。其方に全てを伝わらなかったとしても、浅慮な事はせぬようにな」
シスターは、かしこまりました! お声かけ頂けるなんて光栄です! って泣いてます。浅慮な事するなって言ってもらえたら、ちょっとは鞭とか減るかな。いやコレ、神様に声かけてもらえたって喜んでて、気がついてないパターンもあるな。まぁ、前よりマシになるかな? 幻影で神様作るのアリかな、ナシかな。
『普通はナシじゃが、あのシスターに対してだけなら、緊急時に限りアリじゃ。多用してバレたらそれこそ殺されかねんから、慎重にの』
いぇい! ありがと神様っ!
あのあと大騒ぎだったけど、神様の言葉に逆らえない神殿の方々は、ニックさんをダッシュで大聖堂に呼んだ。
「ニック、この子を預けたい」
神様! いきなりすぎます。もうちょっと説明してあげてください。具体的には、あなたが誰かをまず教えてあげて。
『む、すまん』
わざわざ謝ってくれるなんて、さすが神様、寛大です。
『そうだろう、そうだろう』
なんか、神様との会話が楽しくなってきた。そっか、わたしおしゃべりするのも久しぶりだ。ありがとう神様! って、神様ご機嫌な様子で笑ってますね! んで、神殿のみんなはビビってますけど?! 笑顔が怖いの!? そんなのあのシスターだけでいいよ!
「我は神だ。そこな聖女の力により具現化しておる。我が指示をし、子どもを聖女が保護した。神殿関係者以外で其方が信頼できそうだったのでな、この子の養育は可能か?」
「申し訳ありません。うちには年老いた母がおりますが、病に伏せっております。私も騎士団の任務があり、とても幼い子を育てられる環境では……」
「其方は、妻や恋人はおらぬのか?」
「私は独り身でございます。恋人などもおりません」
神様! 何聞いてんの!!!
『良かったのぉ、恋人も居らぬようだぞ』
ああもう、余計な事聞かないでよっ!
『しかし、この流れなら聞いてもさほど違和感はあるまい』
まぁそうね、お兄さん改めニックさんは、恋人は居ない。と。いや、それわたしが聞いてどーするよ。どうせ一生ここに居なきゃなのに。
……? 神様顔顰めてどーしました?
「では、其方が最も信頼でき、養育が可能と思われる者は誰じゃ?」
「我が騎士団の団長であるフィル・ポール・マーシャル様でございます。」
「ふむ、公爵家ならば金銭は問題ないな。その家は、虐待などはあり得るか?」
うぉい! 神様、なんちゅー聞き方すんですかぁ! ほらぁ、ニックさんが固まってるじゃん!
『しかしのぉ、其方の願いであろう?』
そうね、そうですね、ありがとう神様! でももうちょいデリカシーってのが欲しかったよっ!
「団長以外の公爵家の方は私は存じません。ですが、団長は鍛錬では厳しいですが、虐待などと言う非道な事をなさる方では決してごさいません。ましてや、何も分からない子どもに理不尽な暴力を与えるなど、団長のいちばん嫌う所業です。団長は決してそのような事はなさらないでしょう」
ほらぁ! 信頼してる団長さんのこと疑うから怒ってんじゃん!
『いや、アレはそういった意味の怒りではないぞ』
焦った神様の声がするけど、ジト目で神様を見つめてやる。
「ふむ、ではその団長を呼べ。外におるであろう?」
逃げるように話題を変える神様をもっかいジト目で見てやる。わたしの表情は位置的に神様しか見えないから多少表情変わっても大丈夫。ラスボスは土下座中だし。お、すぐに団長さんと思われる人が来た。ナイスミドルだ!
『なんじゃ? 其方は団長の方が好みかの?』
いや、団長さんもカッコ良いけどわたしはどちらかと言うと……って、何言わすんじゃあ! 神様!
とにかく、いきなり神殿が呼び出すからなんかあったのかとニックさんを心配して上司の団長もついてきた感じかな?
『まぁ、近い』
そっか、部下の事心配してついてくるなんて、素敵な上司だね。神様? なぜジト目でわたしを見るのよ?
『其方は、愛に気がつかないのぉ』
愛? 恋人いない歴が年齢のわたしにそれ言いますぅ? 神様は、わたしを無視してサッサと話を進めだした。
「フィル・ポール・マーシャルで間違いないか?」
「はっ」
「我は、そこな聖女の力で具現化しておる。だが、そろそろ時間がない。手短に聞く、ここにいる子どもを成人まで養育する事は可能か?」
「可能でごさいます」
「公爵家ならば、金銭的には問題ないだろうが、虐待などあっては困るぞ?」
「もちろんにございます。私も目を光らせますが、我が家は皆、使用人も含めて虐待のような卑怯な事が大嫌いでごさいます。使用人にも、厳しく禁じておりますし、恥ずべき事として教えております。家庭教師なども、隠れて虐待などができぬよう、きっちりチェックを行っております。以前、教育と称して虐待をする教師がおりましたが、初回で発覚し、虐待を行う前に出入り禁止としました」
「ほぅ、どうやってわかったのだ?」
「それは、とても長くなりますがよろしいですか?」
「いや、安全ならば問題ない」
「大人になる為にさまざまな事を学ぶ中で、厳しい指導をする事もあるでしょう。ですが、虐待などと言う意味のない事は我が家にいる限り起こさせません。ましてや、神様に託されたお子にそのような事、私の命にかけてないと誓いましょう」
「ふむ、では其方にこの子を任せる。名はアリサだ。肉親はもうおらぬ。また、我の守護を受けているが、それが知られると通常の暮らしは送れぬであろう。そのため、秘匿する事を命じる。其方の信頼できる者には言っても構わんが、人は選べよ」
「かしこまりました。謹んでお受けいたします」
「では、すぐにこの子を連れて神殿を出よ。我はアリサに外の世界を見て欲しいのじゃ」
「神殿の者も、もうアリサに構うでないぞ。我はいつでもアリサから世界を覗けるのだからな。それからシスターコリンナ」
「は、はいっ!」
「もうしゃべって良いぞ。今後は時間も構わず、聖女を通して我の言葉を伝える事もあろう。其方がいちばん聖女の近くにおるからな。何かあればすぐに神殿長などに連絡せよ。ただし、今回のように秘匿して頼みごとをする事もあるからの。其方に全てを伝わらなかったとしても、浅慮な事はせぬようにな」
シスターは、かしこまりました! お声かけ頂けるなんて光栄です! って泣いてます。浅慮な事するなって言ってもらえたら、ちょっとは鞭とか減るかな。いやコレ、神様に声かけてもらえたって喜んでて、気がついてないパターンもあるな。まぁ、前よりマシになるかな? 幻影で神様作るのアリかな、ナシかな。
『普通はナシじゃが、あのシスターに対してだけなら、緊急時に限りアリじゃ。多用してバレたらそれこそ殺されかねんから、慎重にの』
いぇい! ありがと神様っ!
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