聖女は世界を愛する

編端みどり

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21.わたしの望み

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『あの子を、安全に大人になれる環境へ。虐待など絶対にありえない、しあわせな家庭で生涯過ごさせて下さい』

『あい、わかった。だがそうなれは其方はあのシスターから逃げられないぞ』

『わたしは、神様が魔法の使い方を教えてくれたから、うまくやります』

『そうか』

『あ、でもあのお兄さんの名前も分かんないです! それに、わたしが信用してるのはシスターだけって事にしないといけないの!』

『そこは、うまくやってやろう。だから、今回のことを見て、其方はこれからうまくやれるようにしてみよ。我が降臨した事で、うまくやれば其方の立場はかなり良くなる筈だ。そして、できるなら助けてやってほしい』

誰を?! 誰を助けるの神様っ!

「おお! 神がお話になられるぞ!!!」

「聖女は、わたしの指示を見事に果たした。そこな子ども、名をなんという?」

「は、早く神に名をお答えなさいっ!!!」

「シスターコリンナ、其方には聞いておらぬ。黙れ」

うわ、すっごい威厳、で、シスターコリンナの泣き声がするんですけど?!

「申し訳ありません、申し訳ありません」

「もうよい、其方は我が許可するまで、口を開くな」

え?! 神様すげぇ!!! あのラスボスが黙った! 嘘でしょ! すごすぎる!!!

コレか! コレが神様がうまくやれっての。神様のお告げって言ってもシスターはニコニコ鞭振るってたから、そんな効果あるなんて思わなかった。

「聖女の力を疑う者も居たようだが、今回の聖女は我を降臨させる力を持ち、我と会話ができる。今後は聖女が、我の言葉を代弁するであろう。聖女が、我の言葉として伝えた事は、我の言葉と心得よ」

「ははぁ!!!」

うっわ、なんかみんな土下座してる感じ? 目を開けたい、見たいー!

「聖女よ、目を開けよ」

あ、神様が言うなら開けて良いよね。ってうっそぉ!!! 全員、土下座ポーズですけど! シスターコリンナなんて、泣きながら土下座して、ずーっと謝ってますけど?! あー、性格悪いとは思うけど、ちょっとだけ、ざまぁみろ。

「さて、そこな子ども、聖女の側に行け」

女の子は、シスターコリンナの横で頭を下げていたが、顔を上げてわたしの側に来た。わたしは思わず抱きしめる。

「聖女よ、我のお告げ通り誰にも言わず、内密に保護した事を褒めて遣わす」

「ありがとうございます、神様」

神様ありがとう! 内密なのが神様の指示って事にしてもらえた!

「我は怒っておる。聖女の話を聞かぬ者が多い事を」

『少しだけ、サービスしてやろう』

「も、申し訳ございません!!!」

神様の威厳に耐えかねてシスターコリンナが、謝罪する。

「話すな、と申した筈だがな」

あ、シスターが気絶した。なんか周り冷や汗なんか分からんけどびちゃびちゃですけども?! とりあえず浄化と、癒しを見えるように飛ばす。起きてよ。アンタだってわたしを起こしたでしょ?

起きたシスターコリンナは、わたしを睨みつけてから、黙って土下座を続けている。怖いけど、神様のおかげでいつもより怖くないかも。

「さて、そこな子ども、名は答えられるか?」

「は、はい、わたしは、アリサといいます」

アリサ、か。

「アリサよ、其方の今後についてだが、親はおらぬのだな? どこか、信頼できる大人はいるか?」

「いないです。お母さんとふたりでしたし、お母さんは、もう……」

ああ! アリサちゃん泣き出したじゃないですか! 神様ならもうちょい気を遣え!

『すまん、だが神殿の者に大々的に伝える必要があるのでな。許せ』

なら仕方ないのか。アリサちゃんに、浄化や、癒し、安心魔法をかけまくると少し落ち着いたようだった。

「アリサよ、其方は神殿ではなく、外の世界を見よ」

シスターが、顔を上げて何かを言おうとしているが、さすがに神様から2回注意を貰ってるので、黙っている。神様に何も言えないからってわたし睨むのやめてよね。

「我は聖女を介して其方たちを見ている」

あ、シスターが真っ青ですけど? ふっ、ざまぁ!

「よって、聖女の護衛をしていたニックは信頼できると判断した。他は聖女についてるのはシスターコリンナだけであろう? この子は神殿の外に出したいのだ。我の言葉に反論のある者は今この場で申し出よ」

誰も喋らない。

「神殿長、今ここに神殿関係者は揃っておるか?」

「は、ははぁ!!」

神殿長、土下座。

「質問に答えよ」

「ぜ、全員はおりませぬ!」

「では、外におる神殿関係者を今ここに集める。なに、我の質問に答えたらすぐに戻してやる」

そしたら、なんか空中にいっぱい人きましたけど! みんな、固まってるじゃん!

「これで、全員そろったな。では改めて聞こう。この子を神殿の外に出す事に反対の者はおるか?」

いやいやいや、こんなんやられて答えられるか! でも、もっとやれ、神様。

「神殿長、誰も何も言わぬ。この子は神殿の外へ出す。決定事項だ。よいな」

「は、はい! もちろんでごさいますっ!」

空に浮かぶ人々が、消えた。

「アリサの処遇が決まり次第、神殿から出せ。その間、丁重に扱え。また、神殿から出た瞬間から、神殿関係者が会う事も、接触する事も許さない。神殿以外の者を介して行う事も許さん。アリサ、こちらへ」

「は、はいっ!」

神様がアリサの額に手を触れると、不思議なマークが浮かび、消えた。

「アリサには我の加護がついた。アリサに関わろうとした者は我に筒抜けになる事を心得よ」

「は、ははあああああ!!!」

うっわ、全員土下座してるよ!

「では、ニックを呼べ。アリサの処遇が決まるまで我はここにおる」

ありがとう神様! 思ったより大事になったけど、これでアリサちゃんは大丈夫! ついでにお兄さんの名前分かってラッキー!
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