聖女は世界を愛する

編端みどり

文字の大きさ
上 下
2 / 82

2.誘拐犯の主張

しおりを挟む
気絶から目覚めたら、あの鞭女がいた。

「おはようございます。聖女様。お祈りのお時間です。お支度を」

身体が痛すぎて、動けない。

「いや、身体動かないんですけど」

「まあ! なんて軟弱なのでしょう! やはり聖女召喚を誘拐などと言うから、神の怒りですわ!」

話聞かないなぁこの人。

「仕方ありません、神殿長様も今日だけは懲罰するなと仰せですし、今日だけは特別に休暇といたしましょう。当然ですが、お祈りをなさらないのでしたら食事はありませんわ」

おいおい、何だこの狂った主張。
しかも、全く悪びれもなく言ってるし。
え、なんなの?! わたしヤバい奴らに誘拐されちゃったの?! あんだけ鞭打たれても誰も助けてくれなかったし。
でも、このままじゃ何も分からないままだ。迂闊な事言うと、この鞭女からまた暴力受けそうだし、とにかく冷静になって情報を集めよう。

「すいません、さっきは動揺してて失礼な事を言いました。とにかく、あなたのことと、わたしの立場を教えていただけますか? あと、ここどこですか?」

「まぁ! さすが聖女様ですわ! ご理解がお早いのね!」

おいおい、急に機嫌が良くなったぞ。
この人はあれだ、自分の思う通りにいってたら、ご機嫌なんだね。つまり、この人には敬語が必須と。……なんで誘拐犯アンド暴行犯に媚び売らなきゃいけないのよ。でも、ひとまず情報収集と思ってやるしかない。居酒屋の酔っ払いと思って対応すれば、腹も立たないだろう。いや、立つな。めっちゃ立つな。

「ここは、ロチァ聖王国。聖女様は、魔物というのはご存知?」

「現実には見たことがありませんが、物語などで聞いたことがあります」

「まぁ! 魔物をみたこともないなんて! ずいぶんと甘やかされて育てられたんですのね」

「は?!」

チェンジ! チェンジを要求します!!! なんなのこの人! 説明っていうのは、相手が知らない事を前提として話すのよ?
いきなり今日来た新人に、本日のおすすめまで含めた全メニュー覚えてないって怒鳴る店長がいる?! いないでしょ! 話す気あんの?

「バシッ」

鞭女が、地面に鞭をうった。

「今日は、神殿長様のご指示なのでやりませんが、そのような乱暴な言葉遣いをなさるなら、明日は懲罰ですわね」

へ?! また鞭?! イヤですけど!!!

「ですけど、わたしの国では魔物なんてお話の中だけの存在です!」

「また、口答えですか!!! 神殿長様がお許しになっても、神はお許しになりませんわ!!!」

「バシッ!!!」

「痛い! 痛い!」

鞭の痛みになんて慣れてないから、痛くて仕方ない。痛すぎて、頭が回らない。

薄れゆく意識の中、私はこれからどうなるのだろと不安ばかりが募った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

二度目の召喚なんて、聞いてません!

みん
恋愛
私─神咲志乃は4年前の夏、たまたま学校の図書室に居た3人と共に異世界へと召喚されてしまった。 その異世界で淡い恋をした。それでも、志乃は義務を果たすと居残ると言う他の3人とは別れ、1人日本へと還った。 それから4年が経ったある日。何故かまた、異世界へと召喚されてしまう。「何で!?」 ❋相変わらずのゆるふわ設定と、メンタルは豆腐並みなので、軽い気持ちで読んでいただけると助かります。 ❋気を付けてはいますが、誤字が多いかもしれません。 ❋他視点の話があります。

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

死んでるはずの私が溺愛され、いつの間にか救国して、聖女をざまぁしてました。

みゅー
恋愛
異世界へ転生していると気づいたアザレアは、このままだと自分が死んでしまう運命だと知った。 同時にチート能力に目覚めたアザレアは、自身の死を回避するために奮闘していた。するとなぜか自分に興味なさそうだった王太子殿下に溺愛され、聖女をざまぁし、チート能力で世界を救うことになり、国民に愛される存在となっていた。 そんなお話です。 以前書いたものを大幅改稿したものです。 フランツファンだった方、フランツフラグはへし折られています。申し訳ありません。 六十話程度あるので改稿しつつできれば一日二話ずつ投稿しようと思います。 また、他シリーズのサイデューム王国とは別次元のお話です。 丹家栞奈は『モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します』に出てくる人物と同一人物です。 写真の花はリアトリスです。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

今更困りますわね、廃妃の私に戻ってきて欲しいだなんて

nanahi
恋愛
陰謀により廃妃となったカーラ。最愛の王と会えないまま、ランダム転送により異世界【日本国】へ流罪となる。ところがある日、元の世界から迎えの使者がやって来た。盾の神獣の加護を受けるカーラがいなくなったことで、王国の守りの力が弱まり、凶悪モンスターが大繁殖。王国を救うため、カーラに戻ってきてほしいと言うのだ。カーラは日本の便利グッズを手にチート能力でモンスターと戦うのだが…

処理中です...