悪役令嬢とヒロインは手を組みました

編端みどり

文字の大きさ
上 下
25 / 47

二十五話

しおりを挟む
「え、えええっ……?! なんで?!」

「なんでって……アイザックはロザリーを愛してるし、わたくしには物凄く冷たいもの。ね、ロザリーに冷たい事言ったりしてない?」

「ない。いつも優しいわ」

「良かった! 貴女には優しかったのね。ねぇ、ロザリーはアイザックが好き? ゲームと違って、彼は誰にでも優しい王子様じゃないわよ」

「……好き。前世でも一番好きだった。今でも好き。確かに、ゲームとは違うのは薄々分かってた。でも、あたしは今のアイザックが好きなの」

「王妃になる覚悟はある?」

「アイザックとオリヴィアが許してくれるなら、頑張りたい。けど、王妃はオリヴィアじゃないと無理だってみんな言ってる。あたしはせいぜい妾だって。この国は一夫一妻だから、妾なんてなったら日陰の身で外には出して貰えない。可哀想に。でも、男爵令嬢なら大出世ねって」

「……へぇ、そんな事言った貴族が居るのね。言ってきた人達の顔と名前、分かる?」

「分かるよ。名乗らなかったけど腹が立ったから調べた。これ、リストにしてあるわ」

名前は、会話をこっそり聞き取ったのだそうだ。一部間違っていたが概ね実在する人物だから間違いないだろう。ロザリーが描いたと思われる美しい似顔絵も付いていた。

リリア様の一派だわ。わたくしの次に身分が高く歴史のある伯爵令嬢。彼女は王妃になりたがってた。でも、古代語が全く習得出来なくて候補から外されたのよね。

だから、スラスラと古代語を操るロザリーを目の敵にするのだろう。

「対処のやり方を教えるわ。彼女達を大人しくさせられる。やってみない?」

「やるわ!」

「けど、アイザックに嫌われるかもよ。わたくし、腹黒い交渉を全て担ってきたの。そしたら、冷たい女だって言われるようになったわ」

「え、マジで?」

「マジよ。あ、この世界にマジって言葉はないからね。話す時は気を付けて」

「分かった。ねぇ、話を聞いてると……アイザック最低じゃない?」

「そうね。婚約解消を願う手紙を書いたらアイザックじゃなくてマーティンが訪ねて来たわ」

「だいぶ最低だ!!!」

「押し付けるわたくしが言うのもなんだけど、アレのどこが良いの?」

「アイザックは、私を助けてくれた。過去の私は、なんてゆーか……典型的なイジメにあっててさぁ……そんな時、キミボウに出会ったんだよね。画面の中では、私はみんなに優しくされるヒロインでいられた。アイザックが虐められてる私を助けてくれるシーンがあるじゃない? それが大好きでさ……」

「確かに、あれは良いわよね! 分かるわ!」

「やっと生きる希望が湧いてきたところで、事故で死んじゃってさ……そういえば、あの女の子どうなったんだろ……」

「女の子?」

「うん。デパートでキミボウの展示会やってて、見に行こうとしたらいじめっ子と鉢合わせしてさ、慌てて逃げようとしたら階段から足を踏み外したの。優しそうな女の子が助けようとしてくれたんだけど……大丈夫だったかなって」

「……それ、わたくしだわ」

「え?!」

「キミボウの展示会に行った帰りに、階段から落ちてる女の子を助けようとして……そこから記憶はないわ」

「じゃ……じゃあ、私のせいでオリヴィアは……」

それからは大変だった。ロザリーが泣き続けたのだ。マーティンはオロオロとハンカチを差し出すし、エドワードは席を外そうかと気を遣ってくれる。

2人とも、わたくしがロザリーを泣かせたなんて思ってない。

それなのに……。

「オリヴィア! ロザリーに何をした!」

寮にズカズカと侵入してきたアイザックは、ロザリーが泣いているのを見た瞬間わたくしを殴ろうとしてきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

妻を蔑ろにしていた結果。

下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。 主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。 小説家になろう様でも投稿しています。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。 もう一度言おう。ヒロインがいない!! 乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。 ※ざまぁ展開あり

働かなくていいなんて最高!貴族夫人の自由気ままな生活

ゆる
恋愛
前世では、仕事に追われる日々を送り、恋愛とは無縁のまま亡くなった私。 「今度こそ、のんびり優雅に暮らしたい!」 そう願って転生した先は、なんと貴族令嬢! そして迎えた結婚式――そこで前世の記憶が蘇る。 「ちょっと待って、前世で恋人もできなかった私が結婚!?!??」 しかも相手は名門貴族の旦那様。 「君は何もしなくていい。すべて自由に過ごせばいい」と言われ、夢の“働かなくていい貴族夫人ライフ”を満喫するつもりだったのに――。 ◆メイドの待遇改善を提案したら、旦那様が即採用! ◆夫の仕事を手伝ったら、持ち前の簿記と珠算スキルで屋敷の経理が超効率化! ◆商人たちに簿記を教えていたら、商業界で話題になりギルドの顧問に!? 「あれ? なんで私、働いてるの!?!??」 そんな中、旦那様から突然の告白―― 「実は、君を妻にしたのは政略結婚のためではない。ずっと、君を想い続けていた」 えっ、旦那様、まさかの溺愛系でした!? 「自由を与えることでそばにいてもらう」つもりだった旦那様と、 「働かない貴族夫人」になりたかったはずの私。 お互いの本当の気持ちに気づいたとき、 気づけば 最強夫婦 になっていました――! のんびり暮らすつもりが、商業界のキーパーソンになってしまった貴族夫人の、成長と溺愛の物語!

処理中です...