19 / 47
十九話
しおりを挟む
寮に戻る気になれない。サイモンやウィルは寮の近くで待ってくれている。会えば間違いなく泣いてしまう。そうなれば、きっと2人はアイザックを潰そうとする。どれだけわたくしが止めても、もう止まらない。
だから、会いたい人に会ってはいけない。
目に付いた教室へ駆け込んだ。休日なら誰も居ない。ここで泣こう。そう思っていたらすぐに理事長先生が教室に入って来た。
「……オリヴィア……すまない!」
いきなり先生が土下座するものだから、涙が引っ込んでしまったわ。
「……あ、あの……なんの謝罪でしょうか? わたくし、理事長先生に謝られる覚えが無いのですが……」
アイザックはともかく、先生が謝る理由が分からない。
「俺は、オリヴィアなら王妃に相応しいと思っていた。アイザックにオリヴィアを大事にしろと叱ったのは俺だ。オリヴィアの気持ちを無視して、大人の都合を押し付けた。申し訳なかった。すぐに婚約解消は難しいが、もう一度アイザック、オリヴィア、それからロザリーの意志を確認して俺が出来る事をする。確認だが、オリヴィアは王妃になりたくないんだよな? アイザックへの愛は冷めてしまったか?」
「はい。あんな浮気者と結婚なんて御免です。アイザック様の婚約者でなくなればきっとわたくしは父から捨てられ、貴族ではなくなるでしょう。それでも構いません。わたくしは、王妃も貴族も嫌です。あの、学費は納めておりますし返金はされませんから……平民になっても学園に通い、卒業する事は可能でしょうか?」
アイザックの事なんてどうでもいい。学園は卒業しておきたい。だって、授業はとても楽しいし、卒業生の就職先は無限にあるのだもの。
「寮は平民寮に移る事になるが、卒業は可能だ。もちろん授業も受ける権利がある。ただ、平民用の授業になるから少し難しくなる。でも、オリヴィアならついていけるから大丈夫だ」
やった! 平民クラスの授業を受けられるのね! 嬉しくてガッツポーズをする。いけない、はしたないわね。ああ、先生が土下座なさったままだわ。
慌てて顔を上げて頂くようお願いし、もう一度確認する。寮と授業が平民用になるなんて最高じゃない! いつもサイモンから経済学が素晴らしいと聞いていた。貴族用の授業だとさわりしか教えて貰えないから、知りたいと思っていたと伝えると先生は目を丸くした。
「オリヴィアは……本気で学ぶつもりなのか?」
「学園は学ぶところでしょう?」
「そう……なのだが……。貴族は学園を社交の場だと思っている者が多いんだ。オリヴィアはもう学園を卒業出来る知識がある。だから、学園はテストだけ受けるものかと思っていた」
「通えるならもっと授業を受けたいと思っておりました。先生は、わたくしやエドワードが学べるように働きかけて下さったのではないのですか?」
「ああ、そうだ。自由を満喫して欲しかったんだ。学園では、それが許される。けど、貴族の授業はオリヴィアにはつまらないだろうなと思っていた。よし! 婚約解消には時間がかかるだろうから、貴族が平民の授業を受けられるように、早急に体制を整える。希望した貴族で、一定の学力がある者は平民クラスの参加を認める事にする。ただし、一度でも平民の生徒を馬鹿にしたり使用人扱いしたら即貴族クラスに戻す。そういうルールで運用する。平民クラスの講師は全て俺だから、目を光らせる。文句は言わせない」
「まぁ! では先生の授業を毎回受けられますの?! 嬉しいですわ! わたくし、入学して最初のオリエンテーションで先生が仰った事を励みに頑張っておりましたの! おかげで、悪役令嬢にならなくて済みましたわ」
「悪役令嬢とは何だ?」
しまった……!
思わず言ってしまったわ……。どう説明しようかしら。
だから、会いたい人に会ってはいけない。
目に付いた教室へ駆け込んだ。休日なら誰も居ない。ここで泣こう。そう思っていたらすぐに理事長先生が教室に入って来た。
「……オリヴィア……すまない!」
いきなり先生が土下座するものだから、涙が引っ込んでしまったわ。
「……あ、あの……なんの謝罪でしょうか? わたくし、理事長先生に謝られる覚えが無いのですが……」
アイザックはともかく、先生が謝る理由が分からない。
「俺は、オリヴィアなら王妃に相応しいと思っていた。アイザックにオリヴィアを大事にしろと叱ったのは俺だ。オリヴィアの気持ちを無視して、大人の都合を押し付けた。申し訳なかった。すぐに婚約解消は難しいが、もう一度アイザック、オリヴィア、それからロザリーの意志を確認して俺が出来る事をする。確認だが、オリヴィアは王妃になりたくないんだよな? アイザックへの愛は冷めてしまったか?」
「はい。あんな浮気者と結婚なんて御免です。アイザック様の婚約者でなくなればきっとわたくしは父から捨てられ、貴族ではなくなるでしょう。それでも構いません。わたくしは、王妃も貴族も嫌です。あの、学費は納めておりますし返金はされませんから……平民になっても学園に通い、卒業する事は可能でしょうか?」
アイザックの事なんてどうでもいい。学園は卒業しておきたい。だって、授業はとても楽しいし、卒業生の就職先は無限にあるのだもの。
「寮は平民寮に移る事になるが、卒業は可能だ。もちろん授業も受ける権利がある。ただ、平民用の授業になるから少し難しくなる。でも、オリヴィアならついていけるから大丈夫だ」
やった! 平民クラスの授業を受けられるのね! 嬉しくてガッツポーズをする。いけない、はしたないわね。ああ、先生が土下座なさったままだわ。
慌てて顔を上げて頂くようお願いし、もう一度確認する。寮と授業が平民用になるなんて最高じゃない! いつもサイモンから経済学が素晴らしいと聞いていた。貴族用の授業だとさわりしか教えて貰えないから、知りたいと思っていたと伝えると先生は目を丸くした。
「オリヴィアは……本気で学ぶつもりなのか?」
「学園は学ぶところでしょう?」
「そう……なのだが……。貴族は学園を社交の場だと思っている者が多いんだ。オリヴィアはもう学園を卒業出来る知識がある。だから、学園はテストだけ受けるものかと思っていた」
「通えるならもっと授業を受けたいと思っておりました。先生は、わたくしやエドワードが学べるように働きかけて下さったのではないのですか?」
「ああ、そうだ。自由を満喫して欲しかったんだ。学園では、それが許される。けど、貴族の授業はオリヴィアにはつまらないだろうなと思っていた。よし! 婚約解消には時間がかかるだろうから、貴族が平民の授業を受けられるように、早急に体制を整える。希望した貴族で、一定の学力がある者は平民クラスの参加を認める事にする。ただし、一度でも平民の生徒を馬鹿にしたり使用人扱いしたら即貴族クラスに戻す。そういうルールで運用する。平民クラスの講師は全て俺だから、目を光らせる。文句は言わせない」
「まぁ! では先生の授業を毎回受けられますの?! 嬉しいですわ! わたくし、入学して最初のオリエンテーションで先生が仰った事を励みに頑張っておりましたの! おかげで、悪役令嬢にならなくて済みましたわ」
「悪役令嬢とは何だ?」
しまった……!
思わず言ってしまったわ……。どう説明しようかしら。
1
お気に入りに追加
503
あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。
もう一度言おう。ヒロインがいない!!
乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。
※ざまぁ展開あり

変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる