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十六話
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「……ウィル、なんですぐボクに言わなかったの?」
サイモンに全てを説明すると、あっさり信じてくれた。なんで?! 普通もっと不気味がったりするもんでしょ?! 自分が攻略対象だなんて気味悪い話をしてるのに!
「万が一にでも聞かれたらやべえと思って。ここなら問題ねぇだろ?」
「それもあるだろうけど、ちょっとだけでもオリヴィアと秘密を共有したかったんだよね?! 自分だけがオリヴィアの秘密を知ってる優越感を堪能したかったんだろ!」
「……まぁ、それもある」
「くっそ! 手引きなんてしなきゃ良かった!」
サイモンとウィルが戯れ合っている。
「あの、気味悪いとか思わないの?」
「「なんで?」」
「だって、自分達の世界がゲームだったなんて言い出したら気持ち悪いじゃない! 怖いじゃない! しかも、サイモンは攻略対象なんだよ! 過去のわたくしは、サイモンで遊んでたって事よ?!」
「光栄だね。オリヴィアは攻略対象の誰が好きだった?」
「……んー……、みんな好きだったけど……」
「オレも知りたいなぁ。オレはオリヴィアの協力者だったよな?」
「ウィルの立ち絵はなかったから、貧民街の人達って文言がなきゃウィルの事だと分からなかったかも」
「ふーん、ボクはどう?」
「サイモンは、その……」
「何? そんなモジモジしてないで教えてよ」
「攻略対象の中では、いちばん好きだったわ……」
「なっ……!」
サイモンが真っ赤な顔で固まってしまったわ。もう! だから恥ずかしくて言えなかったのに!
サイモンルートは、一緒に様々な商売をする。オリヴィアとも親友になるのよね。前世のわたくしは商売が好きだったんだろうなと思う。サイモンルートはいつもワクワクしながらやっていた。
「ずりぃな。なぁオリヴィア、オレはどうだ?」
「ウィルもかっこいいと思うわ!」
「あ……いや、そうじゃなくてだな……」
あれ? 2人ともお顔が真っ赤だわ。ふと、自分の発言を思い出す。
「あ、あのね……違うの……いや……違わないけどっ……」
「今ようやく理解した。オリヴィアは変わった。本気であの王太子が嫌いなんだね。今までなら、ボクらの容姿を褒めたりしなかった。誤解される行動は慎んでたもんね。今のオリヴィアは、まるで無垢な子どもだ。今までのオリヴィアと違うけど、同じ。不思議な感じだね。前世持ちは、やっぱり違うね」
「……え? 前世持ちって……」
「お貴族様は知らねぇだろ。オレ達だって、メシ目当てに教会の教えを暗記したから知ってただけだ。サイモンみてぇな裕福な平民は知らないと思ってた」
「ボクは商人だよ? 顧客が興味を持ちそうな事は出来るだけ網羅するに決まってるでしょう?」
「普通の商人は、教会や教会を頼る貧乏人を顧客だとは思わねぇ。お貴族様は教会に寄付をしてるだけでそんなに神の教えに興味はねぇ。でも、やべえ事があれば教会に駆け込む。だからその時前世持ちが居るって教えて貰えるって訳だ」
「待って! 前世持ちって……普通なの?」
「ああ、普通だぜ。少ねぇけど居ない訳じゃねぇ。んで、オリヴィアみてぇに未来が視えるってのもよくある話だ。物語みてぇにたくさん結末があるってのはあんまり聞いたことねぇが、予言は神の警告だから努力すれば変えられるってのは常識だな」
「……嘘」
「オレがオリヴィアに嘘を吐いた事あったか?」
「……ないわ。なんですぐ教えてくれなかったのよ」
「あー……サイモンにすら言うのを躊躇う事を教えてくれた優越感に浸りたかった。教えちまったら、すぐにでもサイモンにも相談しただろ?」
「ウィルはズルいよね。ま、ボクも仲間に入れて貰えたし良いけど。いっそ攻略対象って人達を全員巻き込んじゃえば良いんだよ。ゲームって言いにくいなら、前世持ちの予知って事にすれば良いし。嘘ではないもの。個人的には理事長先生は頼りになるかなって思うよ」
「それはアリかもな。あと、エドワード様にも言った方が良い。あの人、オレ達の関係に勘づいてる。これからずっと調べられるのと、こちらから情報開示して信用を得るのとじゃ、後者の方が良いんじゃねぇか?」
「前世が分かるって、そんなに必死で隠す事でも無いって事?」
「そうだね。オリヴィアが婚約解消したいなら、彼の協力は不可欠だし、良いんじゃないかな? マーティン様も真面目だから、オリヴィアが黙っててって言えば黙っててくれるよ。せっかくだしゲームの話はボクらだけの秘密にしようか?」
「お、良いなソレ」
「さ、作戦を立てようか。ボクら3人が集まれば、なんだって出来るよね。ボクはとりあえずあの浮気者が許せない。オリヴィアが好きならって我慢してたけど、そうじゃないならちょっとは痛い目みたら良いと思ってる。ウィル、協力してよ」
「おう、良いぜ。オリヴィアが王妃になるならって我慢してたけど、ならねぇなら容赦しねぇ」
「オリヴィア、安心してね。平民になってもボクが養ってあげるから」
「サイモン、お前オリヴィアを分かってねぇな。オリヴィアは自分で稼ぎたいタイプだろ。な、オレと暮らして好きな仕事をするってどうだ?」
「ままま、待って! 待って! 色々待って! 確かに養われるだけなんて嫌。働けるなら働きたい」
「貴族様と違って、平民は男女関係なく働くぜ」
「まぁ、そうだね。マリーとかもそうだし。あ、明日マリーも呼ぶからよろしくね」
「分かった。マリーも喜ぶぜ」
和やかに話は進んでいくけど、わたくしが昨日から悩んでいた事は何だったの……?!
飄々としているウィルが憎らしくて、思わず睨んだら満面の笑みが返ってきた。もう! なんだか悔しいわ。
サイモンに全てを説明すると、あっさり信じてくれた。なんで?! 普通もっと不気味がったりするもんでしょ?! 自分が攻略対象だなんて気味悪い話をしてるのに!
「万が一にでも聞かれたらやべえと思って。ここなら問題ねぇだろ?」
「それもあるだろうけど、ちょっとだけでもオリヴィアと秘密を共有したかったんだよね?! 自分だけがオリヴィアの秘密を知ってる優越感を堪能したかったんだろ!」
「……まぁ、それもある」
「くっそ! 手引きなんてしなきゃ良かった!」
サイモンとウィルが戯れ合っている。
「あの、気味悪いとか思わないの?」
「「なんで?」」
「だって、自分達の世界がゲームだったなんて言い出したら気持ち悪いじゃない! 怖いじゃない! しかも、サイモンは攻略対象なんだよ! 過去のわたくしは、サイモンで遊んでたって事よ?!」
「光栄だね。オリヴィアは攻略対象の誰が好きだった?」
「……んー……、みんな好きだったけど……」
「オレも知りたいなぁ。オレはオリヴィアの協力者だったよな?」
「ウィルの立ち絵はなかったから、貧民街の人達って文言がなきゃウィルの事だと分からなかったかも」
「ふーん、ボクはどう?」
「サイモンは、その……」
「何? そんなモジモジしてないで教えてよ」
「攻略対象の中では、いちばん好きだったわ……」
「なっ……!」
サイモンが真っ赤な顔で固まってしまったわ。もう! だから恥ずかしくて言えなかったのに!
サイモンルートは、一緒に様々な商売をする。オリヴィアとも親友になるのよね。前世のわたくしは商売が好きだったんだろうなと思う。サイモンルートはいつもワクワクしながらやっていた。
「ずりぃな。なぁオリヴィア、オレはどうだ?」
「ウィルもかっこいいと思うわ!」
「あ……いや、そうじゃなくてだな……」
あれ? 2人ともお顔が真っ赤だわ。ふと、自分の発言を思い出す。
「あ、あのね……違うの……いや……違わないけどっ……」
「今ようやく理解した。オリヴィアは変わった。本気であの王太子が嫌いなんだね。今までなら、ボクらの容姿を褒めたりしなかった。誤解される行動は慎んでたもんね。今のオリヴィアは、まるで無垢な子どもだ。今までのオリヴィアと違うけど、同じ。不思議な感じだね。前世持ちは、やっぱり違うね」
「……え? 前世持ちって……」
「お貴族様は知らねぇだろ。オレ達だって、メシ目当てに教会の教えを暗記したから知ってただけだ。サイモンみてぇな裕福な平民は知らないと思ってた」
「ボクは商人だよ? 顧客が興味を持ちそうな事は出来るだけ網羅するに決まってるでしょう?」
「普通の商人は、教会や教会を頼る貧乏人を顧客だとは思わねぇ。お貴族様は教会に寄付をしてるだけでそんなに神の教えに興味はねぇ。でも、やべえ事があれば教会に駆け込む。だからその時前世持ちが居るって教えて貰えるって訳だ」
「待って! 前世持ちって……普通なの?」
「ああ、普通だぜ。少ねぇけど居ない訳じゃねぇ。んで、オリヴィアみてぇに未来が視えるってのもよくある話だ。物語みてぇにたくさん結末があるってのはあんまり聞いたことねぇが、予言は神の警告だから努力すれば変えられるってのは常識だな」
「……嘘」
「オレがオリヴィアに嘘を吐いた事あったか?」
「……ないわ。なんですぐ教えてくれなかったのよ」
「あー……サイモンにすら言うのを躊躇う事を教えてくれた優越感に浸りたかった。教えちまったら、すぐにでもサイモンにも相談しただろ?」
「ウィルはズルいよね。ま、ボクも仲間に入れて貰えたし良いけど。いっそ攻略対象って人達を全員巻き込んじゃえば良いんだよ。ゲームって言いにくいなら、前世持ちの予知って事にすれば良いし。嘘ではないもの。個人的には理事長先生は頼りになるかなって思うよ」
「それはアリかもな。あと、エドワード様にも言った方が良い。あの人、オレ達の関係に勘づいてる。これからずっと調べられるのと、こちらから情報開示して信用を得るのとじゃ、後者の方が良いんじゃねぇか?」
「前世が分かるって、そんなに必死で隠す事でも無いって事?」
「そうだね。オリヴィアが婚約解消したいなら、彼の協力は不可欠だし、良いんじゃないかな? マーティン様も真面目だから、オリヴィアが黙っててって言えば黙っててくれるよ。せっかくだしゲームの話はボクらだけの秘密にしようか?」
「お、良いなソレ」
「さ、作戦を立てようか。ボクら3人が集まれば、なんだって出来るよね。ボクはとりあえずあの浮気者が許せない。オリヴィアが好きならって我慢してたけど、そうじゃないならちょっとは痛い目みたら良いと思ってる。ウィル、協力してよ」
「おう、良いぜ。オリヴィアが王妃になるならって我慢してたけど、ならねぇなら容赦しねぇ」
「オリヴィア、安心してね。平民になってもボクが養ってあげるから」
「サイモン、お前オリヴィアを分かってねぇな。オリヴィアは自分で稼ぎたいタイプだろ。な、オレと暮らして好きな仕事をするってどうだ?」
「ままま、待って! 待って! 色々待って! 確かに養われるだけなんて嫌。働けるなら働きたい」
「貴族様と違って、平民は男女関係なく働くぜ」
「まぁ、そうだね。マリーとかもそうだし。あ、明日マリーも呼ぶからよろしくね」
「分かった。マリーも喜ぶぜ」
和やかに話は進んでいくけど、わたくしが昨日から悩んでいた事は何だったの……?!
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