悪役令嬢とヒロインは手を組みました

編端みどり

文字の大きさ
上 下
7 / 47

七話

しおりを挟む
「オリヴィア! もう大丈夫なの?」

少し寝たら元気になり、無事登校出来た。登校したらすぐにエドワードに声をかけられたわ。彼は最近お父様の跡を継ぐ為に城で働いている事が多い。

わたくしも、ずっと城で働いているから学園に来るのは久しぶりだ。そうだわ、倒れていた間の仕事をどうするか相談しないと。

「エドワード、倒れてしまってごめんなさい。お仕事、溜まってるわよね? 今日の授業が終わったらすぐに処理するから」

たくさん寝たし、今夜は徹夜でも大丈夫。明日はお休みだから、たくさん働けるわ。

「オリヴィアの仕事は全部僕が処理したよ。だから大丈夫。僕もちゃんと学園に通う。オリヴィアも学園を優先してくれって父上が言ってた。そもそも、僕らは学生なんだ。理事長先生が城に働きかけてくれて、僕らが仕事をするのは休日だけにして貰った。人材は足りてないけど、学生で優秀な人達にも手伝って貰う事にしたからなんとかなるよ。ウィルが将来の為に休日に仕事をさせてくれって言い出したのがきっかけで、何人もの生徒が手を挙げてくれた。理事長先生がふるいにかけてくれたから、みんな優秀だ。僕らだけで抱え込まなくて良くなったよ。もちろん、機密事項には触らせないけど、それは僕もオリヴィアも同じでしょう?」

わたくし達は、まだ学生。だから仕事の手伝いと言っても重要な部分には触れない。わたくしは結婚すればすぐにでも王家の秘密に触れないといけないけど、今は何も知らない。

王家の秘密を知ってしまえば、わたくしはアイザックと結婚するしか生きる道はなくなる。

何度も何度も、仕事の為に王家の秘密を学べと言われたが、断って良かった。先生のおかげだ。

アイザックがわたくしに王家の秘密を教えると言ってきた時、たまたま理事長先生が通りかかって結婚してからじゃないと王家の秘密は教えてはいけないとアイザックを叱ってくれた。アイザックは言わなくなったけど、それからも王妃様や国王陛下から何度も勧められたわ。

王家の秘密を教える時は儀式をする。けど、わたくしが拒否すれば儀式は失敗するわ。一度だけ儀式をさせられたけど、絶対に嫌だと拒否をした。お父様がわたくしを殴って無理矢理儀式を進めようとしたけど、マーティンが助けてくれた。その後駆けつけた先生やエドワード、宰相様達の説得で儀式は取りやめになったわ。

先生の説得で国王陛下は納得して下さった。学園の理事長先生の意見は王家も無視できない。学園に在籍している間はまだ子ども。子どもを唆して働かせるなと厳しく言って下さった。先生の働きかけで宰相様を始め文官の方達も反対してくれたので、わたくしは結婚するまで王家の秘密を知る事はない。

お父様には殴られたけど、拒否して良かったわ。お父様は、わたくしが王家の秘密を知れば確実に王妃になれると思ってる。けど、秘密を知ってしまえばロザリーとアイザックの邪魔者であるわたくしは殺されるしかなくなる。

……もしかして、ゲームでエドワードルートだと必ず処刑されるのって……わたくしが王家の秘密を知ってるから?

ゲームでのエドワードは、わたくしが早く王家の秘密を知って仕事をしてくれる事を望んでいた。今のエドワードは、そんな事言わない。むしろ心配してくれている。

先生やエドワード、マーティンや宰相様が助けて下さらなければ……わたくしは死んでいた……?

ゾッとする。わたくしの様子がおかしいと気が付いたエドワードが心配してくれて、わたくしを医務室へ連れて行ってくれた。

途中でアイザックとマーティンにも会ったわ。マーティンは青い顔をしているわたくしを心配してくれた。アイザックは……ひとこと労いを言ったらすぐにロザリーを見つけて行ってしまった。

婚約者として体面を整えようと思ったのか、マーティンにわたくしを医務室に送るよう命じたけど……わたくしを見る目は冷たかった。

マーティンはため息を吐き、エドワードは怒っていた。わたくしはアイザックへの愛情が急激に冷めていったわ。何で今までこんなクズが好きだったんだろう。

わたくしの初恋は、この瞬間に完全に終わった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

離婚した彼女は死ぬことにした

まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。 ----------------- 事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。 もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。 今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、 「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」 返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。 それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。 神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。 大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。 ----------------- とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。 まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。 書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。 作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

冤罪から逃れるために全てを捨てた。

四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)

【完結】「私は善意に殺された」

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

処理中です...