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④ローランの授業

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散々話し合った結果、ローランは今回は旅に同行しない事になった。いざという時の為に鑑定魔法を使えるローランが同行する方が良いか揉めていたのだ。でも、鑑定魔法は国外では極力使用しないようにしているし、ローランの事を鑑定される方が危険だと判断された。今回の旅で特殊魔法を使えるのはリュカだけだ。クリストフ様に鑑定魔法を頼まれないように、もう鑑定は使えなくなったと伝えてある。

どこまで信用されるかは分からないが、そうするしかなかった。リュカも、クリストフ様を騙すのは心苦しかったみたいだしね。

今は、ローランに旅の心得を教えて貰っている。わたくしが国外に嫁ぐ可能性が高かったから、ローランは王族として外交を担う事になっていた。そのつもりで学んでいたローランの知識を少しでも教えて貰おうと思って時間を取って貰ったのだ。

ローランは国内をあちこち回っている。鑑定をかけながらね。その合間に城に帰って来てくれたのだ。

リュカの提案で庶民に鑑定をかけている。ローランの魔力量はかなり多いので、一気に鑑定する事が可能なのだ。状態は分からないと悩んでいたが、最近は分るようになったらしい。リュカが以前に提案した通り、子だけや親だけが魔法を持っているパターンもあり、様々な研究が進んでいる。その為にも鑑定魔法の使い手は必要だ。

ローランが旅をしたおかげで鑑定魔法の使い手が増えたので関所に人を派遣する事が出来るようになった。

王家の血を引く赤子を鑑定する事はなくなり、ある程度大きくなってからパーティーなどでまとめて鑑定すると決まった事で鑑定魔法の使い手は動きやすくなった。鑑定結果はお父様やお兄様だけでなく国の中枢を担う人はみんな知るようになり、相互監視をする。場合によっては親には一切何も教えない。ルイーズの事件がきっかけで色々と運用が変更された。漏洩の危険が増すので、漏洩した場合の罰則は厳しく定められたから、わたくし達も機密を漏洩したら地下牢だ。

魅了魔法などの危険な能力は誰にも教えられず、封印される。魔女様の協力を取り付けられたから、封印するまでに時間がかかる事もなくなった。

「国外をあちこち回れるのはありがたいね。色々問題点も見つかったけど、特産品もたくさん見つけたよ。うまく売り込んだら、莫大な利益をもたらすよ」

「さすがね。ローラン」

「王族相手に精神をすり減らすより今の方が良いね。僕は国内に目を光らせるから、面倒な外交はよろしくね」

「面倒って言い切るなよ」

「ほら、うちの兄上は両方優秀だから。もちろん、姉さんもね。だけど、国内を回ると結婚相手を探すのが厳しいんだよね。僕の年代はあんまり王族が居ないから僕が外交ついでに自分を売り込む予定だったから」

「ローランの年齢で結婚相手って、早くねぇか?」

「王族の結婚は政治と切り離せないもの。わたくしの年代は人数が多かったからすぐに婚約はしなかったけど、お姉様だってローランの年には婚約していたわ」

「そうなんだよ。だから外交のついでに良さげな方を調べて来てよ」

「分かったわ」

「そんな話を聞いてたら、俺がカティと結婚出来たのって、無茶苦茶ラッキーなんじゃねぇかと思うぜ」

「ラッキーなのは、姉さんの方だよね。姉さんの結婚は、大成功だもの。僕の知ってる政略結婚で一番成功してると思うよ」

「……へ? 政略結婚?」

「わたくしも、リリアに言われた時に同じ顔をしたわ。でも、理由を聞いたら納得した。リュカを国外に出すのは多大なる損失なのよ。で、リュカを引き留められるのはわたくしだけだから、結婚は国の為の政略結婚だって言われたわ」

「リリアさん、俺を過大評価し過ぎだろ」

「そんな事ないわ。リュカはそれだけ凄い人なのよ」

「そうそう。兄上に負けたくないからってシリルも鍛錬を始めたんだよ。騎士団の練度も忠誠心も上がったしね。クリストフ様と姉さんが結婚しても、こんな効果は得られない」

「俺はただカティが好きだっただけだったんだけどなぁ」

「わたくしもリュカが大好きよ!」

わたくしの夫は、優しくて強くて、とっても素敵な人だ。大好きな夫の胸に飛び込んで抱きつくと、優しく頭を撫でてくれた。

「はいはい。いちゃつくのは後でね。僕は明日には出発するんだから、ちゃんと覚えてよ」

ローランの授業は、過去で受けた王妃教育並みに厳しかったけど、とても分かりやすく楽しかった。
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