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14.ファーストダンス
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「それでは、本日の主役であるカトリーヌを呼びます。どうか、娘を祝福して下さい」
ドアの奥から、お父様の声がします。
「大丈夫、俺も居るから」
以前は、ひとりでした。だけど、今はリュカが居ます。わたくしの婚約は、登場した瞬間に発表される段取りになっています。
王族は16歳から17歳で婚約者を決める事が多いです。わたくしの16歳の誕生日は、各国の王族が招待されております。婚約者がいない年頃の王族の場合、歳の近い未婚の王族がパーティーに来る事が多いのです。結婚相手を探している方が多く、主役であるわたくしはどうしても注目されます。
以前のパーティーでは、たくさんの年頃の男性とお話をしました。
特に長く話したのがクリストフ様でした。しばらくすると婚約の打診がきて、婚約が決まりました。婚約が決まってから何度か行き来をしてお話ししましたが、とてもお優しい方でした。ルイーズと会うまでは、ですけどね。
まぁ、もうどうでも良いです。
本音を言えばクリストフ様に会うのが怖いのですが、今のクリストフ様はルイーズに魅了されていませんし、たとえ魅了されていてもわたくしの婚約者はリュカですから無関係ですわ。
リュカにはなんだか冷たいと言われてしまいましたが、冷たくもなるでしょう。以前は愛想良くしましたが、今回は当たり障りのない挨拶だけで充分です。
それより、正装したリュカがかっこよくて目が離せません。騎士服も素敵ですが、初めて見るリュカの正装は別格です。
「リュカの正装を見た事がなかったんだけど、とっても素敵ね。これからはパーティーや夜会でそんな格好をしてくれるのよね? 毎回、ドキドキしてしまうわ」
「俺もだよ。カティは綺麗過ぎる。このままパーティーを抜け出したいくらいだ」
「駄目よ。ちゃんと婚約を発表しないと」
「分かってる。カティ、俺から離れるなよ」
リュカは、騎士ではなくわたくしと共に歩いてくれる婚約者です。それがとても頼もしく、安心します。あまり人に頼った事はありませんが、リュカなら安心して頼れます。婚約者なら対等ですから、わたくしの事をカティと愛称で呼んで下さるのも嬉しいです。
「おい、あの男は誰だ?」
わたくしをエスコートしているリュカに注目が集まります。お父様が、リュカを紹介して婚約を発表してくれました。少しざわつきましたが、馴れ初めを上手くお父様が発表してくれたのですぐに祝福の拍手が鳴り響きました。
そのままリュカとファーストダンスを踊ります。
以前は、何名かの方とお話をしてからファーストダンスの時間になりました。確か、クリストフ様と踊ったのでしたね。
だけど、今回はすぐにファーストダンスの時間です。主役であるわたくしのお相手は決まっているのですからプログラムを変更したのです。
「カティ、行こうか」
「はい! よろしくお願いしますね。リュカ」
差し出されたリュカの手を取ると、リュカが嬉しそうに笑いました。思わずわたくしも笑みが溢れます。
「楽しそうだね」
「ええ! とっても楽しいわ! リュカはダンスも上手ね」
クルクル回りながらリュカのリードで踊る。
いつもよりステップも軽いです。リュカとは初めて踊るのに、わたくしの足運びを予想して優しくリードしてくれるのです。
「いつかカティと踊れたらと思って、こっそり練習してたんだ」
「そうだったのね。知らなかったわ。ふふっ、こんなに幸せなら最初からリュカと婚約すれば良かったわ。過去でも、お父様におねだりすればリュカと婚約出来たのかしら」
「どうだろうな。俺の今の実績だと王女様と婚約するにはギリギリってとこだから、横槍を入れられたら勝てなかった」
「今回は大丈夫よ! わたくし達は幼い頃から相思相愛って事になってるから」
「俺は一方的にカティが好きだったけど……そんなに盛って良いのか?」
「良いのよ! 元々仲は良かったし、わたくしもリュカと結婚したいもの!」
「じゃあ、誰にも取られないようにカティから離れないようにするよ」
ダンスをしながら、楽しそうに語り合うわたくし達を見て、ほとんどの方がお父様のお言葉を信じたようでした。
「俺は、以前はパーティーに参加する資格すらなかったからな。カティとこんな風に踊れるなんて夢みたいだ」
以前はどんなファーストダンスだったかしら?
クリストフ様とのファーストダンスも悪くなかったと思うのですが、リュカとのダンスが楽しすぎてすっかり忘れてしまいました。
王族が16歳の誕生日に婚約者を発表する事はよくあります。大抵は、事前に噂が回るものですがわたくしの婚約が決まったのは昨日なので誰も知らなかったと思います。
わたくしを見定めようとしていた各国の王族の方は面白くなさそうな顔をしておられましたが、ここまで大々的に発表すればこの後の挨拶ではお祝いを言われるだけで済みます。仲の良さを見せつければ、批判されたりしません。
それに、わたくしは見た目もそこまで派手ではないので以前も婚約を申し込まれたのはクリストフ様だけでした。これが美しい姫君なら厄介な事になりますから、地味な見た目で良かったですわ。
「挨拶、頑張ろうな。ルカになる時にだいぶ鍛えられたし、昨日も今日も色々確認して貰ったけど全く問題無いってよ。カティに相応しくないなんて、絶対言わせないから安心してくれ」
そう言ってダンスを終えたリュカは、わたくしの手にキスをしました。その姿があまりにかっこよくて、令嬢達の黄色い声が会場に響きます。
もう! リュカはわたくしの婚約者ですのに!
面白くない、それが顔に出てしまったのでしょう。リュカがニヤリと笑いながらわたくしに囁きます。
「なんだよ、嫉妬したのか?」
「そうよ! こんな気持ち初めてよ! なんだか面白くないわ!」
小声でリュカに囁くと、リュカはわたくしの頭をそっと撫でて下さいました。柔らかく、優しい笑みです。
「初めて嫉妬したなんて、嬉しいよ。安心してくれ、俺はカティしか愛せない」
「わたくしもリュカを愛してるわ」
幸せいっぱいであるわたくしは気が付きませんでしたが、リュカの目には面白くなさそうにしているクリストフ様と、会場の隅でハンカチを噛むルイーズが映っておりました。
ドアの奥から、お父様の声がします。
「大丈夫、俺も居るから」
以前は、ひとりでした。だけど、今はリュカが居ます。わたくしの婚約は、登場した瞬間に発表される段取りになっています。
王族は16歳から17歳で婚約者を決める事が多いです。わたくしの16歳の誕生日は、各国の王族が招待されております。婚約者がいない年頃の王族の場合、歳の近い未婚の王族がパーティーに来る事が多いのです。結婚相手を探している方が多く、主役であるわたくしはどうしても注目されます。
以前のパーティーでは、たくさんの年頃の男性とお話をしました。
特に長く話したのがクリストフ様でした。しばらくすると婚約の打診がきて、婚約が決まりました。婚約が決まってから何度か行き来をしてお話ししましたが、とてもお優しい方でした。ルイーズと会うまでは、ですけどね。
まぁ、もうどうでも良いです。
本音を言えばクリストフ様に会うのが怖いのですが、今のクリストフ様はルイーズに魅了されていませんし、たとえ魅了されていてもわたくしの婚約者はリュカですから無関係ですわ。
リュカにはなんだか冷たいと言われてしまいましたが、冷たくもなるでしょう。以前は愛想良くしましたが、今回は当たり障りのない挨拶だけで充分です。
それより、正装したリュカがかっこよくて目が離せません。騎士服も素敵ですが、初めて見るリュカの正装は別格です。
「リュカの正装を見た事がなかったんだけど、とっても素敵ね。これからはパーティーや夜会でそんな格好をしてくれるのよね? 毎回、ドキドキしてしまうわ」
「俺もだよ。カティは綺麗過ぎる。このままパーティーを抜け出したいくらいだ」
「駄目よ。ちゃんと婚約を発表しないと」
「分かってる。カティ、俺から離れるなよ」
リュカは、騎士ではなくわたくしと共に歩いてくれる婚約者です。それがとても頼もしく、安心します。あまり人に頼った事はありませんが、リュカなら安心して頼れます。婚約者なら対等ですから、わたくしの事をカティと愛称で呼んで下さるのも嬉しいです。
「おい、あの男は誰だ?」
わたくしをエスコートしているリュカに注目が集まります。お父様が、リュカを紹介して婚約を発表してくれました。少しざわつきましたが、馴れ初めを上手くお父様が発表してくれたのですぐに祝福の拍手が鳴り響きました。
そのままリュカとファーストダンスを踊ります。
以前は、何名かの方とお話をしてからファーストダンスの時間になりました。確か、クリストフ様と踊ったのでしたね。
だけど、今回はすぐにファーストダンスの時間です。主役であるわたくしのお相手は決まっているのですからプログラムを変更したのです。
「カティ、行こうか」
「はい! よろしくお願いしますね。リュカ」
差し出されたリュカの手を取ると、リュカが嬉しそうに笑いました。思わずわたくしも笑みが溢れます。
「楽しそうだね」
「ええ! とっても楽しいわ! リュカはダンスも上手ね」
クルクル回りながらリュカのリードで踊る。
いつもよりステップも軽いです。リュカとは初めて踊るのに、わたくしの足運びを予想して優しくリードしてくれるのです。
「いつかカティと踊れたらと思って、こっそり練習してたんだ」
「そうだったのね。知らなかったわ。ふふっ、こんなに幸せなら最初からリュカと婚約すれば良かったわ。過去でも、お父様におねだりすればリュカと婚約出来たのかしら」
「どうだろうな。俺の今の実績だと王女様と婚約するにはギリギリってとこだから、横槍を入れられたら勝てなかった」
「今回は大丈夫よ! わたくし達は幼い頃から相思相愛って事になってるから」
「俺は一方的にカティが好きだったけど……そんなに盛って良いのか?」
「良いのよ! 元々仲は良かったし、わたくしもリュカと結婚したいもの!」
「じゃあ、誰にも取られないようにカティから離れないようにするよ」
ダンスをしながら、楽しそうに語り合うわたくし達を見て、ほとんどの方がお父様のお言葉を信じたようでした。
「俺は、以前はパーティーに参加する資格すらなかったからな。カティとこんな風に踊れるなんて夢みたいだ」
以前はどんなファーストダンスだったかしら?
クリストフ様とのファーストダンスも悪くなかったと思うのですが、リュカとのダンスが楽しすぎてすっかり忘れてしまいました。
王族が16歳の誕生日に婚約者を発表する事はよくあります。大抵は、事前に噂が回るものですがわたくしの婚約が決まったのは昨日なので誰も知らなかったと思います。
わたくしを見定めようとしていた各国の王族の方は面白くなさそうな顔をしておられましたが、ここまで大々的に発表すればこの後の挨拶ではお祝いを言われるだけで済みます。仲の良さを見せつければ、批判されたりしません。
それに、わたくしは見た目もそこまで派手ではないので以前も婚約を申し込まれたのはクリストフ様だけでした。これが美しい姫君なら厄介な事になりますから、地味な見た目で良かったですわ。
「挨拶、頑張ろうな。ルカになる時にだいぶ鍛えられたし、昨日も今日も色々確認して貰ったけど全く問題無いってよ。カティに相応しくないなんて、絶対言わせないから安心してくれ」
そう言ってダンスを終えたリュカは、わたくしの手にキスをしました。その姿があまりにかっこよくて、令嬢達の黄色い声が会場に響きます。
もう! リュカはわたくしの婚約者ですのに!
面白くない、それが顔に出てしまったのでしょう。リュカがニヤリと笑いながらわたくしに囁きます。
「なんだよ、嫉妬したのか?」
「そうよ! こんな気持ち初めてよ! なんだか面白くないわ!」
小声でリュカに囁くと、リュカはわたくしの頭をそっと撫でて下さいました。柔らかく、優しい笑みです。
「初めて嫉妬したなんて、嬉しいよ。安心してくれ、俺はカティしか愛せない」
「わたくしもリュカを愛してるわ」
幸せいっぱいであるわたくしは気が付きませんでしたが、リュカの目には面白くなさそうにしているクリストフ様と、会場の隅でハンカチを噛むルイーズが映っておりました。
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