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10.適任なのは
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わたくしが、初めて自覚した気持ちに戸惑っているとドアがノックされました。
「リュカ・デ・ロドラです。お呼びにより参上致しました」
「入れ」
リュカが入って来ると、以前より少し幼い顔立ちに過去に戻れたのだと実感しました。元気に動いていて、わたくしに笑いかけてくれます。良かった……。過去に戻って本当に良かった……。
気が付くと、涙が溢れていました。
「カティ、俺は生きてるから。大丈夫。だから、泣かないで」
「ホントに、生きてる? どこも怪我してない?」
「大丈夫だよ。どこも痛くない。ちゃんと身体は動く。カティがずっと治してくれてたから。なぁ、あの後どうなったんだ? 気を失ったみたいで、カティを守れなくてごめん。次は絶対守るから。本当に無事で良かった。あの後、カティは国王陛下が助けてくれたんだよな? 伝達用の鳥が飛んでたからもうすぐ来るとは思ってたんだ。急いで手紙を出して良かった」
「リュカ……? ねぇ、貴方の腕をわたくしが治したのよね?」
16歳のリュカが怪我をした時は、わたくしは安全な所に居ました。どうしてそんなにわたくしを心配しているの?
「気が付いたら騎士の詰所で寝てたんだ。俺、また腕が取れてたのか? まぁ、今は治ってるなら良いだろ。そんな事よりカティはどうやって帰って来たんだ?」
おかしいですわ、リュカの距離感が近いです。まるで、リュカが死ぬ寸前のようです……それに、先程の発言は……まさか……。
「お父様……わたくしの魔法は、時を戻るのですわよね? あっておりますわよね? 記憶は、わたくししか残らないのではなかったのですか? わたくしは、現在15歳。もうすぐ、16歳ですわよね?」
「あ、ああ……あっている。明日はカトリーヌの16歳の誕生日だ」
リュカは、わたくしの年齢を聞いて慌ててわたくしから離れました。
「失礼致しました。カトリーヌ姫がご無事で何よりです」
「……やはりリュカが適任だな。リュカよ、カトリーヌと結婚する気はあるか?」
「はい、もちろんあります!」
「すぐにロドラ伯爵を呼べ。カトリーヌの誕生日パーティーで正式に婚約を発表する」
「お父様! 待って!」
「リュカなら大丈夫だ。クリストフ様のようにはならない。リュカよ、ルカになれるか?」
「はい。もちろんです」
リュカはすぐにルカになりました。……あれ? リュカはこの年齢では魔法の事を知らなかった筈ですわよね?
「やはりそうか。リュカ、よく聞け。カトリーヌは生涯に一度だけ時を戻す魔法が使える。カトリーヌは魔法を使い未来から戻って来た。リュカ、お前は記憶が残っているな? カトリーヌはリュカが死んですぐに時を戻したそうだ。生涯に一度しか使えない魔法を使う程リュカが好きらしい。良いか、もうやり直しは出来ぬ。次は絶対にカトリーヌを守りきり、リュカも死ぬな。自分の身も大事にせよ。でないとカトリーヌが泣く。後で聞き取りを行うから、知っている事を全て話せ」
「かしこまりました」
「我々は準備があるので出る。急がねばならぬからな。10分だけやる。2人で話せ。カトリーヌ、今度こそ幸せになってくれ。本当に、すまなかった」
「お父様! 待って! わたくしと婚約したらリュカが魅了されます。クリストフ様なら耐えられましたけど、リュカがあんな風になるなんて耐えられません!」
「すぐにルイーズの魅了を封じる手段を考える。それから、転移もな。だから安心してくれ。それに、きっとリュカに魅了は効かない」
「効かないって……そんな事ある訳……」
「リュカが記憶を保持したまま時を戻っているのが証拠だ。リュカは、父親にも母親にも王家の血が流れている。だから、性転換と特殊魔法の無効化という2つの魔法が使える。鑑定を弾き飛ばしたから、3人で一斉に鑑定してようやく判明したそうだぞ。あとは2人で話せ。リュカ、分かっているだろうが身体が若返っておるし、まだ婚約は成っていない」
「心得ております。婚約が成立するまでは、カトリーヌ姫には指一本触れません」
「え……手も繋いでくれないの?!」
「手を繋ぐことだけは許す。それではな。そんな事を言うなんて、やはりカトリーヌを幸せに出来るのはリュカのようだ。すぐ手続きを進める」
「リュカ、カトリーヌをよろしくね」
そう言って、両親は部屋を出てしまいました。
「10分したらノックをして中に入れ。それまでは誰も入れるな」
お父様の命令が聞こえます。だけど、リュカから目が離せなくて頭に入ってきません。
ドアの閉まる音がした瞬間に、リュカがわたくしの手を握り締めてくれました。
「リュカ・デ・ロドラです。お呼びにより参上致しました」
「入れ」
リュカが入って来ると、以前より少し幼い顔立ちに過去に戻れたのだと実感しました。元気に動いていて、わたくしに笑いかけてくれます。良かった……。過去に戻って本当に良かった……。
気が付くと、涙が溢れていました。
「カティ、俺は生きてるから。大丈夫。だから、泣かないで」
「ホントに、生きてる? どこも怪我してない?」
「大丈夫だよ。どこも痛くない。ちゃんと身体は動く。カティがずっと治してくれてたから。なぁ、あの後どうなったんだ? 気を失ったみたいで、カティを守れなくてごめん。次は絶対守るから。本当に無事で良かった。あの後、カティは国王陛下が助けてくれたんだよな? 伝達用の鳥が飛んでたからもうすぐ来るとは思ってたんだ。急いで手紙を出して良かった」
「リュカ……? ねぇ、貴方の腕をわたくしが治したのよね?」
16歳のリュカが怪我をした時は、わたくしは安全な所に居ました。どうしてそんなにわたくしを心配しているの?
「気が付いたら騎士の詰所で寝てたんだ。俺、また腕が取れてたのか? まぁ、今は治ってるなら良いだろ。そんな事よりカティはどうやって帰って来たんだ?」
おかしいですわ、リュカの距離感が近いです。まるで、リュカが死ぬ寸前のようです……それに、先程の発言は……まさか……。
「お父様……わたくしの魔法は、時を戻るのですわよね? あっておりますわよね? 記憶は、わたくししか残らないのではなかったのですか? わたくしは、現在15歳。もうすぐ、16歳ですわよね?」
「あ、ああ……あっている。明日はカトリーヌの16歳の誕生日だ」
リュカは、わたくしの年齢を聞いて慌ててわたくしから離れました。
「失礼致しました。カトリーヌ姫がご無事で何よりです」
「……やはりリュカが適任だな。リュカよ、カトリーヌと結婚する気はあるか?」
「はい、もちろんあります!」
「すぐにロドラ伯爵を呼べ。カトリーヌの誕生日パーティーで正式に婚約を発表する」
「お父様! 待って!」
「リュカなら大丈夫だ。クリストフ様のようにはならない。リュカよ、ルカになれるか?」
「はい。もちろんです」
リュカはすぐにルカになりました。……あれ? リュカはこの年齢では魔法の事を知らなかった筈ですわよね?
「やはりそうか。リュカ、よく聞け。カトリーヌは生涯に一度だけ時を戻す魔法が使える。カトリーヌは魔法を使い未来から戻って来た。リュカ、お前は記憶が残っているな? カトリーヌはリュカが死んですぐに時を戻したそうだ。生涯に一度しか使えない魔法を使う程リュカが好きらしい。良いか、もうやり直しは出来ぬ。次は絶対にカトリーヌを守りきり、リュカも死ぬな。自分の身も大事にせよ。でないとカトリーヌが泣く。後で聞き取りを行うから、知っている事を全て話せ」
「かしこまりました」
「我々は準備があるので出る。急がねばならぬからな。10分だけやる。2人で話せ。カトリーヌ、今度こそ幸せになってくれ。本当に、すまなかった」
「お父様! 待って! わたくしと婚約したらリュカが魅了されます。クリストフ様なら耐えられましたけど、リュカがあんな風になるなんて耐えられません!」
「すぐにルイーズの魅了を封じる手段を考える。それから、転移もな。だから安心してくれ。それに、きっとリュカに魅了は効かない」
「効かないって……そんな事ある訳……」
「リュカが記憶を保持したまま時を戻っているのが証拠だ。リュカは、父親にも母親にも王家の血が流れている。だから、性転換と特殊魔法の無効化という2つの魔法が使える。鑑定を弾き飛ばしたから、3人で一斉に鑑定してようやく判明したそうだぞ。あとは2人で話せ。リュカ、分かっているだろうが身体が若返っておるし、まだ婚約は成っていない」
「心得ております。婚約が成立するまでは、カトリーヌ姫には指一本触れません」
「え……手も繋いでくれないの?!」
「手を繋ぐことだけは許す。それではな。そんな事を言うなんて、やはりカトリーヌを幸せに出来るのはリュカのようだ。すぐ手続きを進める」
「リュカ、カトリーヌをよろしくね」
そう言って、両親は部屋を出てしまいました。
「10分したらノックをして中に入れ。それまでは誰も入れるな」
お父様の命令が聞こえます。だけど、リュカから目が離せなくて頭に入ってきません。
ドアの閉まる音がした瞬間に、リュカがわたくしの手を握り締めてくれました。
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