完璧令嬢が仮面を外す時

編端みどり

文字の大きさ
上 下
11 / 27

10.マーク視点2

しおりを挟む
マーガレットを十年も縛り付けておいて、あっさり他の女に靡くような奴と比べちゃいけねぇのは分かってるけどよ。俺は王太子より魅力がある男だと思うぜ。

公爵令嬢にアプローチされた事もあるし、伯爵家くらいなら、娘を差し出すから融資してくれって言ってくる。

全部丁重にお断りしてるけどな。俺が欲しいのは、マーガレットだけだから。

「幼い頃、マーガレットに助けて貰った恩は充分返せたと思うぞ。わざわざ娘の行く末まで心配して頂かなくても構わない」

公爵様の暗い声を聞いた瞬間、背中に一筋の汗が流れ落ちた。

あの事は、誰も知らなかったはずなのに。

淡々と微笑む公爵様は、俺に一枚の紙を手渡した。そこには、俺の生い立ちが事細かに書かれている。見覚えのある字だ。

……ダニエルさんか。

「本音を言え」

公爵様の圧がすげぇ。俺は覚悟を決めて、口を開いた。

「……俺は……出会った時からずっとマーガレットお嬢様が好きでした。彼女を守りたくて……商人になったんです。お願いです。俺にマーガレットお嬢様を口説く許可を下さい」

「お前は、平民だ」

「必要なら爵位を用意します!」

必死で訴える。金で用意できるものならなんでも用意してやる!

「……この国の爵位に、マークが汗水垂らして稼いだ金を出す価値はない」

公爵様が微かな笑みを浮かべた。ルーク様が悔しそうに口を開く。

「マーガレットは貴族に向いてない。お前が一生マーガレットしか愛さないと誓うのなら、我らの至宝を譲ってやる。ただし、マーガレットがお前を認めたら。だ。私は全力で邪魔させてもらう。少なくとも、現実の見えてない能天気な男よりお前の方が数倍良い。もう一人、良い候補がいたのだが……諦めるそうだ」

「……は……え……?」

なんで俺、簡単に認められてんの?!
もう一人の候補って、ダニエルさんだよな?!

「なんだその間抜けな顔は。凄腕商人ではなかったのか? 我が家より多くの資産を持ち、マーガレットの事を第一に考え、体を鍛えていて頭もいい。なにより、マーガレット以外の女性に一切靡かない。条件としては充分だろう。さっさと口説け。マーガレットは婚約破棄で良い。破棄なら、違約金を求められる。強欲な王家はすんなり婚約破棄を受け入れるだろうよ。もちろんお前が違約金を払ってくれるんだろう? 独立すれば、マーガレットの価値が上がって手に入らなくなるぞ」

「……かしこまりました。全力でやらせて頂きます。違約金も、もちろん私が払います。ハリソン家の至宝を手に入れる為なら、全財産を払っても構いません。金はまた、稼げば良いのですから」

「そうか。潔いな。よし、今度マーガレットも交えて夕食でもどうだ?」

「喜んで」

……俺は商人だ。目の前の宝石を逃すほど愚かじゃない。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

君のためだと言われても、少しも嬉しくありません

みみぢあん
恋愛
子爵家の令嬢マリオンの婚約者、アルフレッド卿が王族の護衛で隣国へ行くが、任期がながびき帰国できなくなり婚約を解消することになった。 すぐにノエル卿と2度目の婚約が決まったが、結婚を目前にして家庭の事情で2人は……    暗い流れがつづきます。 ざまぁでスカッ… とされたい方には不向きのお話です。ご注意を😓

私の婚約者は、妹を選ぶ。

❄️冬は つとめて
恋愛
【本編完結】私の婚約者は、妹に会うために家に訪れる。 【ほか】続きです。

純白の牢獄

ゆる
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

嫌われ令嬢は戦地に赴く

りまり
恋愛
 家族から疎まれて育ったレイラは家令やメイドにより淑女としてのマナーや一人立ちできるように剣術をならった。  あえて平民として騎士学校に通うようレイラはこの国の王子さまと仲良くなったのだが彼は姉の婚約者だったのだ。  

王命って何ですか?

まるまる⭐️
恋愛
その日、貴族裁判所前には多くの貴族達が傍聴券を求め、所狭しと行列を作っていた。 貴族達にとって注目すべき裁判が開かれるからだ。 現国王の妹王女の嫁ぎ先である建国以来の名門侯爵家が、新興貴族である伯爵家から訴えを起こされたこの裁判。 人々の関心を集めないはずがない。 裁判の冒頭、証言台に立った伯爵家長女は涙ながらに訴えた。 「私には婚約者がいました…。 彼を愛していました。でも、私とその方の婚約は破棄され、私は意に沿わぬ男性の元へと嫁ぎ、侯爵夫人となったのです。 そう…。誰も覆す事の出来ない王命と言う理不尽な制度によって…。 ですが、理不尽な制度には理不尽な扱いが待っていました…」 裁判開始早々、王命を理不尽だと公衆の面前で公言した彼女。裁判での証言でなければ不敬罪に問われても可笑しくはない発言だ。 だが、彼女はそんな事は全て承知の上であえてこの言葉を発した。   彼女はこれより少し前、嫁ぎ先の侯爵家から彼女の有責で離縁されている。原因は彼女の不貞行為だ。彼女はそれを否定し、この裁判に於いて自身の無実を証明しようとしているのだ。 次々に積み重ねられていく証言に次第に追い込まれていく侯爵家。明らかになっていく真実を傍聴席の貴族達は息を飲んで見守る。 裁判の最後、彼女は傍聴席に向かって訴えかけた。 「王命って何ですか?」と。 ✳︎不定期更新、設定ゆるゆるです。

私の婚約者はお姉さまが好きなようです~私は国王陛下に愛でられました~

安奈
恋愛
「マリア、私との婚約はなかったことにしてくれ。私はお前の姉のユリカと婚約したのでな」 「マリア、そういうことだから。ごめんなさいね」 伯爵令嬢マリア・テオドアは婚約者のカンザス、姉のユリカの両方に裏切られた。突然の婚約破棄も含めて彼女は泣き崩れる。今後、屋敷でどんな顔をすればいいのかわからない……。 そこへ現れたのはなんと、王国の最高権力者であるヨハン・クラウド国王陛下であった。彼の救済を受け、マリアは元気づけられていく。そして、側室という話も出て来て……どうやらマリアの人生は幸せな方向へと進みそうだ。

【完結済】いじめ?そんなこと出来ないわよ

curosu
恋愛
【書きたい場面だけシリーズ】 なんか、いじめてたとかどうとか言われてますが、私がいじめるのは不可能ですわよ。

処理中です...