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84.追放テイマーと世界を超える方法
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次の日の朝。
私は刑事さんの取り調べを受けた後、病院に検査入院することになった。
半年も行方不明だったから念の為なんだって。
あはは、別にすごく健康なんだけね。
「もう。だまって入院してなさいよ。どうせ、ここが一番安全なんだから」
「なにそれ……」
ベッドで悩んでいた私の横に、エリエル様がぴょんと飛び乗ってきた。
「だって。ショコラちゃんは、この世界の有名人なんだから」
「えー、なにそれ。こっちでは普通に暮らしてたんだからね」
「ほら、さっき刑事さんも言ってたじゃない?」
刑事さん……かぁ…。
私が異世界に連れていかれた、あの日。
教室で光の柱に包まれたのは、私を含めて5人いたんだって。
――でも。
帰ってきたのは私一人。
だから、うん。
色々聞きたいよね……。
私を担当した刑事さんは、二人ともすごく親切にしてくれて……。
だから余計にウソをついてるのがつらくて。
いっそ、いっそさ。
『異世界に行って転生してました』って言えたら楽だったのに……。
あーあと。
危険だから一人で外出は絶対しないように言われたけど。
……なにが危険なんだろ?
「ねぇ、やっぱりさ。私以外のクラスメイトもみんな異世界に行ってるの?」
「多分そうなんじゃないかしら?」
「えー、多分ってなにさ……」
「だからぁ。異世界転移は、もっと上位の女神の仕事なのよねぇ」
うーん……。
「じゃあさ。刑事さんの言ってた危険っていうのは?」
「あー、それはこれよ!」
エリエル様は、横に転がった姿勢で、ベッドの横に置いてあったリモコンを操作する。
ぱっと病室のテレビが眩しく光った。
画面の中のコメンテーター達は、真剣に何かを協議してるみたい。
『このネットの映像、皆さんはどう思いますか?』
『特撮でしょう。考えてみてくださいよ、人が消えたり出現したりすると思います?』
『しかし、クラスメイトの目撃証言もあるんですよ。やっぱり異世界へ……』
『いやー。どちらの映像も、ホントに可愛くて。新しいアイドルの売り出し方じゃないんですかねぇ。ボク保存しましたよ』
え。これって……。
うわ。
うわ。
うわぁぁぁぁぁ。
昨日ヒナちゃんが見せてくれた、私の映像なんだけど!?
何で全国放送のテレビで流れてるのよ!!
『どちらにしても、見つかってよかったですよね』
『現在は検査入院をされているそうで、病院の前からのライブ画像、つながりますか?』
『ハイ、こちら病院の前です。ごらんください、すごい人だかりができています!』
テレビの画面が切り替わって。
大勢の人が映し出された。
カメラやマイクをもったマスコミっぽい人もいっぱいいるんだけど。
他にもね。
剣や杖をもってて、ファンタジーっぽい衣装を着た人たちがたくさんいる。
スマホを片手に記念撮影していて、まるでお祭りのような雰囲気。
……まるでコスプレ会場みたいなんですけど!?
「ちょっと、なにこれ!!」
「ね? もう大騒ぎみたいなのよ。すっかり人気者よねぇ、ショコラちゃんったら」
「だ、誰のせいですか!?」
どうするのよこれ。
外歩けないじゃん。
病院にもすごく迷惑かかってるし。
テレビには、マスコミも含めてみんな警察に追い払われている映像が映し出されている。
「まぁ。あんな動画見たら、みんな異世界行けるって信じちゃうよね~」
「……希望したら行けたりするの?」
「あはは。まさか。そんな簡単に行けるわけないでしょ?」
「はぁ、だよねぇ……」
私は枕に顔をうずめた。
もし、希望者が全員異世界に行けるなら……。
アニメやラノベ好きがたくさんいなくなりそうだし。
まぁ、私も前世で大好きだったけどさぁ。
同級生の藤原君とよく異世界転移とか転生したらどうするとか話してたな。
懐かしい。
まさか本当に異世界に行くなんて思わなかったけどね!!
しかも、転移して転生とか……。
「てことで。おとなしく入院してて正解じゃない?」
「納得いかないんだけど!!」
「いいじゃないの。ゆっくりしてようよ。どうせ帰り方なんて分からないんだし~」
ベッドの隣で一緒にころがっているエリエル様と目が合った。
澄んだ大きな瞳、金色に揺れるふわふわの髪。
もう……ちょっとこれ。
反則なくらい……可愛いんだから。
――え。
――あれ?
今、何か変なこと言わなかった?
「ねぇ……帰り方って、まさか向こうの世界に戻れないってことじゃないよね?」
「え? そうよ? あたり前じゃない」
自慢げに瞳を輝かせるエリエル様。
……。
…………。
「おかしくないですか! 意味ありげに『選ぶのはアナタ』みたいなこと言ってたじゃないですか!」
「選ぶのはショコラちゃんなんだけど、帰る方法なんて私知らないわよ?」
……ウソでしょ。
「だから言ってるじゃない。転移はもっと上の女神の仕事なのよぉ」
「じゃあ、女神の試練ってなんなんですか!!」
「それは言っちゃいけない決まりなのよ。ごめんねー!」
「うそですよね! そこまで言ってナイショなんですか!!」
両肘をついてイタズラっぽく笑っていたエリエル様をおもいきりゆする。
「何か方法ないんですか?!」
「ちょっと、落ち着いて! 落ちちゃうってば!」
どうしよう。
えーとえーと。
行くときも帰ってきた時も教室だったんだから、あの場所になにか手がかりが……。
「ねぇ、ちょうどいいじゃない。迷ってるんでしょ? どっちの世界を選ぶか」
「え?」
エリエル様の言葉に、昨日のヒナちゃんの悲鳴のような泣き声を思い出した。
だって。
でも私は……。
「私の経験だと、どうせそのうち選ばされるわよ。焦らなくて全然平気、平気!」
私はそのまま、再びベッドに倒れ込むと、毛布にくるまった。
ノー!
ノーだよ、これ。
なんでこんな展開になってるのよ!!!
私は刑事さんの取り調べを受けた後、病院に検査入院することになった。
半年も行方不明だったから念の為なんだって。
あはは、別にすごく健康なんだけね。
「もう。だまって入院してなさいよ。どうせ、ここが一番安全なんだから」
「なにそれ……」
ベッドで悩んでいた私の横に、エリエル様がぴょんと飛び乗ってきた。
「だって。ショコラちゃんは、この世界の有名人なんだから」
「えー、なにそれ。こっちでは普通に暮らしてたんだからね」
「ほら、さっき刑事さんも言ってたじゃない?」
刑事さん……かぁ…。
私が異世界に連れていかれた、あの日。
教室で光の柱に包まれたのは、私を含めて5人いたんだって。
――でも。
帰ってきたのは私一人。
だから、うん。
色々聞きたいよね……。
私を担当した刑事さんは、二人ともすごく親切にしてくれて……。
だから余計にウソをついてるのがつらくて。
いっそ、いっそさ。
『異世界に行って転生してました』って言えたら楽だったのに……。
あーあと。
危険だから一人で外出は絶対しないように言われたけど。
……なにが危険なんだろ?
「ねぇ、やっぱりさ。私以外のクラスメイトもみんな異世界に行ってるの?」
「多分そうなんじゃないかしら?」
「えー、多分ってなにさ……」
「だからぁ。異世界転移は、もっと上位の女神の仕事なのよねぇ」
うーん……。
「じゃあさ。刑事さんの言ってた危険っていうのは?」
「あー、それはこれよ!」
エリエル様は、横に転がった姿勢で、ベッドの横に置いてあったリモコンを操作する。
ぱっと病室のテレビが眩しく光った。
画面の中のコメンテーター達は、真剣に何かを協議してるみたい。
『このネットの映像、皆さんはどう思いますか?』
『特撮でしょう。考えてみてくださいよ、人が消えたり出現したりすると思います?』
『しかし、クラスメイトの目撃証言もあるんですよ。やっぱり異世界へ……』
『いやー。どちらの映像も、ホントに可愛くて。新しいアイドルの売り出し方じゃないんですかねぇ。ボク保存しましたよ』
え。これって……。
うわ。
うわ。
うわぁぁぁぁぁ。
昨日ヒナちゃんが見せてくれた、私の映像なんだけど!?
何で全国放送のテレビで流れてるのよ!!
『どちらにしても、見つかってよかったですよね』
『現在は検査入院をされているそうで、病院の前からのライブ画像、つながりますか?』
『ハイ、こちら病院の前です。ごらんください、すごい人だかりができています!』
テレビの画面が切り替わって。
大勢の人が映し出された。
カメラやマイクをもったマスコミっぽい人もいっぱいいるんだけど。
他にもね。
剣や杖をもってて、ファンタジーっぽい衣装を着た人たちがたくさんいる。
スマホを片手に記念撮影していて、まるでお祭りのような雰囲気。
……まるでコスプレ会場みたいなんですけど!?
「ちょっと、なにこれ!!」
「ね? もう大騒ぎみたいなのよ。すっかり人気者よねぇ、ショコラちゃんったら」
「だ、誰のせいですか!?」
どうするのよこれ。
外歩けないじゃん。
病院にもすごく迷惑かかってるし。
テレビには、マスコミも含めてみんな警察に追い払われている映像が映し出されている。
「まぁ。あんな動画見たら、みんな異世界行けるって信じちゃうよね~」
「……希望したら行けたりするの?」
「あはは。まさか。そんな簡単に行けるわけないでしょ?」
「はぁ、だよねぇ……」
私は枕に顔をうずめた。
もし、希望者が全員異世界に行けるなら……。
アニメやラノベ好きがたくさんいなくなりそうだし。
まぁ、私も前世で大好きだったけどさぁ。
同級生の藤原君とよく異世界転移とか転生したらどうするとか話してたな。
懐かしい。
まさか本当に異世界に行くなんて思わなかったけどね!!
しかも、転移して転生とか……。
「てことで。おとなしく入院してて正解じゃない?」
「納得いかないんだけど!!」
「いいじゃないの。ゆっくりしてようよ。どうせ帰り方なんて分からないんだし~」
ベッドの隣で一緒にころがっているエリエル様と目が合った。
澄んだ大きな瞳、金色に揺れるふわふわの髪。
もう……ちょっとこれ。
反則なくらい……可愛いんだから。
――え。
――あれ?
今、何か変なこと言わなかった?
「ねぇ……帰り方って、まさか向こうの世界に戻れないってことじゃないよね?」
「え? そうよ? あたり前じゃない」
自慢げに瞳を輝かせるエリエル様。
……。
…………。
「おかしくないですか! 意味ありげに『選ぶのはアナタ』みたいなこと言ってたじゃないですか!」
「選ぶのはショコラちゃんなんだけど、帰る方法なんて私知らないわよ?」
……ウソでしょ。
「だから言ってるじゃない。転移はもっと上の女神の仕事なのよぉ」
「じゃあ、女神の試練ってなんなんですか!!」
「それは言っちゃいけない決まりなのよ。ごめんねー!」
「うそですよね! そこまで言ってナイショなんですか!!」
両肘をついてイタズラっぽく笑っていたエリエル様をおもいきりゆする。
「何か方法ないんですか?!」
「ちょっと、落ち着いて! 落ちちゃうってば!」
どうしよう。
えーとえーと。
行くときも帰ってきた時も教室だったんだから、あの場所になにか手がかりが……。
「ねぇ、ちょうどいいじゃない。迷ってるんでしょ? どっちの世界を選ぶか」
「え?」
エリエル様の言葉に、昨日のヒナちゃんの悲鳴のような泣き声を思い出した。
だって。
でも私は……。
「私の経験だと、どうせそのうち選ばされるわよ。焦らなくて全然平気、平気!」
私はそのまま、再びベッドに倒れ込むと、毛布にくるまった。
ノー!
ノーだよ、これ。
なんでこんな展開になってるのよ!!!
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