37 / 95
37.追放テイマーと魔界の主
しおりを挟む
フォルト村の外れの丘のふもと。
私の家まで伸びている一本道の近くで、私は自分の目を疑っていた。
空き地にダリアちゃんと一緒に立っているのは、一人のイケメンさん。
少し長い黒髪が風に揺れている。
切れ長な瞳が嬉しそうに私を見つめていた。
そのひきしまったお腹には、調教の証、光り輝く魔法陣。
「どうしたんだい? マイ、ヒロイン?」
「……えーと」
「あ、あ、あれ? やっぱり、ご主人様のほうがよかったのかな?」
マオウデさんは、顔を赤くして目を泳がせている。
……。
…………。
「どっちもお断りです! とりあえず、お腹をしまってください!!」
「そ、そうか。すまない!」
私の視線に気づいたみたいで、マオウデさんも慌ててシャツのボタンをとめはじめた。
「お姉さま、これってどういうこと?」
「分からないわ。人には絶対使えないんだけど」
私たちが魔物とか動物って、ひとまとめで呼んでいる生き物には、実はちゃんとした区別がある。
『動物』っていうのは、馬とか鳥とか魔力をあまり持っていない生き物。
チョコくんとアイスちゃんがこれだよね。
テイマーは大体、この動物を使役獣として仲間にしてるんだよね。
魔力をもっている動物は『魔獣』っていわれていて、普通の動物よりも、ううん、ベテラン冒険者よりも強い。
中には、ドラゴンとか、ナイトメア、雪狼なんていう伝説の生き物までいるのがこの種類。
調教なんてまず無理。近づくだけで危険だから。
まぁ、スキルを使えたとしても、ほぼ成功しないんじゃないかな?
あとは、『魔物』。
人間以外の亜人で言葉が通じない種族のこと。
独自の言葉と文化をもってるんだって。
人間くらいの大きさの小鬼ゴブリンとか、犬みたいな顔をしているコボルトとかがこれね。
ちなみに、その魔物を束ねているのが、魔族っていわれているエリート種族で、その王様が『魔王』。
魔物にも、一応テイムスキルが使えるみたいなんだけど、成功した人なんていないんじゃないかなぁ。
「……お姉さま?」
「あ、ごめんね。えーと、マオウデさんってもしかして、竜に変身できたりします?」
「竜? そんな面白いスキルもってたりしないよ?」
面白いスキルって……。
一応念の為聞いてみたんだけど、この国の王族じゃないみたい。
確かに、ベリル王子やミルフィナちゃんとは似てないもんね。
うーん……?
私が悩んでいると、突然目の前の空間がゆがみだした。
なにこれ。
今度は何が起きたのよ!?
「うふふ、魔王様。無事に目的の人物にはお会い出来ましたか?」
誰もいなかったはずの場所に、一人の女性が現れた。
長い黒髪、こぼれるような艶かしい笑顔。
同性の私もドキッとするような美しさに、思わず見とれてしまう。
「メルクル、待っておれといったはずだぞ!」
「魔王様がそんなにお気に入りになられた人物なんて、会ってみたいじゃないですか」
「うぉぉ。ば、ばか。お前こういうところで言うかな? 言うかな?」
「あら? えーと、ショコラちゃんよね?」
彼女は私に気づくと、ゆっくり近づいてきた。
白くてキレイな指が私の頬に触れる。
「うん、すっかり呪いは解けてるみたいね。よかったわ」
彼女は私の瞳をのぞき込むと、にっこりと笑った。
「メルクルさん、おひさしぶりです。あの時はありがとうございました」
周囲がバラのような香りに包まれている、
私はすぐ目の前の美しい笑顔にドキドキしながら、なんとかお礼を言った。
「うふふ、いいのよ。あんな卑怯なスキル許せないものね」
その卑怯なスキル……魅了をつかったのは……勇者様なんだよね。
なんでそんなことを……。
「ふーん? それで、魔王様がお会いしたかった人物って、ショコラちゃん? それともこの小さなレディーかしら?」
メルクルさんは、嬉しそうに私と隣にいたダリアちゃんを見比べる。
「そうなんだ、メルクルよ。これを見よ!」
マオウデさんは、シャツのボタンを思い切り飛ばして、せっかくしまったお腹を再び見せつけた。
「ま、魔王様? これはまさか……」
「これは、オレと彼女の愛の証だ!」
「本当にごめんなさい。なんでテイムになったかわからないんですけど!」
私は慌てて、頭を下げた。
……人につかうなんて、勇者様の魅了より問題だよね。
……どうしよう。
「……ねぇ、魔王様。魔王様をテイムしたってことは、彼女が魔界のトップってことかしら?」
「んー、そうなるのかなぁ? なにせオレのご主人様だし」
「うふふ、魔王様、喋り方が素に戻ってますわ」
「うむ。そういうことになるな!!」
さっきから、二人とも魔王様とか魔界とか。
これってなりきりコスプレなんだよね?
賢者アレス様だってそういってたんだから、間違いないんだよね?
「そうでしたか。失礼しました、ショコラ様。あらためまして、魔王軍四天王、水の魔性メルクルです」
彼女は、目の前でひざまずくと、私の手をとってキスをしてきた。
「我が君に、心からの忠誠を捧げます」
すぐ横には、腹筋と魔法陣を見せつけるように腰に手を当てて立っているマオウデさんと、呆然としているダリアちゃん。
なにこれ?
どうなってるの?!
私の頭がおいついてないんですけど!!
私の家まで伸びている一本道の近くで、私は自分の目を疑っていた。
空き地にダリアちゃんと一緒に立っているのは、一人のイケメンさん。
少し長い黒髪が風に揺れている。
切れ長な瞳が嬉しそうに私を見つめていた。
そのひきしまったお腹には、調教の証、光り輝く魔法陣。
「どうしたんだい? マイ、ヒロイン?」
「……えーと」
「あ、あ、あれ? やっぱり、ご主人様のほうがよかったのかな?」
マオウデさんは、顔を赤くして目を泳がせている。
……。
…………。
「どっちもお断りです! とりあえず、お腹をしまってください!!」
「そ、そうか。すまない!」
私の視線に気づいたみたいで、マオウデさんも慌ててシャツのボタンをとめはじめた。
「お姉さま、これってどういうこと?」
「分からないわ。人には絶対使えないんだけど」
私たちが魔物とか動物って、ひとまとめで呼んでいる生き物には、実はちゃんとした区別がある。
『動物』っていうのは、馬とか鳥とか魔力をあまり持っていない生き物。
チョコくんとアイスちゃんがこれだよね。
テイマーは大体、この動物を使役獣として仲間にしてるんだよね。
魔力をもっている動物は『魔獣』っていわれていて、普通の動物よりも、ううん、ベテラン冒険者よりも強い。
中には、ドラゴンとか、ナイトメア、雪狼なんていう伝説の生き物までいるのがこの種類。
調教なんてまず無理。近づくだけで危険だから。
まぁ、スキルを使えたとしても、ほぼ成功しないんじゃないかな?
あとは、『魔物』。
人間以外の亜人で言葉が通じない種族のこと。
独自の言葉と文化をもってるんだって。
人間くらいの大きさの小鬼ゴブリンとか、犬みたいな顔をしているコボルトとかがこれね。
ちなみに、その魔物を束ねているのが、魔族っていわれているエリート種族で、その王様が『魔王』。
魔物にも、一応テイムスキルが使えるみたいなんだけど、成功した人なんていないんじゃないかなぁ。
「……お姉さま?」
「あ、ごめんね。えーと、マオウデさんってもしかして、竜に変身できたりします?」
「竜? そんな面白いスキルもってたりしないよ?」
面白いスキルって……。
一応念の為聞いてみたんだけど、この国の王族じゃないみたい。
確かに、ベリル王子やミルフィナちゃんとは似てないもんね。
うーん……?
私が悩んでいると、突然目の前の空間がゆがみだした。
なにこれ。
今度は何が起きたのよ!?
「うふふ、魔王様。無事に目的の人物にはお会い出来ましたか?」
誰もいなかったはずの場所に、一人の女性が現れた。
長い黒髪、こぼれるような艶かしい笑顔。
同性の私もドキッとするような美しさに、思わず見とれてしまう。
「メルクル、待っておれといったはずだぞ!」
「魔王様がそんなにお気に入りになられた人物なんて、会ってみたいじゃないですか」
「うぉぉ。ば、ばか。お前こういうところで言うかな? 言うかな?」
「あら? えーと、ショコラちゃんよね?」
彼女は私に気づくと、ゆっくり近づいてきた。
白くてキレイな指が私の頬に触れる。
「うん、すっかり呪いは解けてるみたいね。よかったわ」
彼女は私の瞳をのぞき込むと、にっこりと笑った。
「メルクルさん、おひさしぶりです。あの時はありがとうございました」
周囲がバラのような香りに包まれている、
私はすぐ目の前の美しい笑顔にドキドキしながら、なんとかお礼を言った。
「うふふ、いいのよ。あんな卑怯なスキル許せないものね」
その卑怯なスキル……魅了をつかったのは……勇者様なんだよね。
なんでそんなことを……。
「ふーん? それで、魔王様がお会いしたかった人物って、ショコラちゃん? それともこの小さなレディーかしら?」
メルクルさんは、嬉しそうに私と隣にいたダリアちゃんを見比べる。
「そうなんだ、メルクルよ。これを見よ!」
マオウデさんは、シャツのボタンを思い切り飛ばして、せっかくしまったお腹を再び見せつけた。
「ま、魔王様? これはまさか……」
「これは、オレと彼女の愛の証だ!」
「本当にごめんなさい。なんでテイムになったかわからないんですけど!」
私は慌てて、頭を下げた。
……人につかうなんて、勇者様の魅了より問題だよね。
……どうしよう。
「……ねぇ、魔王様。魔王様をテイムしたってことは、彼女が魔界のトップってことかしら?」
「んー、そうなるのかなぁ? なにせオレのご主人様だし」
「うふふ、魔王様、喋り方が素に戻ってますわ」
「うむ。そういうことになるな!!」
さっきから、二人とも魔王様とか魔界とか。
これってなりきりコスプレなんだよね?
賢者アレス様だってそういってたんだから、間違いないんだよね?
「そうでしたか。失礼しました、ショコラ様。あらためまして、魔王軍四天王、水の魔性メルクルです」
彼女は、目の前でひざまずくと、私の手をとってキスをしてきた。
「我が君に、心からの忠誠を捧げます」
すぐ横には、腹筋と魔法陣を見せつけるように腰に手を当てて立っているマオウデさんと、呆然としているダリアちゃん。
なにこれ?
どうなってるの?!
私の頭がおいついてないんですけど!!
1
お気に入りに追加
250
あなたにおすすめの小説
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
隣国は魔法世界
各務みづほ
ファンタジー
【魔法なんてあり得ないーー理系女子ライサ、魔法世界へ行く】
隣接する二つの国、科学技術の発達した国と、魔法使いの住む国。
この相反する二つの世界は、古来より敵対し、戦争を繰り返し、そして領土を分断した後に現在休戦していた。
科学世界メルレーン王国の少女ライサは、人々の間で禁断とされているこの境界の壁を越え、隣国の魔法世界オスフォード王国に足を踏み入れる。
それは再び始まる戦乱の幕開けであった。
⚫︎恋愛要素ありの王国ファンタジーです。科学vs魔法。三部構成で、第一部は冒険編から始まります。
⚫︎異世界ですが転生、転移ではありません。
⚫︎挿絵のあるお話に◆をつけています。
⚫︎外伝「隣国は科学世界 ー隣国は魔法世界 another storyー」もよろしくお願いいたします。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
辺境伯令嬢に転生しました。
織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。
アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。
書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる