121 / 201
魔法学校高等部編
34.お嬢様と竜のパートナー
しおりを挟む
「それじゃあ、乗るからね? 魔法で絶対落ちないから安心して」
私は、金色の飛竜、アンネローゼちゃんの頭を優しくなでる。
(本当に? 途中で落ちたら大変なことになるわよ?)
「もう! なんでそんなに怖がるのさ!」
テイミング魔法の特徴は。
魔法をかけた動物を、人が乗れるくらい大きくすること。
その動物と仲良くなれること。
それと。
飛空船やキナコと同じような魔法の結界が張られるから。
乗っている人は自分から降りない限り、絶対に落ちないこと。
だから。
どんなに空中で回転しても、落ちることは絶対にないから!
「それにね、もしなにかあっても、キナコが助けてくれるから平気だよ!」
私は、隣にいるキナコをちらっと見る。
彼女は嬉しそうに何度もうなずいた。
「そうですよ! ボクはご主人様のパートナーだからね!」
自慢げに胸を張るキナコ。
なんだか……可愛い。
私は、おもわずキナコの頭を軽くなでる。
ツインテールの彼女の髪が、嬉しそうにぴょんと飛び跳ねた。
アンネローゼちゃんは、一瞬、リュート様を見たあと。
長い首を下げて、私の耳元で小さな声でつぶやいた。
(……昔、落ちたのよ……)
「……え?」
(だから、昔落ちたのよ。……あの子が……)
リュート様に視線をうつすと。
彼は子供のような瞳でこちらを眺めている。
「じゃあ、リュート様は貴女に乗ったことがあるのね?」
(……すごく小さな頃に)
「それって、リュート様がいくつくらいの時?」
(三歳くらいだったかしら……)
……。
…………。
えーと?
それは……。
さすがに、乗れないんじゃないかなぁ……。
(小さかった彼が背中に登ってきたの。それはもう嬉しかったわ。でも……)
アンネローゼちゃんは一瞬嬉しそうな表情を見せた後。
頭を大きくさげてうずくまった。
(興奮した私が飛び上がったら、彼が落ちてしまったのよ……)
それって。
子供がイタズラで背中にのって、落ちちゃった的な感じだよね?
ほとんど飛んでないよね?
(……二度とあんな思いをしたくないのよ! だから!)
もう!
私は、興奮する彼女を優しく抱きしめた。
「だから、大丈夫なんだってば。お願い! 信じて!」
アンネローゼちゃんは。
ビックリした表情で目を大きく開くと。
やがて、目を閉じて小さな声でつぶやいた。
(アナタ……とてもやさしい匂いがするのね……)
え。
私なに食べたっけ?
思わず、口をおさえると。
彼女は優しい表情になって微笑んだ。
(いいわ。乗ってちょうだい。私、勇気をだして飛んでみるから)
**********
私を乗せたアンネローゼは、一気に上空まで駆け上がっていく。
やがて雲を抜けると。
満天の星空が広がっていた。
「うわぁ、初めて空を飛んだけど。これは……ちょっとすごいね……」
後ろを振り向くと。
真っ赤な顔で興奮しているリュート様がいる。
ぴったりとくっついた背中から……。
彼の体温とか、ドキドキした心臓の音を感じる。
えーと、つまり。
アンネローゼちゃんの背中の上に。
前側に私が。
その後ろにリュート様が、私につかまって乗っているんだけど……。
……。
…………。
だってね!
飛ぶ直前にアンネローゼちゃんから、切ない声でどうしてもって、お願いされたら。
……断れないじゃん!
「どう? ちゃんと飛べるでしょ?」
アンネローゼちゃんに話しかけると。
彼女は嬉しそうにこちらを振り返って。
嬉しそうに目を細めた。
(リュート様と星空を飛べるなんて夢みたい……)
なんだか。
可愛いな。
「クレナ様、ありがとうございます。こんなにすごい星空は初めて見ました……」
リュート様は。
感動して目にうっすら涙がにじんでいた。
……でも。
「綺麗ですよね、星空って」
うん。わかる。
すっごくよくわかる!
初めての空って、私も感動したもん。
笑顔でリュート様のほうを振り向いた。
「ええ。本当に……。そして、貴女も……」
背中から伝わる、リュート様の鼓動が早くなってる気がする。
貴女って。えーと?
アンネローゼちゃんのことかな。
もう!
これって。パートナーっていうか。
実はずっと好き同士だった幼馴染が、初デートするみたいな感じだよね?
ってことは。
私はお邪魔……かな?
ちらっと横を見ると。
隣をドラゴンの姿をしたキナコが飛んでいる。
「それじゃあ、私はここで失礼しますね。お二人とも頑張って!」
「え? クレナ様?」
私は、改めて魔法をかけなおすと。
アンネローゼちゃんからおもいきり飛び降りた。
「え?!」
(な、なにしてるのよ!)
**********
風を切るような音がして。
二人の姿がすぐに小さくなっていく。
「キナコ、受け止めて!」
「任せて。ご主人様!」
キナコは私の下に回り込むと。
大きな背中で受け止めてくれた。
ふぅ、ちょっとだけ怖かったけど。
さすがキナコ!
すぐに、アンネローゼちゃんとリュート様が追いかけてくる。
「クレナ様、大丈夫ですか?」
(びっくりしたじゃない。ちょっと、大丈夫なの?)
私は、二人の横を平行して飛ぶと。
笑顔で話しかけた。
「ほら、ちゃんと二人でも飛べてるじゃない?」
「え?」
(あら、ホントね……)
「でも、この『星空の散歩』は、全て貴女の魔法のおかげですよね?」
リュート様は、すこしアンネローゼちゃんを見た後。
頬を赤くして、私に問いかけてきた。
なんだか、本当に。
初々しいカップルみたい。
「うーん、それもあるんですけど」
私は、唇に指をあてて、考える仕草をしたあと。
ニッコリ微笑んだ。
「でも、いつかきっと。素敵な竜騎士様になれますよ!」
リュート様は。
真っ赤な顔をしてうつむいた。
よし!
乙女ゲーム『ファルシアの星乙女』には全然登場してないイベントだったけど。
多分これで。
熱い友情が……生まれたよね?
私は、金色の飛竜、アンネローゼちゃんの頭を優しくなでる。
(本当に? 途中で落ちたら大変なことになるわよ?)
「もう! なんでそんなに怖がるのさ!」
テイミング魔法の特徴は。
魔法をかけた動物を、人が乗れるくらい大きくすること。
その動物と仲良くなれること。
それと。
飛空船やキナコと同じような魔法の結界が張られるから。
乗っている人は自分から降りない限り、絶対に落ちないこと。
だから。
どんなに空中で回転しても、落ちることは絶対にないから!
「それにね、もしなにかあっても、キナコが助けてくれるから平気だよ!」
私は、隣にいるキナコをちらっと見る。
彼女は嬉しそうに何度もうなずいた。
「そうですよ! ボクはご主人様のパートナーだからね!」
自慢げに胸を張るキナコ。
なんだか……可愛い。
私は、おもわずキナコの頭を軽くなでる。
ツインテールの彼女の髪が、嬉しそうにぴょんと飛び跳ねた。
アンネローゼちゃんは、一瞬、リュート様を見たあと。
長い首を下げて、私の耳元で小さな声でつぶやいた。
(……昔、落ちたのよ……)
「……え?」
(だから、昔落ちたのよ。……あの子が……)
リュート様に視線をうつすと。
彼は子供のような瞳でこちらを眺めている。
「じゃあ、リュート様は貴女に乗ったことがあるのね?」
(……すごく小さな頃に)
「それって、リュート様がいくつくらいの時?」
(三歳くらいだったかしら……)
……。
…………。
えーと?
それは……。
さすがに、乗れないんじゃないかなぁ……。
(小さかった彼が背中に登ってきたの。それはもう嬉しかったわ。でも……)
アンネローゼちゃんは一瞬嬉しそうな表情を見せた後。
頭を大きくさげてうずくまった。
(興奮した私が飛び上がったら、彼が落ちてしまったのよ……)
それって。
子供がイタズラで背中にのって、落ちちゃった的な感じだよね?
ほとんど飛んでないよね?
(……二度とあんな思いをしたくないのよ! だから!)
もう!
私は、興奮する彼女を優しく抱きしめた。
「だから、大丈夫なんだってば。お願い! 信じて!」
アンネローゼちゃんは。
ビックリした表情で目を大きく開くと。
やがて、目を閉じて小さな声でつぶやいた。
(アナタ……とてもやさしい匂いがするのね……)
え。
私なに食べたっけ?
思わず、口をおさえると。
彼女は優しい表情になって微笑んだ。
(いいわ。乗ってちょうだい。私、勇気をだして飛んでみるから)
**********
私を乗せたアンネローゼは、一気に上空まで駆け上がっていく。
やがて雲を抜けると。
満天の星空が広がっていた。
「うわぁ、初めて空を飛んだけど。これは……ちょっとすごいね……」
後ろを振り向くと。
真っ赤な顔で興奮しているリュート様がいる。
ぴったりとくっついた背中から……。
彼の体温とか、ドキドキした心臓の音を感じる。
えーと、つまり。
アンネローゼちゃんの背中の上に。
前側に私が。
その後ろにリュート様が、私につかまって乗っているんだけど……。
……。
…………。
だってね!
飛ぶ直前にアンネローゼちゃんから、切ない声でどうしてもって、お願いされたら。
……断れないじゃん!
「どう? ちゃんと飛べるでしょ?」
アンネローゼちゃんに話しかけると。
彼女は嬉しそうにこちらを振り返って。
嬉しそうに目を細めた。
(リュート様と星空を飛べるなんて夢みたい……)
なんだか。
可愛いな。
「クレナ様、ありがとうございます。こんなにすごい星空は初めて見ました……」
リュート様は。
感動して目にうっすら涙がにじんでいた。
……でも。
「綺麗ですよね、星空って」
うん。わかる。
すっごくよくわかる!
初めての空って、私も感動したもん。
笑顔でリュート様のほうを振り向いた。
「ええ。本当に……。そして、貴女も……」
背中から伝わる、リュート様の鼓動が早くなってる気がする。
貴女って。えーと?
アンネローゼちゃんのことかな。
もう!
これって。パートナーっていうか。
実はずっと好き同士だった幼馴染が、初デートするみたいな感じだよね?
ってことは。
私はお邪魔……かな?
ちらっと横を見ると。
隣をドラゴンの姿をしたキナコが飛んでいる。
「それじゃあ、私はここで失礼しますね。お二人とも頑張って!」
「え? クレナ様?」
私は、改めて魔法をかけなおすと。
アンネローゼちゃんからおもいきり飛び降りた。
「え?!」
(な、なにしてるのよ!)
**********
風を切るような音がして。
二人の姿がすぐに小さくなっていく。
「キナコ、受け止めて!」
「任せて。ご主人様!」
キナコは私の下に回り込むと。
大きな背中で受け止めてくれた。
ふぅ、ちょっとだけ怖かったけど。
さすがキナコ!
すぐに、アンネローゼちゃんとリュート様が追いかけてくる。
「クレナ様、大丈夫ですか?」
(びっくりしたじゃない。ちょっと、大丈夫なの?)
私は、二人の横を平行して飛ぶと。
笑顔で話しかけた。
「ほら、ちゃんと二人でも飛べてるじゃない?」
「え?」
(あら、ホントね……)
「でも、この『星空の散歩』は、全て貴女の魔法のおかげですよね?」
リュート様は、すこしアンネローゼちゃんを見た後。
頬を赤くして、私に問いかけてきた。
なんだか、本当に。
初々しいカップルみたい。
「うーん、それもあるんですけど」
私は、唇に指をあてて、考える仕草をしたあと。
ニッコリ微笑んだ。
「でも、いつかきっと。素敵な竜騎士様になれますよ!」
リュート様は。
真っ赤な顔をしてうつむいた。
よし!
乙女ゲーム『ファルシアの星乙女』には全然登場してないイベントだったけど。
多分これで。
熱い友情が……生まれたよね?
0
お気に入りに追加
491
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
悪役令嬢、第四王子と結婚します!
水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします!
小説家になろう様にも、書き起こしております。
婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
みんながみんな「あの子の方がお似合いだ」というので、婚約の白紙化を提案してみようと思います
下菊みこと
恋愛
ちょっとどころかだいぶ天然の入ったお嬢さんが、なんとか頑張って婚約の白紙化を狙った結果のお話。
御都合主義のハッピーエンドです。
元鞘に戻ります。
ざまぁはうるさい外野に添えるだけ。
小説家になろう様でも投稿しています。
転生できる悪役令嬢に転生しました。~執着婚約者から逃げられません!
九重
恋愛
気がつけば、とある乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた主人公。
しかし、この悪役令嬢は十五歳で死んでしまう不治の病にかかった薄幸な悪役令嬢だった。
ヒロインをいじめ抜いたあげく婚約者に断罪され、心身ともに苦しみ抜いて死んでしまう悪役令嬢は、転生して再び悪役令嬢――――いや悪役幼女として活躍する。
しかし、主人公はそんなことまっぴらゴメンだった。
どうせ転生できるならと、早々に最初の悪役令嬢の人生から逃げだそうとするのだが……
これは、転生できる悪役令嬢に転生した主人公が、執着婚約者に捕まって幸せになる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる