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魔法学校中等部編
49.お妃様と遠い記憶 後編
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「ねぇ、このダンジョン、強すぎない!?」
目の前まで迫ってきた、大型の魔物。
牛の頭に、大きな身体。
手には、巨大な刃の斧を持っている。
危ない!
――私の防御魔法より早く。
魔法戦士のリードが、大きな盾を出してガードしてくれた。
振り下ろした斧が盾にぶつかって大きな音をだす。
「あ、ありがとう!」
「おい! ミノタウロスがいるなんて聞いてないぞ!」
「なぁに、オレ達なら大丈夫だろ、そりゃ!」
リードが攻撃を防いでいる隙に、横からクリール王子が飛び掛かる。
光の剣が、ミノタウロスの腕を切り裂いた。
大きな斧が、後方に吹き飛ばされていく。
チャンス!
「まかせて!」
「出番ですね!」
私と魔法使いクライスが放った炎の魔法が、次々とミノタウロスに直撃していった。
たまらず膝をついたミノタウロスに、戦士セルフィスが大きな斧を振り下ろす。
ミノタウロスは。
大きな音を縦て倒れた後、魔法石になって転がった。
「見てた? トルテねえちゃん。かっこよかったろ!」
「はいはい。かっこよかった、かっこよかった」
私は、王子を無視して、リードに回復魔法をかける。
「ありがとう、トルテ」
彼は、ヘルメットのバイザーを上げると、微笑みかけてきた。
本当に。
仕草の一つ一つがカッコいいのよね。
「トルテねえちゃん、オレもこのヘン痛いんだけど」
「アンタ攻撃あったってないでしょ!」
近づいてきた王子を、両手をふって追い払う。
「おまえばっかりずるいぞ!」
クリール王子は、リードをじーっとにらんでいた。
もう。
なに対抗してるのよ。
ホントに、子供なんだから。
**********
私たちは、ファルシア王国の一番西にあるダンジョンの中で。
最深部にある『魔力の実』を探していた。
魔法戦士のリードが大きな盾で防御して。
戦士のセルフィスは、大きな斧のようなものを両手でぶんぶん振り回す。
王子は、両手剣で豪快に切りかかる。
魔法使いのクライスは、後ろから強力な魔法を放つ。
……このメンバーで冒険することは多いけど。
やっぱり。
どこか遠い記憶で……こんな風景を見たことがある。
それも。
その場じゃなくて、外から眺めていた感覚があって。
なんだろう、この違和感。
「ボーっとしてないで、先に進むよ。トルテねえちゃん」
「わかってるわよ!」
私の頭にポンとおいた王子の手を、払いのける。
もう。
いつの間にか、背だけは高くなってるんだから!
パーティーメンバーを見渡すと。
リードの盾は、もう最初の半分くらいの大きさしかない。
多分、もう魔力が不足してるんだと思う。
クライスの魔法も、最初の頃よりずいぶん威力が落ちてるし。
セルフィスと王子の武器も、心なしか小さくなってる。
ちょっとここは……私たちの手には負えない気がする。
「ねぇ、やっぱり引き返さない? これ以上は危険だよ」
近くにいた王子に声をかける。
「うん、まぁ……そう思ってたところなんだけどね」
王子は……ダンジョンの先をじっと見つめている。
奥になにかあるの?
眺めている先をみつめると、大きな黒い影が動いている気がする。
なんだろう? あれ?
「ちょっと遅かったみたいだ」
「え?」
リードが、再び盾を大きくして構える。
「多分、あれが…このダンジョンのボスだよ」
**********
ダンジョンには、共通してある一定のルールがあって。
入口近くは、弱い魔物が沸くんだけど。
奥へ進むか、フロアを下っていくと、どんどん魔物が強くなっていく。
そして。
一番奥に、強力なボスと呼ばれる魔物がいる。
ボスを倒すと、しばらくダンジョンは静かになって。
一定期間は魔物を生み出さない。
――で。
今目の前にいる、巨大な木の化け物が……たぶんそのボスだ。
幹に大きな穴が二つあいてていて、赤く光っている。
まるで目みたいだ。
ボスは、聞いたことのないような叫び声をあげると、鋭い枝を無数に伸ばしてきた。
まるで。
一斉に槍で攻撃されたような攻撃に、リードが吹き飛ぶ。
「リード!」
慌てて回復魔法を投げようとする私にも、無数の枝が襲い掛かってくる。
「トルテねえちゃん! 逃げて!」
王子と、セルフィスが私の前に飛び込んできて、襲い掛かる枝を切り裂いた。
「ありがとう……って、え?」
二人は、枝を防ぎきれなくて。
残りの枝が突き刺さり崩れ落ちる。
「はやく……にげて……」
……ウソ。
パニックになりそうな気持を押さえて、回復魔法を唱える。
逃げれるわけ!
逃げれるわけないでしょ!
ボスから伸びた残りの枝が、一斉に私に襲い掛かる。
誰か。
誰か助けて!
――次の瞬間。
目の前に飛び込んできたのは。
真っ赤な。
まるで、ルビーのようにキラキラした深紅の宝石で出来ているような。
綺麗な赤い……槍。
それは、巨大な木の化け物に突き刺ささると、再び舞い上がり。
何度も化け物に攻撃していく。
「なんなの……これ……」
よく見ると。
赤く光っているのは、槍じゃなくて。
真っ赤な魔星鎧と。
大きな槍のようなものを持った冒険者だった。
倒れていたリードが立ち上がり、大きな盾を構える。
リードの防御タイミングに合わせるように、赤い冒険者も攻撃をおこなう。
すごい……。
この二人、すごく息がぴったり……。
ひょっとしてリードの知り合いなの?
私も慌てて、王子とセルフィス二人にかけより、回復魔法をかける。
ちょっとケガがひどかったけど。
これなら、大丈夫そう。
やがて。
ダンジョンのボスは断末魔の声をあげると、煙のように消えていき。
巨大な魔法石が、転がり落ちた。
「本当にたすかったよ、ありがとう」
リードが、ヘルメットのバイザーを上げて、赤い冒険者に手を差し出す。
「うふふ、どういたしまして」
赤い冒険者もヘルメットのバイザーを上げる。
そこには。
まるで絵本の妖精のような
……薄桃色の髪をした少女がいた。
赤紫の大きな目をした美少女が優しく微笑む。
戦闘のせいか、顔がほんのり赤い。
なにこれ。
顔が火照り、胸のドキドキが止まらなくなってしまう。
それは……私にとって。
……初恋だった。
**********
妖精のような女の子の名前は、レディナ。
『赤い槍』という二つ名をもつ冒険者だった。
王子とセルフィスなんかは、すっかり興奮していた。
すごく有名な冒険者なんだって。
どうやら、彼女に恋したらしいリードを応援するため。
私たちは一緒に冒険することになった。
レディナとはすぐうちとけて、お互い親友と呼べる間柄になれて。
私はとても嬉しかった。
冒険の後は、二人でよく朝まで女子会をしたり。
お出かけしたり。
舞踏会でも、いつも二人一緒に行動していた。
やがて。
レディナは、リードと結婚して。
私の恋が終わって。
私は……王妃として王宮に閉じこもることが多くなった。
結局、人見知りはなおらなかったけど。
今でも。
あのパーティーの仲間たちとは、気軽に話すことができる。
「……トルテ様。大丈夫ですか?」
夕食会の扉の前にいたメイドが心配して声をかけてきた。
「だ、大丈夫よ、ちょっと昔の話を思い出していただけ」
さぁ、この扉の先には。
あの人と。
あの人の子供がいる。
「うふふ、トルテ久しぶり!」
会場には、旦那のクリールと、子供たち。
そして。
リードとレディナ、そして。昔の彼女にそっくりな少女がいた。
「紹介するわね、私とリードの娘。クレナです」
「はじめまして、トルテ様。クレナと申します」
可愛らしく微笑む少女。
彼女のすぐ横には、息子のシュトレがいる。
とろけそうなくらい幸せそうな顔。
そう。
彼女は受け入れてくれたのね。
「初めまして、クレナさん。これからも息子をよろしくね」
この愛らしい少女が、私の娘になるんだ。
なんだかそれは。
すごく……嬉しい。
「あの。素敵なしおり、ありがとうございました」
息子の恋がかなうように、こっそりおくってもらった押し花のしおり。
どうやら、願いはかなったみたいね。
「どういたしまして。あの花、なんだったか、ご存じ?」
「……いえ。でも、すごく綺麗でした! 宝物です!」
あの押し花の花言葉は
……「密かな恋心」。
話を聞く限りだと、ウチの息子は全然密かじゃなかったようですけど。
ほんと、誰に似たのか……。
「ほら、アナタたちも挨拶しなさい」
レディナが部屋の奥にいた別の少女を呼びに行く。
そういえば、養女を迎えたって聞いてたわね。
どんな子なのかしら?
連れてきた少女をみて、呆然とする。
思考回路がとまって、頭が真っ白になりそうだった。
一人は、レディナそっくりの女の子。
クレナさんとは、髪の色と雰囲気が少しちがうけど、まるで双子みたい。
それより……。
私は、黒髪の少女から目が離せなかった。
え?
この少女……知ってる。
知ってる。
知ってるわ!
頭のなかで。
子供の頃からずっと感じていた違和感が消えていく。
この子は……。
乙女ゲーム『ファルシアの星乙女』のヒロインキャラ。
そしてここは。
――あのゲームの世界だ!
初めて私の物語がつながった。
……そうなのね。
私が、今までクリードや仲間と普通に話ができたのは。
何度も遊んでいたゲームの攻略キャラに似ていたから。
そりゃ似てるわよ。
みんな攻略対象の親なんだもの。
そう……。
私は攻略対象の親として転生していたのね。
おもわず、吹き出しそうなる。
無敵のチート転生者なんかじゃなかったけど。
愛する旦那がいて、子供たちがいて。
大切な親友がいて。
妖精のような女の子が娘になるみたいで。
うん。
今の私は、心から幸せだわ。
それにしても。
クレナさんがシュトレ王子と婚約って……こんな展開ゲームにあったかしら?
目の前まで迫ってきた、大型の魔物。
牛の頭に、大きな身体。
手には、巨大な刃の斧を持っている。
危ない!
――私の防御魔法より早く。
魔法戦士のリードが、大きな盾を出してガードしてくれた。
振り下ろした斧が盾にぶつかって大きな音をだす。
「あ、ありがとう!」
「おい! ミノタウロスがいるなんて聞いてないぞ!」
「なぁに、オレ達なら大丈夫だろ、そりゃ!」
リードが攻撃を防いでいる隙に、横からクリール王子が飛び掛かる。
光の剣が、ミノタウロスの腕を切り裂いた。
大きな斧が、後方に吹き飛ばされていく。
チャンス!
「まかせて!」
「出番ですね!」
私と魔法使いクライスが放った炎の魔法が、次々とミノタウロスに直撃していった。
たまらず膝をついたミノタウロスに、戦士セルフィスが大きな斧を振り下ろす。
ミノタウロスは。
大きな音を縦て倒れた後、魔法石になって転がった。
「見てた? トルテねえちゃん。かっこよかったろ!」
「はいはい。かっこよかった、かっこよかった」
私は、王子を無視して、リードに回復魔法をかける。
「ありがとう、トルテ」
彼は、ヘルメットのバイザーを上げると、微笑みかけてきた。
本当に。
仕草の一つ一つがカッコいいのよね。
「トルテねえちゃん、オレもこのヘン痛いんだけど」
「アンタ攻撃あったってないでしょ!」
近づいてきた王子を、両手をふって追い払う。
「おまえばっかりずるいぞ!」
クリール王子は、リードをじーっとにらんでいた。
もう。
なに対抗してるのよ。
ホントに、子供なんだから。
**********
私たちは、ファルシア王国の一番西にあるダンジョンの中で。
最深部にある『魔力の実』を探していた。
魔法戦士のリードが大きな盾で防御して。
戦士のセルフィスは、大きな斧のようなものを両手でぶんぶん振り回す。
王子は、両手剣で豪快に切りかかる。
魔法使いのクライスは、後ろから強力な魔法を放つ。
……このメンバーで冒険することは多いけど。
やっぱり。
どこか遠い記憶で……こんな風景を見たことがある。
それも。
その場じゃなくて、外から眺めていた感覚があって。
なんだろう、この違和感。
「ボーっとしてないで、先に進むよ。トルテねえちゃん」
「わかってるわよ!」
私の頭にポンとおいた王子の手を、払いのける。
もう。
いつの間にか、背だけは高くなってるんだから!
パーティーメンバーを見渡すと。
リードの盾は、もう最初の半分くらいの大きさしかない。
多分、もう魔力が不足してるんだと思う。
クライスの魔法も、最初の頃よりずいぶん威力が落ちてるし。
セルフィスと王子の武器も、心なしか小さくなってる。
ちょっとここは……私たちの手には負えない気がする。
「ねぇ、やっぱり引き返さない? これ以上は危険だよ」
近くにいた王子に声をかける。
「うん、まぁ……そう思ってたところなんだけどね」
王子は……ダンジョンの先をじっと見つめている。
奥になにかあるの?
眺めている先をみつめると、大きな黒い影が動いている気がする。
なんだろう? あれ?
「ちょっと遅かったみたいだ」
「え?」
リードが、再び盾を大きくして構える。
「多分、あれが…このダンジョンのボスだよ」
**********
ダンジョンには、共通してある一定のルールがあって。
入口近くは、弱い魔物が沸くんだけど。
奥へ進むか、フロアを下っていくと、どんどん魔物が強くなっていく。
そして。
一番奥に、強力なボスと呼ばれる魔物がいる。
ボスを倒すと、しばらくダンジョンは静かになって。
一定期間は魔物を生み出さない。
――で。
今目の前にいる、巨大な木の化け物が……たぶんそのボスだ。
幹に大きな穴が二つあいてていて、赤く光っている。
まるで目みたいだ。
ボスは、聞いたことのないような叫び声をあげると、鋭い枝を無数に伸ばしてきた。
まるで。
一斉に槍で攻撃されたような攻撃に、リードが吹き飛ぶ。
「リード!」
慌てて回復魔法を投げようとする私にも、無数の枝が襲い掛かってくる。
「トルテねえちゃん! 逃げて!」
王子と、セルフィスが私の前に飛び込んできて、襲い掛かる枝を切り裂いた。
「ありがとう……って、え?」
二人は、枝を防ぎきれなくて。
残りの枝が突き刺さり崩れ落ちる。
「はやく……にげて……」
……ウソ。
パニックになりそうな気持を押さえて、回復魔法を唱える。
逃げれるわけ!
逃げれるわけないでしょ!
ボスから伸びた残りの枝が、一斉に私に襲い掛かる。
誰か。
誰か助けて!
――次の瞬間。
目の前に飛び込んできたのは。
真っ赤な。
まるで、ルビーのようにキラキラした深紅の宝石で出来ているような。
綺麗な赤い……槍。
それは、巨大な木の化け物に突き刺ささると、再び舞い上がり。
何度も化け物に攻撃していく。
「なんなの……これ……」
よく見ると。
赤く光っているのは、槍じゃなくて。
真っ赤な魔星鎧と。
大きな槍のようなものを持った冒険者だった。
倒れていたリードが立ち上がり、大きな盾を構える。
リードの防御タイミングに合わせるように、赤い冒険者も攻撃をおこなう。
すごい……。
この二人、すごく息がぴったり……。
ひょっとしてリードの知り合いなの?
私も慌てて、王子とセルフィス二人にかけより、回復魔法をかける。
ちょっとケガがひどかったけど。
これなら、大丈夫そう。
やがて。
ダンジョンのボスは断末魔の声をあげると、煙のように消えていき。
巨大な魔法石が、転がり落ちた。
「本当にたすかったよ、ありがとう」
リードが、ヘルメットのバイザーを上げて、赤い冒険者に手を差し出す。
「うふふ、どういたしまして」
赤い冒険者もヘルメットのバイザーを上げる。
そこには。
まるで絵本の妖精のような
……薄桃色の髪をした少女がいた。
赤紫の大きな目をした美少女が優しく微笑む。
戦闘のせいか、顔がほんのり赤い。
なにこれ。
顔が火照り、胸のドキドキが止まらなくなってしまう。
それは……私にとって。
……初恋だった。
**********
妖精のような女の子の名前は、レディナ。
『赤い槍』という二つ名をもつ冒険者だった。
王子とセルフィスなんかは、すっかり興奮していた。
すごく有名な冒険者なんだって。
どうやら、彼女に恋したらしいリードを応援するため。
私たちは一緒に冒険することになった。
レディナとはすぐうちとけて、お互い親友と呼べる間柄になれて。
私はとても嬉しかった。
冒険の後は、二人でよく朝まで女子会をしたり。
お出かけしたり。
舞踏会でも、いつも二人一緒に行動していた。
やがて。
レディナは、リードと結婚して。
私の恋が終わって。
私は……王妃として王宮に閉じこもることが多くなった。
結局、人見知りはなおらなかったけど。
今でも。
あのパーティーの仲間たちとは、気軽に話すことができる。
「……トルテ様。大丈夫ですか?」
夕食会の扉の前にいたメイドが心配して声をかけてきた。
「だ、大丈夫よ、ちょっと昔の話を思い出していただけ」
さぁ、この扉の先には。
あの人と。
あの人の子供がいる。
「うふふ、トルテ久しぶり!」
会場には、旦那のクリールと、子供たち。
そして。
リードとレディナ、そして。昔の彼女にそっくりな少女がいた。
「紹介するわね、私とリードの娘。クレナです」
「はじめまして、トルテ様。クレナと申します」
可愛らしく微笑む少女。
彼女のすぐ横には、息子のシュトレがいる。
とろけそうなくらい幸せそうな顔。
そう。
彼女は受け入れてくれたのね。
「初めまして、クレナさん。これからも息子をよろしくね」
この愛らしい少女が、私の娘になるんだ。
なんだかそれは。
すごく……嬉しい。
「あの。素敵なしおり、ありがとうございました」
息子の恋がかなうように、こっそりおくってもらった押し花のしおり。
どうやら、願いはかなったみたいね。
「どういたしまして。あの花、なんだったか、ご存じ?」
「……いえ。でも、すごく綺麗でした! 宝物です!」
あの押し花の花言葉は
……「密かな恋心」。
話を聞く限りだと、ウチの息子は全然密かじゃなかったようですけど。
ほんと、誰に似たのか……。
「ほら、アナタたちも挨拶しなさい」
レディナが部屋の奥にいた別の少女を呼びに行く。
そういえば、養女を迎えたって聞いてたわね。
どんな子なのかしら?
連れてきた少女をみて、呆然とする。
思考回路がとまって、頭が真っ白になりそうだった。
一人は、レディナそっくりの女の子。
クレナさんとは、髪の色と雰囲気が少しちがうけど、まるで双子みたい。
それより……。
私は、黒髪の少女から目が離せなかった。
え?
この少女……知ってる。
知ってる。
知ってるわ!
頭のなかで。
子供の頃からずっと感じていた違和感が消えていく。
この子は……。
乙女ゲーム『ファルシアの星乙女』のヒロインキャラ。
そしてここは。
――あのゲームの世界だ!
初めて私の物語がつながった。
……そうなのね。
私が、今までクリードや仲間と普通に話ができたのは。
何度も遊んでいたゲームの攻略キャラに似ていたから。
そりゃ似てるわよ。
みんな攻略対象の親なんだもの。
そう……。
私は攻略対象の親として転生していたのね。
おもわず、吹き出しそうなる。
無敵のチート転生者なんかじゃなかったけど。
愛する旦那がいて、子供たちがいて。
大切な親友がいて。
妖精のような女の子が娘になるみたいで。
うん。
今の私は、心から幸せだわ。
それにしても。
クレナさんがシュトレ王子と婚約って……こんな展開ゲームにあったかしら?
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