71 / 201
魔法学校中等部編
35.お嬢様と社交界デビュー
しおりを挟む
「この髪飾り、きっとクレナ様の桃色の髪に映えますわ」
「キナコ様、このドレスなんていかがですか?」
「ナナミ様には、このネックレスなんていかがでしょう」
今私の部屋にいるのは。
ドレス専門の縫製職人さんと、お母様、メイド隊の皆様。
あと、ナナミちゃんと、キナコ。
三人とも、朝からずっと着せ替え人形状態。
最初のうちは楽しんでたキナコは、すっかり飽きたみたいで。
ぼーっと外を眺めている。
ナナミちゃんは、終始ご機嫌で。
満面の笑みで私に話しかけてくる。
二人がすごく対照的で面白いんですけど。
ちなみに。
今この部屋で一番楽しそうなのは、お母様だ。
私たちのドレスを注文する為に、わざわざ人気の縫製職人さんをよんだんだって。
「うーん、悩むわね。こっちの見本ドレスもあります?」
カタログをみながら、私たちに色んなドレスを着せていく。
「お母様、もう充分です。ここまで試着した中から選びますから!」
「ボクおなかすいたよー。これいつまで続くの……」
「お、お母様。ありがとうございます」
「いいのよ。やっぱり、その服も似合うわ。可愛い~」
お母様が、ナナミちゃんの頭を優しくなでる。
「うふふ。三人共、会場で一番かわいくなりましょうね!」
えー。
別にそんなこと望んでないんですけど……。
ナナミちゃんが来てから。
我が家には、大きな出来事があって。
私に……妹ができました!
っていっても。お父様とお母様に子供が生まれたとかじゃなくて。
養女に迎えたってことなんだけど。
一人目は、ナナミちゃん。
彼女は、そのままっていうわけにもいかないので。
一緒に正式に、ハルセルト家の養女に。
二人目は、キナコ。
まぁ、キナコはすでに竜王ってことで有名だし。
そのままでも大丈夫だったんだけど。
ナナミちゃんのこともあるし、ついでにってことで。
つまり。
私と、ナナミちゃん、キナコは姉妹ってことになった。
ちょっとびっくりだよね。
ナナミちゃんに照れながら「お姉ちゃん」って呼ばれるたびに少しドキッとする。
まるで前世みたい。
キナコは相変わらず、「ご主人様」って呼んでるけど。
で。
なんで私たち姉妹が着せ替え人形になってるかっていうと。
――私たちが、もうすぐ十三歳の誕生日だから。
**********
ファルシア王国では。
貴族の子供は八~十二歳の間にお誕生日パーティーを開き、社交界にプチデビューするんだけど。
十三歳からは、正式に社交界デビューすることになる。
普通、自分の誕生日に一番近い舞踏会に参加するんだけど。
私たちは王家主催の舞踏会に参加することになった。
お父様の説明だと、『たまたま』一番近い舞踏会がそれだったんだって。
……ホントかなぁ。
王家主催の舞踏会なんて、一年に一回しかないはずだし。
この時期じゃなかったはずなんだけどな。
「一番豪華なパーティーでデビューなんて、素敵じゃない」
「お母様。出来ればあまり目立ちたくないんですけど……」
「それは無理よ。みんな、会場で一番カワイイわよ!」
私たちはふんわりとしたレースにリボンのついた、お揃いの色違いドレスを着ている。
結局、お母様との縫製職人さんが相談して、特注で作ったんだって。
私が薄い水色で、キナコは黄色。ナナミちゃんが赤色。
すごくカワイイんだけど。
……これ絶対目立つと思うんですけど。
「ねぇねぇ、舞踏会って美味しいものずっと食べてて平気?」
「あまり食べてる暇はないと思うわ。挨拶周りが終わったら、ダンスのお誘いが沢山あると思うわよ?」
「えー」
キナコがすごくがっかりした表情でため息をつく。
小さい頃から全然変わってないよね、キナコって。
本当に、食いしん坊ドラゴンなんだから。
横にいたナナミちゃんを見ると、目がキラキラ輝いている。
「お、お姉ちゃん。お城の舞踏会なんて、ドキドキしますね。楽しみだなー」
ナナミちゃんは、なんでもすごく嬉しそう。
さすが、主人公。
最近すごくポジティブな気がする。
ゲームでもすごく前向きなキャラだったもんね。
……ホントに。ゲームの星乙女とそっくりなんだけどな。
私たちを乗せた飛空船は、やがてファルシア王国の王都ファランに到着した。
**********
舞踏会の流れは。
初参加の人は、入り口で呼ばれてから入場して。
主催者に最初に挨拶に行く。
で、保護者と合流してから、会場の皆様に挨拶周りをして。
挨拶回りが無事終了したら、あとは自由なんだけど。
実際には、舞踏会って。
『出世のための人脈づくり』だったり。
『将来の花嫁・花婿候補を探す場所』だったりするので。
初めての子はとくにダンスに誘われやすくて、すごく大変なんだって。
私たちは、会場の入り口で、係りの人から呼ばれるのを待っていた。
はぁ。
緊張するよぉ。
お誕生日パーティーのほうが楽だったなぁ。
主役の子供にだけちゃんと挨拶すれば、あと自由だったし。
……それに。
お誕生日パーティーって、基本的にシュトレ王子とペアでまわってたから。
全然苦じゃなかった……と思う。
「お姉さま、楽しみですね!」
ナナミちゃんが、嬉しそうに私の手を握る。
キナコは、ナナミちゃんと対照的に、この世の終わりみたいな顔をしている。
そんなにご馳走楽しみにしてたんだ。
キナコらしいけど。
「ご主人様、ドラゴンになって飛んでいってもいい?」
「ダメに決まってるでしょ!」
もう片方で、落ち込むキナコの手を握る。
まだなりたてだけど。
お姉ちゃんだもんね、私。
うん、今日は。
カワイイ妹たちと一緒に楽しもう!
扉が開いて。
係りの声の人声が響く。
「ハルセルト家の、クレナ様、キナコ様、ナナミ様。ご入場されます!」
さぁ、行くよ!
私たちは。扉の先にある、眩しい光の世界に進んでいった。
「キナコ様、このドレスなんていかがですか?」
「ナナミ様には、このネックレスなんていかがでしょう」
今私の部屋にいるのは。
ドレス専門の縫製職人さんと、お母様、メイド隊の皆様。
あと、ナナミちゃんと、キナコ。
三人とも、朝からずっと着せ替え人形状態。
最初のうちは楽しんでたキナコは、すっかり飽きたみたいで。
ぼーっと外を眺めている。
ナナミちゃんは、終始ご機嫌で。
満面の笑みで私に話しかけてくる。
二人がすごく対照的で面白いんですけど。
ちなみに。
今この部屋で一番楽しそうなのは、お母様だ。
私たちのドレスを注文する為に、わざわざ人気の縫製職人さんをよんだんだって。
「うーん、悩むわね。こっちの見本ドレスもあります?」
カタログをみながら、私たちに色んなドレスを着せていく。
「お母様、もう充分です。ここまで試着した中から選びますから!」
「ボクおなかすいたよー。これいつまで続くの……」
「お、お母様。ありがとうございます」
「いいのよ。やっぱり、その服も似合うわ。可愛い~」
お母様が、ナナミちゃんの頭を優しくなでる。
「うふふ。三人共、会場で一番かわいくなりましょうね!」
えー。
別にそんなこと望んでないんですけど……。
ナナミちゃんが来てから。
我が家には、大きな出来事があって。
私に……妹ができました!
っていっても。お父様とお母様に子供が生まれたとかじゃなくて。
養女に迎えたってことなんだけど。
一人目は、ナナミちゃん。
彼女は、そのままっていうわけにもいかないので。
一緒に正式に、ハルセルト家の養女に。
二人目は、キナコ。
まぁ、キナコはすでに竜王ってことで有名だし。
そのままでも大丈夫だったんだけど。
ナナミちゃんのこともあるし、ついでにってことで。
つまり。
私と、ナナミちゃん、キナコは姉妹ってことになった。
ちょっとびっくりだよね。
ナナミちゃんに照れながら「お姉ちゃん」って呼ばれるたびに少しドキッとする。
まるで前世みたい。
キナコは相変わらず、「ご主人様」って呼んでるけど。
で。
なんで私たち姉妹が着せ替え人形になってるかっていうと。
――私たちが、もうすぐ十三歳の誕生日だから。
**********
ファルシア王国では。
貴族の子供は八~十二歳の間にお誕生日パーティーを開き、社交界にプチデビューするんだけど。
十三歳からは、正式に社交界デビューすることになる。
普通、自分の誕生日に一番近い舞踏会に参加するんだけど。
私たちは王家主催の舞踏会に参加することになった。
お父様の説明だと、『たまたま』一番近い舞踏会がそれだったんだって。
……ホントかなぁ。
王家主催の舞踏会なんて、一年に一回しかないはずだし。
この時期じゃなかったはずなんだけどな。
「一番豪華なパーティーでデビューなんて、素敵じゃない」
「お母様。出来ればあまり目立ちたくないんですけど……」
「それは無理よ。みんな、会場で一番カワイイわよ!」
私たちはふんわりとしたレースにリボンのついた、お揃いの色違いドレスを着ている。
結局、お母様との縫製職人さんが相談して、特注で作ったんだって。
私が薄い水色で、キナコは黄色。ナナミちゃんが赤色。
すごくカワイイんだけど。
……これ絶対目立つと思うんですけど。
「ねぇねぇ、舞踏会って美味しいものずっと食べてて平気?」
「あまり食べてる暇はないと思うわ。挨拶周りが終わったら、ダンスのお誘いが沢山あると思うわよ?」
「えー」
キナコがすごくがっかりした表情でため息をつく。
小さい頃から全然変わってないよね、キナコって。
本当に、食いしん坊ドラゴンなんだから。
横にいたナナミちゃんを見ると、目がキラキラ輝いている。
「お、お姉ちゃん。お城の舞踏会なんて、ドキドキしますね。楽しみだなー」
ナナミちゃんは、なんでもすごく嬉しそう。
さすが、主人公。
最近すごくポジティブな気がする。
ゲームでもすごく前向きなキャラだったもんね。
……ホントに。ゲームの星乙女とそっくりなんだけどな。
私たちを乗せた飛空船は、やがてファルシア王国の王都ファランに到着した。
**********
舞踏会の流れは。
初参加の人は、入り口で呼ばれてから入場して。
主催者に最初に挨拶に行く。
で、保護者と合流してから、会場の皆様に挨拶周りをして。
挨拶回りが無事終了したら、あとは自由なんだけど。
実際には、舞踏会って。
『出世のための人脈づくり』だったり。
『将来の花嫁・花婿候補を探す場所』だったりするので。
初めての子はとくにダンスに誘われやすくて、すごく大変なんだって。
私たちは、会場の入り口で、係りの人から呼ばれるのを待っていた。
はぁ。
緊張するよぉ。
お誕生日パーティーのほうが楽だったなぁ。
主役の子供にだけちゃんと挨拶すれば、あと自由だったし。
……それに。
お誕生日パーティーって、基本的にシュトレ王子とペアでまわってたから。
全然苦じゃなかった……と思う。
「お姉さま、楽しみですね!」
ナナミちゃんが、嬉しそうに私の手を握る。
キナコは、ナナミちゃんと対照的に、この世の終わりみたいな顔をしている。
そんなにご馳走楽しみにしてたんだ。
キナコらしいけど。
「ご主人様、ドラゴンになって飛んでいってもいい?」
「ダメに決まってるでしょ!」
もう片方で、落ち込むキナコの手を握る。
まだなりたてだけど。
お姉ちゃんだもんね、私。
うん、今日は。
カワイイ妹たちと一緒に楽しもう!
扉が開いて。
係りの声の人声が響く。
「ハルセルト家の、クレナ様、キナコ様、ナナミ様。ご入場されます!」
さぁ、行くよ!
私たちは。扉の先にある、眩しい光の世界に進んでいった。
0
お気に入りに追加
491
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
悪役令嬢、第四王子と結婚します!
水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします!
小説家になろう様にも、書き起こしております。
婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話
至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます
下菊みこと
恋愛
至って普通の女子高生でありながら事故に巻き込まれ(というか自分から首を突っ込み)転生した天宮めぐ。転生した先はよく知った大好きな恋愛小説の世界。でも主人公ではなくほぼ登場しない脇役姫に転生してしまった。姉姫は優しくて朗らかで誰からも愛されて、両親である国王、王妃に愛され貴公子達からもモテモテ。一方自分は妾の子で陰鬱で誰からも愛されておらず王位継承権もあってないに等しいお姫様になる予定。こんな待遇満足できるか!羨ましさこそあれど恨みはない姉姫さまを守りつつ、目指せ隣国の王太子ルート!小説家になろう様でも「主人公気質なわけでもなく恋愛フラグもなければ死亡フラグに満ち溢れているわけでもない至って普通のネグレクト系脇役お姫様に転生したようなので物語の主人公である姉姫さまから主役の座を奪い取りにいきます」というタイトルで掲載しています。
みんながみんな「あの子の方がお似合いだ」というので、婚約の白紙化を提案してみようと思います
下菊みこと
恋愛
ちょっとどころかだいぶ天然の入ったお嬢さんが、なんとか頑張って婚約の白紙化を狙った結果のお話。
御都合主義のハッピーエンドです。
元鞘に戻ります。
ざまぁはうるさい外野に添えるだけ。
小説家になろう様でも投稿しています。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
転生できる悪役令嬢に転生しました。~執着婚約者から逃げられません!
九重
恋愛
気がつけば、とある乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた主人公。
しかし、この悪役令嬢は十五歳で死んでしまう不治の病にかかった薄幸な悪役令嬢だった。
ヒロインをいじめ抜いたあげく婚約者に断罪され、心身ともに苦しみ抜いて死んでしまう悪役令嬢は、転生して再び悪役令嬢――――いや悪役幼女として活躍する。
しかし、主人公はそんなことまっぴらゴメンだった。
どうせ転生できるならと、早々に最初の悪役令嬢の人生から逃げだそうとするのだが……
これは、転生できる悪役令嬢に転生した主人公が、執着婚約者に捕まって幸せになる物語。
【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです
たろ
恋愛
騎士であった夫が突然川に落ちて死んだと聞かされたラフェ。
お腹には赤ちゃんがいることが分かったばかりなのに。
これからどうやって暮らしていけばいいのか……
子供と二人で何とか頑張って暮らし始めたのに……
そして………
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる