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第3章 公爵令嬢の選択
第4話 噂話
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「お帰りっす。ローゼさん遅かったっすね」
「クンクン。……ローゼから甘い匂いがするわ。
ケーキ食べたの?」
……ベレニスは犬か?匂いでわかるって。
「はい、これお土産。3人で食べて」
女子3人が借りてる宿の一室で、買ってきたケーキをテーブルの上に置く。
早速とばかりに手を伸ばすベレニス。
「何かあったのか?」
「リョウこそ何かあったの?なんか落ち込んでるけど?」
宿に戻ったとき、裏手で一心不乱に相も変わらず剣の素振りしていたリョウも連れてきたけど、な~んか微妙な空気が流れてるんだよなあ。
「モグモグ!聞いてよローゼ!
こいつ、モグモグ、古着屋に私たちの下着を、モグモグ、売ろうとしたのよ‼ぷはあ」
喋るか食べるか、どっちかにしろよ。
ん?下着を売る?何で⁉
「まあ、自分が、いらないから捨てるように言ったのは事実っすけどねえ。
だからって、売ってこようと提案してくるとは思わなかったっす。
リョウ様の発想にビックリしたっす」
あれか、若い女の子の肌着を高く買い取って、おっさんが買うっていう、闇市場で悪名高き魔の商売。
「じいいいいいいいいい」
「ち!違うぞ!お、俺はただ捨てるには勿体ないから売ってお金にしようと提案しただけで‼」
私の視線に、リョウはしどろもどろで言い訳をしてきた。
まあ、大体見当つく。
フィーリアとベレニスが下着をリョウに洗われて、リョウの下着と一緒にされたという屈辱?についても理解したよ。
うん♪リョウが洗濯当番になってから感じてた違和感はこれだったんだあ♪スッキリした♪
……私の下着も見られてるってことじゃん。
リョウを睨むと、気不味そうに顔を逸らされる。
まあ、今更なんだけどね。
マズったなあ。洗濯については、下着類は女子組で今後ローテーションにしないと駄目か。
「リョウの罰は後で考えるとして、リョウ、聞きたいんだけど、アランの傭兵でこんな特徴の人っているかな?」
私はさっき見た後ろ姿の人物の特徴と、会話していた内容を話した。
「……オルガ・フーガさんだな。
剣の腕なら、アラン傭兵団の中でも五本の指に入る剣士だ。
俺も何度か模擬戦したことあるけど、一回も勝ったことはない」
「聞いたことある名っすね。
ファインダ攻防戦やデリム攻略戦で活躍した、アラン傭兵団の鬼神って呼ばれている人っす」
世評に詳しいフィーリアが補足する。
鬼神?なんか凄い通り名だ。
「ふ~ん、傭兵の仲間って実在したのね。
私、実は傭兵って、傭兵じゃないのかと思ってたわ」
おいおいベレニス。それはないでしょ。
「まあ、ずっと自分たちと一緒にいるっすからねえ。
ベレニスさんがそう思うのも無理はないっすよ。
それよりリョウ様、オルガって人は、こっちの事情を話せば味方になってくれる人っすか?」
フィーリアの問いは私も知りたい。
リョウは少し考えて、答えた。
「あの人は善悪や情で動く人じゃない。
単純に会えば笑顔で接してくれるだろうが、命を張る仕事が関わると別だ。
ペラペラ喋っても、よし俺も協力してやるって言う人ではない。
損得を第一に考えるから、こちらの事情を話すのはやめておいたほうがいい」
そういう性格の人だとすると、王女と知られるのは少し怖い。
オルガって人が私たちに味方する理由もない。
下手に話せば警戒されるだろうし、逆に利用される恐れもあるってことか。
「なんか面倒くさいわねえ。
じゃあスルーでいいんじゃないの?」
「いやいやベレニスさん、ローゼさんを王女として探されると厄介っすよ。
下手したら戦闘になるかもっす」
「じゃあどうするのよ。
てか、まだ実際に会ってもいないのに勝手に厄介事扱いしてるけど、する必要あんの?」
ベレニスの言う通り、まだオルガって人が敵と決まったわけでもない。
「まあ、明日冒険者ギルドに行く予定だし、そこで色々情報集めよっか。
もしかしたら、全然杞憂で終わるかもしれないし」
「今から行っても俺は構わんが」
「は?もうすぐ夕ご飯なのに、何言ってるの傭兵?」
リョウの提案に、ベレニスが面倒臭そうに言い返した。
「ここからギルド街まで歩いて2時間かかるっす。
今日は休む。それも重要っすよリョウ様」
フィーリアもベレニスに同調する。
「旅の間も、リョウはずっと先頭歩いてくれたりして気を張ってたんだし、今日は休んでもいいんじゃないかな?」
私の説得にリョウも折れて、明日冒険者ギルドに行くことになった。
リョウは体力に自信あるんだろうけど、無茶しがちだから私がきちんと見てないとね。
ギルド街で情報収集するのはいいが、夜遅くなるのは避けたいということで、今日は平民街の宿で一泊だ。
食事後、ランプを消して、ベッドに潜っていく。
しかし何故今になって、10年前の真実の一部が噂となって流布されてるんだろう?
こういうのって誰かに都合が良くて、都合の悪いことは隠されるのが常な気がするけど。
私の正体が王女だと知っているのは、仲間たち以外ではビオレールのギルドマスターのバルドさんと、ビオレールを領街追放された魔女ディアナさん。
……それと邪教の魔女のジーニア。
バルドさんは地理的に無理だし、バルドさん発なら旅の間でも噂になって耳にしていたはずだ。
ジーニアについても、私の噂を世間に流している様子はない。
邪教の一派なら、わざわざ噂の流布なんて手段は取らないで、もっと悪質な手段で私を陥れているだろうとも思う。
残るはディアナさんか。
牢に入れられていた時や、追放で旅に出る前にも会ったけど、悪意は一切なかったと思うんだよなあ。
笑顔で『またどこかで会いましょう』って言ってくれたし。
考えても仕方ないかも。
今日、単独で王都を散策した私に誰かが接触してくるようなことはなかったし、私を噂の王女と認識している人物はいなかった……し。
……徐々に思考が鈍り、瞼が重くなり、私は夢へと堕ちていった。
「クンクン。……ローゼから甘い匂いがするわ。
ケーキ食べたの?」
……ベレニスは犬か?匂いでわかるって。
「はい、これお土産。3人で食べて」
女子3人が借りてる宿の一室で、買ってきたケーキをテーブルの上に置く。
早速とばかりに手を伸ばすベレニス。
「何かあったのか?」
「リョウこそ何かあったの?なんか落ち込んでるけど?」
宿に戻ったとき、裏手で一心不乱に相も変わらず剣の素振りしていたリョウも連れてきたけど、な~んか微妙な空気が流れてるんだよなあ。
「モグモグ!聞いてよローゼ!
こいつ、モグモグ、古着屋に私たちの下着を、モグモグ、売ろうとしたのよ‼ぷはあ」
喋るか食べるか、どっちかにしろよ。
ん?下着を売る?何で⁉
「まあ、自分が、いらないから捨てるように言ったのは事実っすけどねえ。
だからって、売ってこようと提案してくるとは思わなかったっす。
リョウ様の発想にビックリしたっす」
あれか、若い女の子の肌着を高く買い取って、おっさんが買うっていう、闇市場で悪名高き魔の商売。
「じいいいいいいいいい」
「ち!違うぞ!お、俺はただ捨てるには勿体ないから売ってお金にしようと提案しただけで‼」
私の視線に、リョウはしどろもどろで言い訳をしてきた。
まあ、大体見当つく。
フィーリアとベレニスが下着をリョウに洗われて、リョウの下着と一緒にされたという屈辱?についても理解したよ。
うん♪リョウが洗濯当番になってから感じてた違和感はこれだったんだあ♪スッキリした♪
……私の下着も見られてるってことじゃん。
リョウを睨むと、気不味そうに顔を逸らされる。
まあ、今更なんだけどね。
マズったなあ。洗濯については、下着類は女子組で今後ローテーションにしないと駄目か。
「リョウの罰は後で考えるとして、リョウ、聞きたいんだけど、アランの傭兵でこんな特徴の人っているかな?」
私はさっき見た後ろ姿の人物の特徴と、会話していた内容を話した。
「……オルガ・フーガさんだな。
剣の腕なら、アラン傭兵団の中でも五本の指に入る剣士だ。
俺も何度か模擬戦したことあるけど、一回も勝ったことはない」
「聞いたことある名っすね。
ファインダ攻防戦やデリム攻略戦で活躍した、アラン傭兵団の鬼神って呼ばれている人っす」
世評に詳しいフィーリアが補足する。
鬼神?なんか凄い通り名だ。
「ふ~ん、傭兵の仲間って実在したのね。
私、実は傭兵って、傭兵じゃないのかと思ってたわ」
おいおいベレニス。それはないでしょ。
「まあ、ずっと自分たちと一緒にいるっすからねえ。
ベレニスさんがそう思うのも無理はないっすよ。
それよりリョウ様、オルガって人は、こっちの事情を話せば味方になってくれる人っすか?」
フィーリアの問いは私も知りたい。
リョウは少し考えて、答えた。
「あの人は善悪や情で動く人じゃない。
単純に会えば笑顔で接してくれるだろうが、命を張る仕事が関わると別だ。
ペラペラ喋っても、よし俺も協力してやるって言う人ではない。
損得を第一に考えるから、こちらの事情を話すのはやめておいたほうがいい」
そういう性格の人だとすると、王女と知られるのは少し怖い。
オルガって人が私たちに味方する理由もない。
下手に話せば警戒されるだろうし、逆に利用される恐れもあるってことか。
「なんか面倒くさいわねえ。
じゃあスルーでいいんじゃないの?」
「いやいやベレニスさん、ローゼさんを王女として探されると厄介っすよ。
下手したら戦闘になるかもっす」
「じゃあどうするのよ。
てか、まだ実際に会ってもいないのに勝手に厄介事扱いしてるけど、する必要あんの?」
ベレニスの言う通り、まだオルガって人が敵と決まったわけでもない。
「まあ、明日冒険者ギルドに行く予定だし、そこで色々情報集めよっか。
もしかしたら、全然杞憂で終わるかもしれないし」
「今から行っても俺は構わんが」
「は?もうすぐ夕ご飯なのに、何言ってるの傭兵?」
リョウの提案に、ベレニスが面倒臭そうに言い返した。
「ここからギルド街まで歩いて2時間かかるっす。
今日は休む。それも重要っすよリョウ様」
フィーリアもベレニスに同調する。
「旅の間も、リョウはずっと先頭歩いてくれたりして気を張ってたんだし、今日は休んでもいいんじゃないかな?」
私の説得にリョウも折れて、明日冒険者ギルドに行くことになった。
リョウは体力に自信あるんだろうけど、無茶しがちだから私がきちんと見てないとね。
ギルド街で情報収集するのはいいが、夜遅くなるのは避けたいということで、今日は平民街の宿で一泊だ。
食事後、ランプを消して、ベッドに潜っていく。
しかし何故今になって、10年前の真実の一部が噂となって流布されてるんだろう?
こういうのって誰かに都合が良くて、都合の悪いことは隠されるのが常な気がするけど。
私の正体が王女だと知っているのは、仲間たち以外ではビオレールのギルドマスターのバルドさんと、ビオレールを領街追放された魔女ディアナさん。
……それと邪教の魔女のジーニア。
バルドさんは地理的に無理だし、バルドさん発なら旅の間でも噂になって耳にしていたはずだ。
ジーニアについても、私の噂を世間に流している様子はない。
邪教の一派なら、わざわざ噂の流布なんて手段は取らないで、もっと悪質な手段で私を陥れているだろうとも思う。
残るはディアナさんか。
牢に入れられていた時や、追放で旅に出る前にも会ったけど、悪意は一切なかったと思うんだよなあ。
笑顔で『またどこかで会いましょう』って言ってくれたし。
考えても仕方ないかも。
今日、単独で王都を散策した私に誰かが接触してくるようなことはなかったし、私を噂の王女と認識している人物はいなかった……し。
……徐々に思考が鈍り、瞼が重くなり、私は夢へと堕ちていった。
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