【魔女ローゼマリー伝説】~これって、王女の立場を捨てた私が最強天才魔女になって、愛する人と一緒に英雄伝説になるまでの冒険劇なんですよね⁉~

ハムえっぐ

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第2章 英雄の最期

第31話 ザガン伯爵の饗し

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 ザガンの街はビオレールのような大規模な城塞都市と違い、人口も少なく、北部も南部も山脈で囲まれているため、旅人の往来も少ない。

 城門をくぐり抜けると、すでに街中では夕食の支度だろうか料理の香りが漂っていた。
 治安面では盗賊や魔獣が山々に出てるが、領内での被害はほとんどない。

 そのため、民衆は税金が高くなってしんどいという愚痴はあれど、深刻な雰囲気はないみたいだ。

「このまま真っ直ぐ進むと領主邸があります。
 ザガン伯爵様は気さくな方だから、盗賊討伐の報酬はちゃんと出ると思いますよ」

 ナフトさんはそう説明してくれたが、リョウは何か考え込んでるようだ。

 そして私たちは領主邸に到着して、門番の兵士に事情を説明したら、すぐに邸内へと通された。
 
 応接間にて待つようにと言われたので、私とベレニスとフィーリアはソファに座り寛ぐ。
 リョウだけはソファに座ることなく、壁にもたれて立ったままだ。

 暫くして、30代半ばくらいのいかにも貴族という衣装を纏った男性が応接間に入ってきた。

 金髪で長身だけど横幅はあるなあ。
 この人がザガン領主かな? 
 その男性がソファに腰掛けて話始める。

「アランの傭兵のリョウ・アルバース殿とそのお仲間たちですな。
 此度の盗賊退治大儀であった。
 今晩は我が屋敷にて、疲れを癒やすが良いぞ。
 食事がまだなら支度しよう」

 おお~、良い人そう。
 ベレニスも食事と聞いて、ジュルリと涎を流してる。

「ナフトからおおよそのことは聞いたが、不明の盗賊がおると言っておった。安心せよ。
 すでに其奴らなら、数刻前に我が屋敷前で縄で縛られ、眠った状態で置かれておったぞ。
 ナフトに面通しもさせたが、リョウ殿たちが倒した盗賊で間違いないそうだ」
「屋敷前に置かれてたんですか?」

「ナフトもビックリしておったが、魔女の転移魔法とやらで飛ばしたんじゃないのか?
 盗賊の連中は金髪の少女の……お前さんか、の仕業に違いないと言っておったぞ?」

 ザガン伯爵の発言に嘘はなさそう。
 嘘を見破れるベレニスが、心が食事に奪われたままだし。

「壮年の旅人風の男が、ナフトさんに毒入りの干し肉を渡したっすけど、その人物に心当たりはあるっすか?」
「ないのお。我が領内の者ならナフトも知っておろうしな。
 さて、話ばかりも疲れるから食事にしようか」

 ザガン伯爵はそう締めくくり、私たちも応接間を出て食卓のあるホールに案内される。
 お肉料理に山菜料理に川魚料理など、多種多様な料理がテーブルに並んでいた。

「うひゃあ美味しそう!
 ふっふ~ん♪ようやく、活躍に見合う報酬が貰えるわねえ」

 ベレニスは呑気にご馳走に目を輝かせてるけど、リョウは相変わらずだ。

 何か考えてるのかな?
 食事中も談笑する私たちに対して、リョウだけは考え事をしてるようだ。
 まだ気になることがあるのかな? 

「皆様の冒険譚は聞いていて飽きぬ。
 リョウ殿は口数が少ないが、それもまた英雄たる由縁なのでしょう」
「まあ私からしたらまだまだだけど、この傭兵は盗賊や黒竜を倒すのに役に立ったのは事実よね。
 今後もエルフにして超絶美少女の私、ベレニス一行の冒険譚を沢山増やすんだから、楽しみにしといてよね!」

 ベレニスはこれまでの体験を、誇張しながら面白おかしく話してきた。
 ザガン伯爵もナフトさんも大笑いしてるけど、リョウだけは無表情なまま食事を口に運んでいる。

「ま~ったくベレニスさんは。
 ……にしてもローゼさん、領主様とナフトさんの様子が気になるっすね。
 特にナフトさんは演技が下手っぽいっす。
 リョウ様はもう詮索しないで終わらす気配濃厚っすけど、ローゼさんはどうするっすか?」

 小声でフィーリアが告げてくる。

「気になるのは、報酬の小銀貨50枚を渡してくる気配がないのと、ルシエンについて全く触れない点かな?
 他に何か気になる点があるなら教えて欲しいけど」

 小声でフィーリアに返す。

「報酬は出ないと思うっすよ。
 端的に言うとこの食事で饗したから、後は適当にお帰り下さいっすね。
 ……恐らくはアテが外れたんすね。
 ナフトさん、多分すけど領主様に、めっちゃ怒られたと思うっすよ。
 落ち込んでる表情隠すの下手すぎて、商人ならカモ過ぎて真っ先に破産すね。
 善人すけど、生真面目すぎて仇となったっすねえ」

「ええ~?報酬出ないと知ったら、ベレニスが暴れるんじゃないの?
 それは宥めるのが大変になりそう……」
「まあ領主様は、他の取引持ってくるかもっすねえ。
 ベレニスさんは納得しないでしょうっすけど」

「ごめんフィーリア。なんとかできる?」
「できるっすが、その前に取引っす」

 ゴニョゴニョと私の耳に直接口を寄せ、フィーリアが囁いてくる。

 私が頷くと同時に、フィーリアも頷いたのであった。
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