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第1章 復讐の魔女

第25話 大逆転

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 その血飛沫は私のものではなく、ジーニアの肩からとディアナの右腕から。

「はあああああああ?何故テメエらがここにいやがる!
 傭兵‼エルフ‼」

 金属音を奏でながら、ジーニアは押され、リョウに窓から外へと押し出された。

「あらあら酷いじゃないベレニスちゃん。
 レイピアを投げるなんて」
『風の精霊よ刃となれ!』
「お構いなしなのね。
 でも、これぐらいじゃ私は殺せないわよ?」

 魔法障壁を展開させて防ぐディアナ。
 でもその隙で十分だ。

「ローゼ!無事ね!」
「うん。ありがとう、ベレニス」

 合流したう、私とベレニスも窓から外に飛び出す。
 リョウが、ジーニアに向かって剣を振るう姿が目に映る。

「ねえ?後学のために教えてくんない?
 ここ、遮音魔法で防音対策もされてるんだけど。
 なあああああんで場所を特定した上に、お姫様が殺されるのを防いでくれたんだあああああ?
 傭兵っっっ?」

 ジーニアの疑問の絶叫。

 だがリョウは無言で剣を繰り出し、ジーニアを追い詰める。
 ……が、ディアナの魔力弾に邪魔をされ、リョウも態勢を立て直すべく私たちに合流する。
 
 宿の外の人気のない夜の大通り。
 もうここは遮蔽魔法の範囲外のはずだし、衛兵が駆けつけてくるのも時間の問題だろう。

「あらあら、やられたわ。
 ジーニアが来た時にローゼちゃんが放った魔法。
 あれが報せだったのかしら?」
「……ええ。遮蔽魔法が展開されてるのはわかったから。
 ……両親が殺されたときと同じ感覚だったし」

 だから攻撃魔法と見せかけ、私はディアナとジーニアとのやり取りをも乗せる魔法弾を放ったのだ。

「全部聞いたわよ。何もかもね。
 私の睡眠の邪魔をした罪は重いんだから!」
「私を助けに来たんじゃないんかい!」

 ベレニスの言葉に思わず突っ込む私。

「テヘ♪でもディアナ残念ね。
 私たちに嘘なんて全然ついてなかったのに」
「俺も残念でならない。
 冒険者ギルドでも、ビオレールの住民にも、評判のいい占い師だったあんたがな」

 リョウも怒りを露にする。

「あらあら。青いこと」
「お前らが千年前の魔族降臨を再現しようと、大陸全土で動いているという話。
 もっと詳しく語ってもらう」

 私の杖、ベレニスのレイピア、リョウの剣がディアナとジーニアに向けられる。
 ジーニアはリョウにやられた出血が酷く、最早数に入ってない。
 後は逃げられないように目を光らせるのみ。

「ウフフ、本当に聞いてたのね」
「ああ、聞いた。
 力だけで決まる世界、強者こそが全てを支配する世界。
 そんな世界を創るためにあんたらが暗躍していたとな!」
「アハハハハ、素晴らしい世界じゃない! 
 なぜ否定するの? なぜ嫌悪を抱くの? 
 わからないわ! 力こそが全て。
 人の命だって物のように奪い合える世界。
 ……それが平和というものよ!」

 ディアナが恍惚の笑みを浮かべるが、ベレニスが即答する。

「嘘ね。それ」

「……ベレニスちゃん、何?」
「初めてディアナの嘘が見えたわ。
 ローゼが送ってきた遠隔魔法の音声じゃ、ハッキリしなかったけどね~」

ベレニスの断言に、私も驚く。

「そうなの?ベレニス」
「ローゼにもわかるんじゃない?
 言葉って魔法の詠唱と同じようなもんだし。
 嘘は言葉の中に現れちゃうのよ」

 う~む、わからん。
 ただ研究していくのは面白いかも。
 言葉は魔法か。
 ベレニスにしてはまともなことを言う。

「ベレニスが動物的直感で、嘘を見抜いてるだけなんじゃないのか?」
「は?傭兵は私をなんだと思ってるのよ」

 リョウの呟きに、ベレニスがイラっとしたように反応する。
 いやいや、そんなことをしてる場合じゃないから。

「ベレニスの言葉通りなら、真の目的を話しなさい!」

 私は2人に向かって魔法を放つ。爆発魔法だ。
 だが、ディアナの魔法障壁で掻き消され霧消する。

「キヒ♥ディアナの防御は魔法じゃ破れねえぜえ。
 近づいてきな。
 剣が振るえなくても、殺される前に噛みちぎってやるぜ」

 修道服を鮮血で濡らしながらも、狂気の瞳でジーニアは嗤う。

 その傷は相当ヤバいはず。
 ……なのに何故、そこまでの闘争心を彼女は保てるのだろう? 

「ディアナさあ、あたしも知りてえなあ。
 ディアナの本心てやつ」
「転移出来ないぐらいやられたようね。
 でも冥土の土産なんて教えないわ」

 2人の余裕有りげなやり取りだが、追い詰めてるのはこっちのはず。
 ジーニアは瀕死で、ディアナは防御に徹していて、衛兵もそろそろやって来るはず。
 無理して、最期の命を燃やし尽くそうとしているジーニアと戦うべきではない。

 それに……

「投降してジーニア。
 まだその傷なら癒せる者がいる」

 王国騎士団に拘束されている教会の司祭やシスターを思い浮かべる。
 私も応急処置程度ならできるし。

 だが……

「ヒャハ♥憐れみの上から目線が気にくわないねえっ!
 さっすがはお姫様!」

 ジーニアは嘲笑う。

 ……今は何を言っても無駄か。
 拘束して治療して、逃げられないようにしてから彼女の知ってる全てを吐かせる!
 私は杖を強く握り、魔力を高める。

 リョウもベレニスも武器を構え、戦闘態勢を取る。

 そしてディアナも、魔力を高め……たと思ったら魔力を霧散させる。
 それどころか魔法障壁も解いた。

 私たちだけでなく、ジーニアも驚きの表情を浮かべる中、彼女は口を開いた。

「私たちの勝ちよ」

 衛兵が駆けつけ、武器を構え囲むは私たち。
 衛兵が護ろうとするは、ディアナとジーニア。

「なっ⁉ちょっと!そっちが騒ぎの張本人!
 私たちが襲われたのよ!」

 ベレニスが衛兵に訴えるも、無意味だった。

「何をとぼけたことを!
 領主様を殺した魔女とエルフの女と傭兵の男の3人組!
 手配書もお前たちと一致している!武器を捨てろ!」

 どういう……

「ギルドで高名な占い師を襲うとは。
 ……修道服の少女は重体だ!早くこの娘を運ばねば!
 おのれ!ビオレールの街を騒がす悪の根源め‼」

 …………やられた!

 私たちだけが見えたディアナの戦慄の笑み。

 それを見て悟る。

「何が起きた?
 どうも聞く耳を持たないようだな、衛兵の連中は」
「意味わかんない!
 要するに領主がいなくなっても、こいつらはグルだったってこと⁉
 そんで私たちに、全部罪を擦りつけるつもり⁉」

 リョウもベレニスも戸惑いを隠せない。

 ……でも今は呆けている場合じゃない! 私は魔力を杖に収束し、2人に叫ぶ。

「私の身体に掴まって!」

 リョウとベレニスが私の身体に掴まったことを確認し、私は魔力を解放する。

『転移』

 私たち3人はビオレールの街の裏路地へと転移した。
 
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